※ イメージ図(©photoAC)
労働災害に関する最新の統計データを、業種別・型別・起因物別の他、様ざまな観点からグラフにして掲示しています。
労働災害の発生状況を知ることは、労働安全衛生管理の前提となるものです。御社に必要な情報を社内の安全管理に活かせて頂ければと思います。
また、労働安全コンサルタント試験を受験する上でも、だいたいの傾向を覚えておくべきものです。試験までに記憶しておくようにしましょう。
グラフの無断流用はお断りします。
- 労働災害発生件数の推移
- 死亡労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの起因物別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの年齢階層別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害(死亡)発生件数の推移
- 災害の型・起因物ごとの労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの度数率、強度率、年千人率等の推移
2 死亡労働災害発生件数の推移
(1)業種別死亡労働災害発生状況
ア 業種別発生状況の全体像
次に業種別の死亡労働災害発生件数の推移を示す(※)。かつては建設業が半数近くを占めていたが、近年の全体の減少割合よりも建設業がさらに大きく減少したため、その比率も減少している。
※ ここでも新型ウイルスによる災害は含まれていない。なお、死亡災害については、2022年以降は、新型コロナウイルスによるものは全体の件数は公表されているが、業種ごとの数値を含めて、詳細な統計は公表されていない。
※ 死亡災害の統計は全期間を通して死亡災害報告によっている。なお、「運輸交通業」は、1990年(平成2年)以前は「運輸事業」となっていたが、基本的に同じ業種である。
イ 安全課集計による業種別発生状況
死亡災害についても、厚生労働省安全課の集計による業種別災害発生状況を示す(※)。死亡災害は1995年(平成7年)からの数値が公表されている。
※ 保健衛生業が 2020 年と 2021 年に急増し、2022年に減少したのは、安全課の集計による統計は 2020 年と 2021 年には新型コロナウイルスによる罹患が含まれているためである。
第三次産業が製造業よりも多くなっている。これは、第三次産業は全体の雇用者数が多いことが理由であるが、外回りの業務が多いため交通事故による死亡災害が多いことによるものである。
さて、第三次産業の死亡災害はそれほど多くはないが、死亡災害についても第三次産業の業種別推移も示しておく。
※ 2009年(平成23年)以前及び東日本大震災を含む2011年(平成23年)の統計数値は公表されていない。そのため2010年以降の東日本大震災を含まない数値を採用している。
なお、第三次産業全体では、死亡災害の多くは交通労働災害である。業種別にみると「商業」の多くは交通事故であるが、「清掃・と畜」は交通事故が多いものの、墜落・転落やはさまれ・巻き込まれもかなりの件数が発生している。
ウ 建設業における一人親方等の死亡災害
建設業においては、労働災害ではないが、一人親方等(※)の死亡災害が毎年数十名発生しており、厚生労働省によって2013年以降その件数が公表されている。
※ 一人親方とは、労働者を使用しないで事業を行う者である。労働者ではないので、その災害は労働災害には当たらない。本項の「一人親方等」は、これに加えて中小事業主、役員、家族従事者が含まれている。
この統計の 2020 年と 2021 年のデータに新型コロナウイルスによる罹患が含まれているかどうかは公表されていないが、公表の経緯から考えて除外していないものと思われる。
上図は、請負の形態別に一人親方等の死亡災害を示したもので、右図は業種(中分類)別に示している。上図を見てると、一人親方等の災害件数も労働災害と比しても大きな問題であることが分かる。しかも、その多くが下請けであることからも、元請け企業の対応が強く望まれる。
次に、「一人親方」と「中小事業主、役員、家族従事者」に分けて死亡災害の発生状況の推移を示す。こちらは、2014 年からの数値が公表されている。
ここからも分かるように、「一人親方」と「中小事業主、役員、家族従事者」は、ほぼ発生件数が拮抗しており、一人親方等の問題は、一人親方に限られるものではないことが分かろう。
次に、一人親方等の年齢別死亡災害の推移を示す。こちらは、2015 年からの数値が公表されている。
ここからも分かるように、一人親方等の場合、雇用されている労働者とは異なり定年などがないこともあって、高齢者に発生件数が集中していることが分かる。とりわけ 70 歳以上の被災件数の割合が高いことが特徴である。
(2)事故の型別死亡労働災害発生状況
事故の型別死亡労働災害の推移を示す。これを見れば分かるように、死亡災害では「墜落・転落」と「交通事故(道路)」の割合が大きいことが分かる。
また「はさまれ・巻き込まれ」、「激突され」、「飛来・落下」も無視できない件数となっている。
(3)年齢階層別死亡労働災害発生状況
年齢階層別の死亡労働災害では、50歳以上でほぼ半数を占めていることが分かる。また、60歳以上では、他の年齢層に比して減少の割合が小さいことが分かろう。
(4)事業場規模別死亡労働災害発生状況
次に事業場規模別の死亡労働災害の推移を示す。30人未満の零細な事業場に集中して発生していることが分かる。なお、建設現場ではその現場に入っている労働者全体ではなく、その事業場に所属する労働者の数で事業場規模を分類している。
休業4日以上の死傷災害ではそれほど零細な事業場に集中して発生しているわけではないが、死亡災害だと零細事業場に集中している。あえて答えは示さないが、読者には、この意味がお分かりになるだろうか。
(5)起因物別死亡労働災害発生状況
次に、あまり試験で問われることはないと思うが起因物別の死亡労働災害の推移を示す。「動力運搬機」及び「仮説物・建築物・構築物等」が、かなりの割合を占めていることが分かる。また、「環境等」も一定の割合で存在している。
「仮説物・建築物・構築物等」の多くは墜落・転落であり、「乗物」はそのほとんどは交通事故である。