※ イメージ図(©photoAC)
労働災害に関する最新の統計データを、業種別・型別・起因物別の他、様ざまな観点からグラフにして掲示しています。
労働災害の発生状況を知ることは、労働安全衛生管理の前提となるものです。御社に必要な情報を社内の安全管理に活かせて頂ければと思います。
また、労働安全コンサルタント試験を受験する上でも、だいたいの傾向を覚えておくべきものです。試験までに記憶しておくようにしましょう。
グラフの無断流用はお断りします。
- 労働災害発生件数の推移
- 死亡労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの起因物別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの年齢階層別労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの型別労働災害(死亡)発生件数の推移
- 災害の型・起因物ごとの労働災害発生件数の推移
- 業種ごとの度数率、強度率、年千人率等の推移
3 業種ごとの型別労働災害発生件数の推移
(1)製造業における事故型別労働災害発生状況
さて、安全コンサルタント試験では、業種ごとに「事故の型別」の労働災害の発生状況を問われることがある。そこで、出題の可能性のある業種について、型別の労働災害発生の推移を示す(※)。
※ 2020 年と 2021 年を含めて新型コロナウイルスへの罹患によるものを含んでいない。以下、特記してあるものを除き、全ての業種の型別災害の推移のグラフで同様。
中央付近の最も大きな青い部分は「はさまれ・巻き込まれ」で、製造業では今なおこの型が最も多い。一番下の水色は「墜落・転落」その上のオレンジは転倒である。
※ 図の文字が見えにくいので一番下に凡例を載せておくが、パソコンの方はクリックすると図が拡大する。モバイル端末やスマホの方は、画面の解像度によってはタップするとかえって図が小さくなるので、そのままの画像をズームアウトして拡大して欲しい。
製造業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。なお、新型ウイルスによるものは、型別ではその他になる。
製造業では、それほど多くはないものの、新型コロナウイルスにより無視できない数の労働災害が発生していたことが分かる。
(2)建設業における事故型別労働災害発生状況
次に建設業であるが、建設業では一番下の空色の部分が最も大きいが、これは「墜落・転落」である。他に目立つのは下から2番目のオレンジが「転倒」、下から4番目の黄色が「飛来・落下」、上の方の茶色は「切れ・こすれ」、そのすぐ下の青い部分が「はさまれ・巻き込まれ」である。
意外に思われるかもわからないが、建設業の3大災害のひとつである「崩壊・倒壊」の数はそれほど多くない。
また、「激突され」は、グラフでは中央上よりの緑の部分であるが、一定の割合で発生している。なお、建設機械のカウンターウェイトと壁等の間に挟まれる事故は「はさまれ・巻き込まれ」ではなく「激突され」にカウントする。
建設業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。建設業でも 2021 年以降に新型コロナウイルスへの感染によるものが、一定程度、発生しており、2022年にはかなりの数になっていたことが分かる。
(3)運輸交通業などの労働災害発生状況
運輸交通業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。
運輸交通業でも、配送先や荷主等との接触が多いからか、新型コロナウイルスによるものがかなり発生しているようだ。
厚労省の統計では、業種区分では運輸関係の大分類は「運輸交通業」であるが、先述したように労働安全コンルタント試験では「陸上貨物運送業」について問われることが多い。
そこで、「陸上貨物運送業」についても示しておく。製造業、建設業に比較して、減少傾向がみられないことが分かる。
ここでも意外に思われるかもしれないが、陸上貨物運送業で最も多い型別災害は一番下の空色の部分で、「墜落・転落」なのである。また、下から2番目のオレンジ色の「転倒」も目立っている。他に目立つものとしては、上の方のブルーは「動作の反動・無理な動作」でその下の紫がかった青が「交通事故(道路)」である。その少し下にある濃い青が「はさまれ・巻き込まれ」で、そのすぐ下の緑が「激突され」である。
陸上貨物運送業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。
(4)商業などの労働災害発生状況
商業においては、高齢者に多い「墜落・転落」「転倒」「動作の反動・無理な動作」が目立っている。また、交通事故が一定の割合を占めるのも商業の特徴である。
商業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。
厚労省の統計の業種区分は、商業関係の大分類は「商業」となっているが、労働安全コンルタント試験では「卸小売り業」について問われることが多い。
そこで、「卸小売り業」について示しておく(※)。
※ 厚生労働省は「卸売業」の 2022年 以降の新型コロナによる労働災害発生件数を公表していないので、「卸小売り業」の新型コロナへの罹患を含むグラフは示していない。
「卸小売業」で最も目立つのが下から2番目のオレンジ色の「転倒」である。この20年程、卸小売業の労働災害発生件数は増加傾向があるが、その最大の原因は転倒である。その背景にあるのが高齢化であることは言うまでもない。
他に目立つのは、上の方のブルーが「動作の反動・無理な動作」で、これも高齢化に関連する災害である。また、その下の紫がかった青が「交通事故(道路)」である。その下の方にある茶色の部分は「切れ・こすれ」である。
「卸小売業」のほとんどを占めるのが「小売業」である。小売業単独の災害発生の推移も示しておく。
小売業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。
卸小売業は接客業であることからだろうが、一定の件数で新型コロナウイルスへの感染によるものが含まれているようだ。
(5)保健衛生業の労働災害発生状況
ここ20年間で労働災害発生件数が急増しているのが保健衛生業である。災害急増は、業種そのものが急拡大していることが最大の理由であるが、労働者の高齢化や、この業種における労働条件が社会的耳目を集めたことによる「労災隠し」の減少も一因ではないかと推測される。
件数の絶対値としては「転倒」と「動作の反動・無理な動作」がほとんどを占める。「墜落・転落」も一定程度発生しているが、多くは階段などで足を踏み外すようなケースで、対策が取りにくいのが特徴である。
保健衛生業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう(※)。保健衛生業では、新型コロナウイルスに感染するものが多かったことがこのグラフからも分かる。
※ インフルエンザウイルスによるものは、統計から除かれていない。
なお、保健衛生業でこの期間に災害が急増している最大の理由は「社会福祉施設」の災害件数の増加である。そこで、「社会福祉施設」について示しておく。
この図からも分かるように「社会福祉施設」では、すべての型で災害が急増している現状にある。2019年には10,000件を超える事態となっている。
社会福祉施設における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。社会福祉施設という分類においても、新型コロナウイルスへの感染によるものが多かったことが分かる。
また、「保健衛生業」のうち、就業者数で大きな割合を占める「医療保険業」についてもみてみよう。
「医療保険業」もまた、「社会福祉施設」ほどではないにせよ、増加傾向がみられる。その大きな原因は高齢化であると考えられる。
医療保険業における事故型別労働災害発生状況についても、参考までに、新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。とりわけ医療保険業では、「その他」が2020年以降に急増して 2022年には全体のほとんどを占めるまで増加している。「医療保険業」における新型コロナ感染者が多かったことが分かる。
なお、厚生労働省は、業種ごとの新型コロナへの罹患による死亡災害の発生件数を示していない。
(6)第三次産業の労働災害発生状況
2011年(平成23年)以降ではあるが、厚生労働省の安全課で第三次産業についても分析を行ってるので、型別の労働災害発生件数を示す(※)。第三次産業も2011年以降は増加傾向があるが、就業者数の増加と高齢化が原因である。
※ 安全課の統計では、2020 年と 2021 年には新型コロナウイルスへの感染によるものを含み、2022 年には含まないものしか公表されていない。このため2020 年と 2021 年は「その他」が急増している。
増加傾向が大きいのは、「墜落・転落」、「動作の反動・無理な動作」などである。
第三次産業において増加傾向が大きいの業種の一つが「飲食業」である。「飲食業」について型別災害の推移を示したものが次図である(※)が、飲食業単独でみても1999年以降増加傾向がみられる。
※ こちらは、2020 年と 2021 年を含めて新型コロナウイルスへの感染によるものを含まない。飲食業で 2020 年と 2021 年の労働災害が減少しているのは、新型コロナによる営業停止が原因であろう。
3-2 業種ごとの起因物別労働災害発生件数の推移
(1)製造業における起因物別労働災害発生状況
さて、2023年度の安全コンサルタント試験に製造業の起因物別労働災害の発生件数が出題されている。業種別の起因物を問う問題は初出であるが、業種別の起因物別休業4日以上の労働災害発生件数の推移を示しておこう。
製造業の起因物別の災害発生件数の推移は次のようになっている。意外に思われるかもしれないが、工作機械については、厚労省の起因物別の統計が木材加工用機械、金属加工用機械及び一般動力機械と細分化していることもあるが、近年では安全装置が整備されているためそれほど多くはない。
むしろ、「仮設物、建築物、構築物等」の減少傾向がみられないため、近年では相対的に割合が最も高くなっている。なお、2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 5,888件(2022年は 5,773 件。以下カッコ内の数値について同じ。)のうち 2,912 件(3,531 件)が通路、996 件(1,239 件)が「階段、桟橋」となっている。
起因物が、通路、「階段、桟橋」となっている災害の多くは転倒災害(※)であるが、転倒災害は対策が立てにくいことと、高齢化によってむしろ増加することがあり、減少させにくいことが原因である。
※ 転倒災害は、建物の床等で発生することが多く、この場合の起因物は「仮設物、建築物、構築物等」となる。
(2)建設業における起因物別労働災害発生状況
建設業の場合も「仮設物、建築物、構築物等」の割合が多いが、製造業とは異なり減少傾向がみられる。これは、「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害が、製造業とは異なり、足場や建設途中の建物から墜落する事故が多いため(※)である。すなわち、足場や建設途中の建物から墜落する事故は、通路などでの転倒と違って比較的対策が立てやすいのである。
※ 建設業においても、近年、転倒災害の防止が大きな課題になっていることには留意するべきである。
ただし、2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 4,069 件(3,947 件)のうち 764 件(732 件)が通路、730 件(674 件)が足場、637 件(639 件)が「建築物、構築物」、572 件(631 件)が「屋根、はり、もや、けた、合掌」、377 件(375 件)が「階段、桟橋」となっており、転倒災害もかなり含まれているものと思われる。
その他では、用具、材料、動力運搬機(※)が目立っている。
※ 労働災害統計の「動力運搬機」は、トラック、フォークリフト、起動装置、コンベア、ローダー、ストラドルキャリヤー、不整地運搬車及びその他の動力運搬機からなる。
(3)運輸交通業における起因物別労働災害発生状況
運輸交通業では、当然のことながら起因物としては、動力運搬機の割合が高い。2022年の運輸交通業の動力運搬機を起因物とする災害は、5,682 件であるが、そのうちトラックが 4,863 件、フォークリフトが 694 件である。
運輸交通業でも「仮設物、建築物、構築物等」が目立っているが、2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 3,392 件(3,449 件)中 1,494 件(1,581 件)が通路である。
その他では、荷と乗物が目立っている。
(4)農林業における起因物別労働災害発生状況
あまりコンサルタント試験に出題されることはないと思うが、農林業についても示しておこう。農林業は「環境等」が大きな割合となっている。2023年の環境等を起因物とする災害 781 件(804 件)のうち 453 件(504 件)が立木等である。
農林業でも環境等以外では「仮設物、建築物、構築物等」がやや目立っているが、「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 372 件(332 件)のうち、通路が 194 件(171 件)であり転倒災害がほとんどであろう。
(5)商業における起因物別労働災害発生状況
商業についても、「仮設物、建築物、構築物等」の割合が高い。2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 6,741 件(6,740 件)のうち通路が 3536 件(3,531 件)、「階段、桟橋」が 1,242 件(1,239 件)となっている。これもほとんどが転倒災害であろう。
その他では、乗物、用具、荷が目立っている。
(6)保健衛生業における起因物別労働災害発生状況
保健衛生業についても、「仮設物、建築物、構築物等」の割合が高い。2022年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 6,021 件(5,564 件)のうち通路が 3,238 件(3,025 件)、「階段、桟橋」が 1,134 件(1,024 件)となっている。ほとんどが転倒災害であろう。
保健衛生業で特徴的なことは、その他の起因物、起因物なしの割合が高いことである。このグラフでは発生件数が低いものをその他の起因物にまとめているが、保健衛生業では、厚労省が発表したデータで「その他の起因物」がかなり多い。ここには病原菌等が含まれている(※)。
※ すでに説明しているように新型コロナウイルスによるものは統計から除かれている。
また、起因物なしは、災害の型としては「動作の反動・無理な動作」がほとんどで、「転倒」の一部も含まれている。
(7)接客娯楽業における起因物別労働災害発生状況
接客娯楽業についても、「仮設物、建築物、構築物等」の割合が高い。2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 3,462 件(3,282 件)のうち通路が 1,749 件(1,686 件)、「階段、桟橋」が 588 件(539 件)となっている。ここでもほとんどが転倒災害であろう。
接客娯楽業では、他には用具、人力機械工具等が目立っている。
(8)清掃・と畜業における起因物別労働災害発生状況
清掃・と畜業についても、「仮設物、建築物、構築物等」の割合が高い。2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 2,643 件(2,676 件)のうち通路が 1,116 件(1,686 件)、「階段、桟橋」が 575 件(605 件)となっている。ここでもほとんどが転倒災害であろう。
清掃・と畜業では、他には一般動力機械、用具が目立っている。
(9)全業種における起因物別労働災害発生状況
最後にもう一度、全業種の起因物別災害発生状況を示しておこう。全業種についても、「仮設物、建築物、構築物等」の割合が高いのである。2023年の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害 37,859 件(36,716 件)のうち通路が 17,285 件(16,776 件)、「階段、桟橋」が 6,929 件(6,725 件)、「作業床、歩み板」が 4,066 件(3,841 件)、「建築物、構築物」が 3,966 件(3,926 件)となっている。
2023年の全業種の「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害では、転倒が 22,780 件(22,020 件)、墜落・転落が 7,935 件(7,819 件)、「動作の反動・無理な動作」が 3,041 件(2,808 件)、激突が 2,369 件(2,467 件)などとなっている。
全業種では、他には用具、動力運搬機が目立っている。
3-3 業種ごとの年齢階層別労働災害発生件数の推移
(1)製造業における年齢階層別労働災害発生状況
なお、近年の現役年齢の高齢化と高齢者比率の増加の中で、高齢者の労働災害の防止が重要な課題となっていることから、業種別の年齢階層ごとの休業4日以上の死傷災害発生件数の推移を示す。
製造業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
50歳代まで、ほぼすべての年齢階層で災害発生件数は減少しているが、60歳以上の階層では減少傾向はみられないものの増加傾向があるわけではない。
常識的には、この間、60歳以上の就業者数は増加しているものと思われるが、製造業では60歳にいったん退職して災害リスクの高い第一線から退くことが多いために、60歳以降の災害がそれほど増加しないのであろう。
(2)建設業における年齢階層別労働災害発生状況
建設業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
2008年まで、ほぼすべての年齢層で災害発生件数は減少していたが、それ以降は60歳以上の減少傾向がみられなくなっている。減少傾向がみられないのは、60歳以降にも働くケースが増えてきたことと、建設業の人材不足のために高齢者を危険な業務から外す余裕がなくなっていることも理由であろうか。
これからも高齢者の職域が拡大してゆく傾向は続くであろう。建設業においても、高齢者を含めた安全な職場の実現が強く望まれる。
(3)運輸交通業における年齢階層別労働災害発生状況
運輸交通業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
運輸交通業は、業種全体の労働災害発生件数の減少が、製造業や建設業ほどにはみられない。とりわけ50~59歳、60歳以上の年齢構成の労働災害発生件数が増加傾向にある。
これは、ひとつには運輸交通業の就業者の年齢構成を反映している面もあろう。また、運輸交通業に多い墜落転落災害が高齢者にとって危険なものであることも理由の一つであろう。
(4)農林業における年齢階層別労働災害発生状況
農林業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
農林業は、就業者中に高齢者が占める割合が高いこともあり、高年齢者の労働災害発生件数の多い業種である。ただ、60歳以上の高齢者の被災件数は、長期的に減少傾向にある。
とりわけ、1999年以降の労働災害発生件数の減少は、50~59歳、60歳以上の年齢階層の減少に寄与するところが大きい。
ただ、2014年以降は減少傾向が鈍化しており、今後は予断を許さない状況にある。
農林業における年齢階層別労働災害発生状況についても、参考までに、2020 年 2021 年に新型コロナウイルスへの罹患による労働災害を含むものを示しておこう。
(5)商業における年齢階層別労働災害発生状況
商業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
商業の1999年以降の労働災害発生件数の増加の原因は、60歳以上の労働災害発生件数の増加によるものといえる。
この理由は、就業人口の高齢化によるものが大きいのかもしれない。
(6)教育研究業における年齢階層別労働災害発生状況
教育研究業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
長期的にみて50歳以上の年齢の増加率が大きい。2020年と2021年に20歳代と30歳代の増加がみられるが、これは新型コロナウイルスへの感染によるものであろう。厚生労働省が2022年のデータから新型コロナウイルスへの感染によるものを除いたために、2022年には年齢分布が元の傾向に戻っている。
50歳以上の災害発生率の長期的な増加の理由は、就業人口の高齢化によるものが大きいのかもしれない。
(7)保健衛生業における年齢階層別労働災害発生状況
保健衛生業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
保健衛生業は、社会福祉業を中心に労働災害発生件数が急速に増加している。
また、1999年以降については、とりわけ60歳以上の労働災害発生件数の増加が著しいものがある。就業人口中に高齢者が増加する中で、保健衛生業に多い転倒や動作の反動、無理な動作が、高齢者に増加しているのではないかと思われる。
グラフを年齢構成の割合で表すと、60歳代の割合が一貫して増加していることが分かる。
(8)接客娯楽業における年齢階層別労働災害発生状況
接客娯楽業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
全体として、労働災害発生件数は横ばい傾向にあるが、60歳以上の労働災害発生件数が急増している。
(9)清掃・と畜業における年齢階層別労働災害発生状況
清掃・と畜業の年齢構成別の災害発生件数の推移は次図のようになっている。
清掃・と畜業も接客娯楽業と同様に、全体として労働災害発生件数は横ばい傾向にあるが、60歳以上の労働災害発生件数が急増している。また、70歳以上の割合が高いことも特徴となっている。
近年における労働災害の減少には、高齢者の労働災害に焦点を当てた対策が重要となることが結論付けられる。