※ イメージ図(©photoAC)
労働災害に関する最新の統計データを、業種別・型別・起因物別の他、様ざまな観点からグラフにして掲示しています。
労働災害の発生状況を知ることは、労働安全衛生管理の前提となるものです。御社に必要な情報を社内の安全管理に活かせて頂ければと思います。
また、労働安全コンサルタント試験を受験する上でも、だいたいの傾向を覚えておくべきものです。試験までに記憶しておくようにしましょう。
グラフの無断流用はお断りします。
- 労働災害発生件数の推移
- 死亡労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの起因物別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの年齢階層別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害(死亡)発生件数の推移
- 災害の型・起因物ごとの労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの度数率、強度率、年千人率等の推移
6 業種ごとの度数率、強度率、年千人率等の推移
(1)業種ごとの度数率及び年千人率の推移
ア 業種ごとの度数率の推移
さて、安全コンサルタント試験では、業種ごとの度数率を問われることがある。度数率等の意味については厚労省の安全衛生キーワードの「度数率、強度率、年千人率」の項を参照して欲しい。
労働災害動向調査第1表によって、主要な業種について度数率の推移を示したのが上の表である。なお、ややグラフが分かりにくいが、参考までに調査の対象となったすべての業種のグラフを併せて示している。
「運輸業・郵便業」「卸売業・小売業」「製造業」「建設業(総合工事業を除く。)」という順(※)になっており、やや信じ難いような数値である。しかも、数値が年ごとにかなり上下しており、サンプルの数か抽出方法に問題があるのではないかと思わせる。
※ なお、医療業が2020以降に急増しているのは、新型コロナの影響である。ただし、次項の年千人率では新型コロナによるものは除外されている。
イ 業種ごとの年千人率の推移
一方で、年千人率は、上図のようになっている。なお、参考までに林業を加えたものを併せて示した。
度数率と年千人率で、同じ業種では増減の変化は同じになるはずだが、そのような傾向はない。やはり度数率の方に統計上の問題があるというべきだろう。
また、各業種で労働者一人当たりの労働時間が同じであれば、度数率と年千人率の業種間の関係は同じになるはずだが、そのような傾向も見られない。「卸売業・小売業」は、一人当たりの労働時間が短いだろうから、相対的な関係の違いは分からなくもないが。
なお、厚生労働省は2021年までは新型コロナによるものを含めて計算していたが、2022年には過去に遡って新型コロナによるものを除外して計算し直している。従って、2020年と2021年のデータは過去の公表データから変更されている。ここでは修正後の数値を示している。
(2)業種ごとの強度率の推移
さて、わが国の安全衛生の分野では伝統的に、強度率よりも度数率や年千人率を重視する傾向があった。しかし、近年のリスクを重視する安全衛生管理においては、度数率よりも強度率が重要であるという考え方に変わりつつある。
にもかかわらず、実を言えば安全コンサルタント試験では、業種ごとの強度率はあまり問われない。おそらく統計の結果が年によって大きく変動するため、問題を作りにくいのだろう。これについても、同様な表を示しておく。
これをみると、強度率は、度数率よりも激しく増減を繰り返している。しかも、「卸売業,小売業」が「製造業」を上回っている年もある。この数値は、強度率に関する現時点における最も「権威のある」統計結果であるが、やや信じがたいという気がしないでもない。
(3)業種ごとの死傷者一人平均労働損失日数の推移
最後に、参考までに、死傷者一人平均労働損失日数を示しておく。これが大きく増減を繰り返していることが、強度率が大きく増減を繰り返す最も大きな要因である。
すでに前項までに示したように、各業種における型別の労働災害の比率が年によって大きく変わることはない。労働災害損失日数は、特定の業種の同じ災害の型についてみれば、年によって大きく変動するとも思えない。その意味でも、死傷者一人平均労働損失日数がこれほど大きく増減を繰り返すことには、奇異の念を感じざるを得ない。
(4)度数率・強度率の推計方法
我が国における度数率・強度率は「労働災害動向調査」によっている。これは、抽出された事業所への調査票の郵送という方法がとられているのだ。なぜか、労災補償のすべてのデータから直接算出するという方法がとられていないのである。
労働災害動向調査のサンプルの決定について、「度数率の標準誤差率が、事業所調査については産業及び事業所規模別に、事業所規模 100人以上については9%以内、事業所規模10~99人については10%以内となるように設定した」と政府は主張している。しかしながら、この統計結果を見る限りにおいては、その内容はやや信じがたいというべきである。
早急に、労災補償件数のデータから直接算出する方法に切り替えるべきであろう。