労働災害の発生状況の推移




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悲しむ女性

※ イメージ図(©photoAC)

労働災害に関する最新の統計データを、業種別・型別・起因物別の他、様ざまな観点からグラフにして掲示しています。

労働災害の発生状況を知ることは、労働安全衛生管理の前提となるものです。御社に必要な情報を社内の安全管理に活かせて頂ければと思います。

また、労働安全コンサルタント試験を受験する上でも、だいたいの傾向を覚えておくべきものです。試験までに記憶しておくようにしましょう。

グラフの無断流用はお断りします。




5 災害の型・起因物ごとの労働災害発生件数の推移

(1)事故型ごとに見た業種・起因物別休業4日以上死傷災害の推移

ア 「墜落転落災害」の業種・起因物別ごとの推移

さて、安全コンサルタント試験では、労働災害の型別の労働災害の割合を問われることがある。そこで、主な災害の型について、業種別及び起因物別の発生件数の推移を示そう。

まず、墜落・転落災害の休業4日以上の死傷災害の業種別発生件数は次図のようになっている。かつては建設業がかなりの割合を占めていたが、その割合は2009年までにかなり減少した。比較的容易に対策できるものは、この時期までに対策がとられたのであろうか。2010年以降は、どの業種も減少傾向がみられない。

墜落転落災害の業種ごとの推移

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運輸交通業が一定の割合を占めているが、これはトラック等の荷台から転落して災害となるのである。対策がとり難い面があり、減少傾向はほとんどみられない。

製造業も建設業と同様に2010年頃までは減少傾向が続いたが、それ以降は減少傾向がみられない。

意外なのが保健衛生業で、発生件数こそ少ないものの一貫して増加傾向がみられる。業種そのものが拡大していることもあるが、高齢化も一因となっているだろう。

さて、ここでも安全課が集計した統計をグラフ化したものを示しておこう。基になっているデータは労働者死傷病報告で同じだが、業種区分が異なっている。これによれば、第三次産業が建設業よりも多いことが分かるだろう。

墜落転落災害の業種ごとの推移

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なお、全墜落・転落災害の2010年以降の増加傾向は、高齢化によるものと思われる。高齢者は、バランスを崩して墜落・転落しやすくなるばかりか、墜落したときに何かにつかまって怪我をしないようにすることが難しくなるのである。また、若年者は軽い怪我ですむところが、高齢者では休業4日以上の負傷になりやすいことも災害増加の一因である。

最後に、墜落・転落災害の起因物別の推移を示す。墜落・転落災害における起因物は、どこから墜落したかを示している(※)ことが多い。

※ もちろん、例外もある。例えば起因物がフォークリフトの場合は、作業者がフォークに載って作業をしていて墜落した場合や、高所にいた作業者が他の作業者の運転するフォークリフトのフォークで突き落とされた場合等がある。

墜落・転落した場所と言うと、開口部や、屋根、通路、環境などを思い浮かべるかもしれないが、実は、多いのは自動車のトラック、はしご等、階段・桟橋などである。

墜落転落災害の起因物ごとの推移

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起因物がトラックである災害の多くは荷台から墜落したもので、一部、トラックごと墜落したケースが含まれている。また、はしご等は。はしごから墜落したり、はしごごと墜落した場合が多い。はしごを登る場合は「墜落災害防止のための移動はしごの使用方法等について」の徹底が望まれる。

イ 「転倒災害」の業種・起因物別ごとの推移

転倒災害は、ほぼすべての業種で増加傾向があるが、その大きな原因は労働者の高齢化である。

転倒災害の業種ごとの推移

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その中でも増加傾向が著しいのが保健衛生業であり、これは業種そのものの拡大と高齢化が主な理由である。ただ、転倒災害は労働災害という認識を持たれずに、健康保険で処理され、結果的に労災隠しとなる事例の多い災害(※)である。ことによると、行政の転倒災害防止キャンペーンにより、転倒災害も労災であるという認識が高まった結果、労災として処理される件数が増加したことも一因となっている可能性はあろう。

※ 厚生労働省のパンフレット「STOP!転倒災害プロジェクト」によると「転倒災害による休業期間は約6割が1か月以上となっています」とされている。しかし、ハインリッヒの法則から考えてもこんなことはあり得ない。

仕事中や出張中に転んで怪我をしても、普段、労働災害とは縁の浅い業種だと労働災害という意識が生じず、総務部門への報告が行われずに、結果的に私傷として処理してしまうことが多いとしか思えないのである。

なお、同様な傾向は、災害性の腰痛や熱中症でもみられる。仕事中の転倒による負傷は労災だという広報活動が必要だと思える。

発生件数は、労働者数、高齢者の割合、転倒しやすい作業の多寡等によって定まるだろう。建設業は製造業に比較して、2009年の雇用者数は3分の1程度であるが、災害件数もほぼその程度の比率となっている。

さて、ここでも安全課が集計した統計をグラフ化したものを示しておこう。ほぼ、就業者が多い業種で災害が多発している傾向がある。

転倒災害の業種ごとの推移

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次に、転倒災害を起因物別の発生状況を示す。これも墜落災害と同様に、どこで転倒災害が起きているかを示しているといってよい。最も多いのは「通路」であるが、「その他の設備」(※)、「作業床、歩み板」、「環境等」など様々な場所で発生している。

※ 「その他の装置等」は厚労省の災害分類の大項目の一つであるが、動力機械、物揚げ装置及び運搬機械以外の装置等という趣旨である。

転倒災害の起因物ごとの推移

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ウ 「はさまれ・巻き込まれ」災害の業種・起因物別ごとの推移

はさまれ・巻き込まれ災害は、比較的対策のとりやすい災害である。危険な場所の囲い込み、立入禁止措置、見張りの配置等によって対策がとれるため、ほぼ一貫して減少傾向がみられる。

業種別では製造業がきわめて多く、減少傾向はみられるものの、全体に占める割合は大きくは低下していない。

はさまれ・巻き込まれ災害の業種ごとの推移

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運輸交通業と商業は、減少傾向がみられない。運輸交通業は出張時の災害が多いため、対策がとり難いのである。商業は、食品の製造販売での機械へのはさまれ・巻き込まれなどが多いが、小規模な事業場が多く、災害の対策が進んでいないためである。

さて、ここでも安全課が集計した統計をグラフ化したものを示しておこう。ほぼ、就業者が多い業種で災害が多発している。

はさまれ・巻き込まれ災害の業種ごとの推移

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これについても起因物別の推移を見てみよう。はさまれ・巻き込まれ災害に関しても、起因物を調べることで、何に挟まれたかが判断できる。

はさまれ・巻き込まれ災害の起因物別の推移

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これは予想通りだろうと思うが、一般動力機械が最も多い。次に多いのが動力運搬機である。なお、動力運搬機とはトラック、フォークリフト(※)、コンベアなどで、動力運搬機では、ほぼこの3つの起因物で発生している。

※ フォークリフトによるはさまれ・巻き込まれ災害は、車体と壁などの構造物の間に挟まれる事故がほとんどである。

その他に目立つのは人力機械工具等、金属加工用機械などである。

エ 動作の反動・無理な動作による災害の業種ごとの推移

動作の反動・無理な動作による災害も転倒災害と同様に増加傾向がある。これも対策のとり難い災害の一つである。

動作の反動による災害の業種ごとの推移

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とりわけ増加の著しいのが保健衛生業である。発生件数が多いのは、病院(2021年:1,050件)ではなく社会福祉施設(同:4,539件)である。被介護者を移動するときなどに被災するケースが多い。

製造業は減少傾向がみられない。建設業は2009年まで減少傾向にあったが、その後は減少傾向はみられない。

オ 交通事故(道路)による災害の業種ごとの推移

次に交通事故(道路)による災害を示しておこう。これは安全課の分析した統計によっている。

交通事故(道路)による災害の業種ごとの推移

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交通事故は近年では減少傾向にある。発生数は第三次産業に集中しているが、就業者数が多いこと、外勤が多いこと等によるものであろう。

カ 感電災害の業種・起因物別ごとの推移

感電災害の業種ごとの推移

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最後に、件数は少ないが感電災害について、その推移をみておこう。全体に減少傾向がみられ、業種ごとでは建設業の減少率が著しいが、2021年においてもなお製造業を上回っている。

感電災害の業種ごとの推移

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起因物別では、電気設備(送配電線、電力設備、その他の電気設備)が大部分を占めている。次に多いのが「動力機械」で、全体の約8%程度を占めている。これらは、点検・修理時等に充電部に触れたり、漏電した部分に触れたりすることによる災害が多い。

また、「動力クレーン等」が5%程度を占めている。この中には電気を用いる動力クレーンの修理・整備中の災害の他、移動式クレーン等のジブが送配電線に接触して感電した災害(※)が、かなり含まれている。

※ 厚生労働省の事故型分類表では、感電災害については「金属製カバー、金属材料等を媒体として感電した場合の起因物は、これらが接触した当該設備、機械装置に分類する」とされている。従って、移動式クレーンのジブが送電線に触れて玉掛従事者等が被災(感電災害)した場合は、起因物は「送配電線」となるはずである。

しかし、厚生労働省がWEBサイトで公表している事故事例でも、移動式クレーンのジブが送配電線に触れて感電した事故では、起因物が「送配電線」とされているものと「移動式クレーン」とされているものが混在しており、必ずしも厳格に分類されていないのが実情である。

なお、起因物が環境等となってるものは、ほとんどが落雷によるものである。

キ すべての型(全災害)の業種ごとの推移(再掲)

なお、すべての型(全災害)について、同じ業種・同じ期間での労働災害発生件数の推移を、比較のため参考までに示す(再掲)。

全労働災害の業種ごとの推移

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(2)事故型ごとに見た業種別死亡災害の推移

ア 「墜落転落災害」の死亡災害の業種ごとの推移

さて、死亡災害は休業4日以上の災害と異なり、件数が少ないので偶然の要素も大きくなるが、災害件数の多い3つの型について同様にみてみよう。なお、死亡災害は事故の型によって業種のばらつきが多いので、それぞれの事故型ごとに表示する業種を変えている。

墜落転落死亡災害の業種ごとの推移

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まず、墜落・転落災害の死亡災害についてみてみよう。この事故型では、その多くを建設業が占めている。建設業は他の業種に比較すると、墜落したときの落下距離が大きくなるため死亡災害に占める割合が高くなるのである。

ただ、その発生件数は年々減少している。これは、先行足場工法、先行手すり工法の普及などが大きな原因だが、建設業で発生している墜落・転落災害は非工業的業種で発生しているものよりも比較的対策がとりやすいということもある。非工業的業種で発生している墜落・転落災害は、階段からの足の踏み外し、踏み台からの転落、一時的な高所作業での不慣れな作業などが多く、これらは対策がとり難い面があるのである。

なお、製造業も著しい減少をしている。製造現場において開口部等への手すりの設置等が進んだためであろう。

イ 「はさまれ・巻き込まれ」の死亡災害の業種ごとの推移

はさまれ・巻き込まれ死亡災害の業種ごとの推移

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「はさまれ・巻き込まれ」も死亡災害発生件数の多い事故型である。製造業と建設業で発生件数が多いが、建設業はこの20年間で大きく減少している。建設業では、建設機械と建築物との間に挟まれる災害が多いが、立入禁止措置の徹底が進んだことによるものと思われる。

製造業は、機械設備への巻き込まれ災害が多く、定常作業では覆いや囲いによる対策が進んでいるものの、非定常作業における「はさまれ・巻き込まれ」災害の対策が進んでいないためである。

結果的に「はさまれ・巻き込まれ」死亡災害に占める製造業での発生割合はむしろ増加する傾向がある。

ウ 「交通事故(道路)」の死亡災害の業種ごとの推移

交通事故(道路)死亡災害の業種ごとの推移

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また、近年では死亡災害に占める交通労働災害の割合が高くなっている。様々な業種で発生しているが、「運輸交通業」、「商業」及び「建設業」の割合が高い。建設業は小型バスによる現場への移動が労働災害となるケースの他、道路工事で交通整理をしていて自動車にはねられるケースが多い。

一般の交通死亡災害が減少する中で、交通死亡労働災害も減少傾向にある。しかし、今後の高齢化の中で増加することも危惧される。今後とも十分な対策が求められよう。

(3)起因物ごとに見た型別・業種別休業4日以上死傷災害の推移

ア 「建設用機械」の災害の型ごとの推移

次に起因物別の災害をいくつか示しておこう。まず、建設用機械の種類ごとに災害発生件数を見ると、掘削機械が最も多く全体の約43%を占める。次いで、整地・運搬・積み込み機械が約17%を占めている。

建設用機械を起因物とする型別労働災害の推移

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次に、建設用機械を起因物とする災害を型別にみると、「はさまれ・巻き込まれ」と「激突され」が極めて多い(※)

※ 建設用機械のカウンターウエイトと壁等にはさまれた場合、本来は「激突され」となるべきだが、「はさまれ・巻き込まれ」として計上しているケースもかなりあり、「激突され」と「はさまれ・巻き込まれ」の区別は必ずしも厳密なものではない。

また墜落・転落もかなりあるが、建設機械から墜落転落したもの、建設機械ごと墜落したもの、建設機械によって他の作業者が突き落とされたもの等が混在している。

なお、転倒は建設機械の上で移動中に転倒するケースも一部にあるが、多くは機械ごと転倒している(※)のである。

※ 厚生労働省の災害統計では、人が通路などで転んで怪我をした場合も、建設用機械などが転倒して労働者が下敷きになったような場合も同じ「転倒」に分類している。

建設用機械を起因物とする型別労働災害の推移

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死亡災害も同様である。こちらの墜落・転落は、建設機械ごと墜落・転落したケースが多いものと思われる。

建設用機械を起因物とする型別労働災害(死亡)の推移

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なお、建設機械のうち高所作業車は災害発生件数は多くはないが、他の建設機械とは異なる性格があるので別途まとめてみた。業種別には、その他の建設業が最も多いが、製造業や商業でも一定の件数は発生している。

通信業や映画演劇業(※)でも使用されることがあるが、ほとんど災害は発生していない。

※ 映画の撮影現場では高所作業車は「クレーン」と呼ばれ、椅子に座ったカメラマンが高所から撮影するための設備である。しかし、椅子に座ったままの作業で、狭隘な場所に近づく必要もないのでほとんど事故は起きないのだろう。

高所作業車を起因物とする業種別労働災害(死傷)の推移

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次に、高所作業車の災害発生件数を型別にみると次のようになる。墜落転落が最も多いが、バケットなど作業台から墜落するケースだけではなく、地上から高所作業車の作業台へ移動しているときに墜落するケースや、崖などから高所作業車ごと墜落するケースもある。

はさまれ・巻き込まれ災害は、作業台を移動させていて建物などと作業台の間にはさまれる災害がほとんどである。

高所作業車を起因物とする型別労働災害(死傷)の推移

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イ 「フォークリフト」の災害の型・業種ごとの推移

次にフォークリフトの業種ごとの発生状況を示す。様々な業種で発生しているが、製造業、運輸交通業のみならず商業でもかなり発生している。

フォークリフトを起因物とする業種別労働災害の推移

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型別でみると、「はさまれ・巻き込まれ」と「激突され」が多い。「はさまれ・巻き込まれ」はマストとヘッドガードの間に挟まれるようなケースもあるが、実際には車体と壁等の間に他の作業者がはさまれたケースがほとんどである。「激突され」と合わせて、フォークリフトの事故は他の作業者を被災させるケースが多いのである。

また、「墜落・転落」もかなり発生しているが、これは前述したように用途外使用でフォークに載っていた労働者が墜落するケースと、高所にいた他の作業者をフォークで突き落とすケースがある。

フォークリフトを起因物とする型別労働災害の推移

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ウ クレーン作業関連の災害の型・業種ごとの推移

(ア)「動力クレーン」等の災害の型・業種ごとの推移

最初に、クレーン等に関して、現象別の死亡災害の発生状況をみてみよう。これについては厚生労働省の統計データに詳細なものがないので、(一社)日本クレーン協会が発行しているクレーン年鑑の数値によっている。

クレーン等による現象別死亡災害の推移

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なお、ここで「挟圧」とあるのは「はさまれ・巻き込まれ」のうちの「はさまれ」と「激突され」のうち機体等と壁などの間に挟まれる形となったものの合計である。労働災害統計ではクレーン協会のみが使用している用語である。

このグラフから分かることは、「挟圧」、「落下」、「機体、構造部分が折損、倒壊、転倒」のような、基本を守っていれば防げたのではないかと思われる災害がいまだに多発しているということである。

(イ)クレーンと移動式クレーンを起因物とする災害の型・業種ごとの推移

さて、動力クレーン関係の労働災害では、次図に示すように、ほとんどがクレーンと移動式クレーンで発生している。そこで、次はクレーンと移動式クレーンについてみていこう。

動力クレーン等を起因物とする労働災害の推移

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クレーンと移動式クレーンの災害を業種別にみると、建設業よりも製造業の方が多い。運輸交通業の他、商業でもかなり発生している。

クレーン及び移動式クレーンを起因物とする業種別労働災害の推移

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クレーンと移動式クレーンの災害を型別にみると、ここでも「はさまれ・巻き込まれ」と「激突され」が多い。吊り荷と壁等の間にはさまれたり、吊り荷に激突されるケースが多いのである。退避の重要性がよく分かろう。

また、「飛来・落下」も多いが、玉掛けの問題が多いということが分かる。

クレーン及び移動式クレーンを起因物とする型別労働災害の推移

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クレーン関連災害の最後に、移動式クレーンによる現象別の死亡災害の発生状況をクレーン年鑑によって示しておく。

移動式クレーンによる現象別死亡災害の推移

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(ウ)玉掛用具を起因物とする災害の型・業種ごとの推移

次に、関連するものとして「玉掛用具」についてみてみよう。業種別には、クレーン、移動式クレーンの場合とほぼ同じである。

玉掛け用具を起因物とする業種別労働災害の推移

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型別でみると、「飛来・落下」がほとんどを占めている。玉掛けがきちんと行われていないのである。

また「はさまれ・巻き込まれ」も多発しているが、ワイヤロープと吊り荷に手を挟まれるケースなどで、「激突され」は吊り荷に激突されるケースがほとんどである。

作業の基本を守ることが重要であることが分かるデータである。

玉掛け用具を起因物とする型別労働災害の推移

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玉掛け関連の災害の最後に、クレーン年鑑に示された災害のうち、玉掛が関連していると思われる死亡災害の推移を示しておく。必ずしも玉掛けが原因となった場合のみではないだろうが、多くは玉掛け関連の災害と思われる。

つり荷が落下したり、機体が転倒したりといった災害が多いことが分かる。

玉掛け関連と思われる死亡災害の推移

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エ 「トラック」と「荷」の災害の型ごとの推移

(ア)「トラック」を起因物とする災害

この他、起因物別で災害が多いものに「トラック」と「荷」がある。これらの型別災害も参考までに示しておこう。

まず、トラックを起因物とする災害を型別に示そう。大型荷台をもつ貨物自動車のトラックである。トラックなら、交通事故がほとんどだろうと思われるかもしれない。

しかし、実際には「墜落・転落」が交通事故よりも多いのである。そのかなりの部分は荷台からの墜落である。トラックの荷台からの墜落災害防止が、陸上貨物運送業の重要な課題となっている。

トラックを起因物とする型別労働災害の推移

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(イ)「荷」を起因物とする災害

また、「荷」を起因物とするものは、「動作の反動・無理な動作」がかなりの割合を占めている。そのほとんどは「災害性の腰痛」であろう。

その他には、「飛来・落下」、「転倒」が多い。「はさまれ・巻き込まれ」、「崩壊・倒壊」、「激突され」なども発生している。「墜落・転落」も発生しているが、はい作業によるものであろう。

荷を起因物とする型別労働災害の推移

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オ 「アーク溶接装置」の型ごとの推移

また、アーク溶接装置もよく話題に上がるため、災害発生件数は多くはないがこれも挙げておこう。

最も多いのは「高温・低温の物との接触」であるが、スパッタによって火傷になるケースや、高温の母材や溶接棒に触れるケースであろう。はさまれ・巻き込まれが多いのは、厚生労働省の統計ではスポット溶接装置がアーク溶接装置に含まれているため、スポット溶接装置に手先をはさまれるケースがほとんどである。

感電はあまり多くないが、アーク溶接装置を起因物とする死亡災害に占める感電の割合はかなり高いことに留意するべきであろう(※)

※ 1999年から2021年までの約22年間に57件の死亡災害が発生しており、うち5割を超える29件が感電による。

アーク溶接装置を起因物とする型別労働災害の推移

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カ 「仮設物、建築物、構築物等」の推移

最後に起因物別で最も災害発生件数の多い「仮設物、建築物、構築物等」についてみてみよう。ただ、仮設物、建築物、構築物等といっても、きわめてその種類は多様である。

仮設物、建築物、構築物等と聞くと、足場や作業床などの仮設物で事故が多いと思われるかもしれない。しかし、実は、最も多いのは「通路」でこれに次ぐのは「階段、桟橋」である。多くの災害は、恒久的な構造物で発生している(※)のである。

※ なお、死亡災害では2021年の仮設物、建築物、構築物等を起因物とする全死亡災害 147 件のうち、38件が建築物、構築物、33件が屋根、はり、もや、けた、合掌、16件が通路、15件が開口部、13件が作業床、歩み板などとなっている。

仮設物、建築物、構築物等を起因物とする種類別労働災害の推移

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また、業種別では、多くの方は建設業に集中していると思われるだろう。確かに、かつては建設業が比較的多かったのだが、現在ではかなり減少してきている。

最近では、むしろ商業の方が多くなっているのである。また、保健衛生業が急増しており、最近では建設業よりも多くなっている。すなわち、仮設物、建築物、構築物等による災害であっても、近年では非工業的業種の労働災害発生件数が問題となっている(※)のである。

※ ただし、死亡災害では、2021年の仮設物、建築物、構築物等を起因物とする全死亡災害 147 件のうち、建設業が85件と半数以上を占めている。

仮設物、建築物、構築物等を起因物とする業種別労働災害の推移

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最後に、災害を型別に見てみよう。仮設物、建築物、構築物等を起因物とする災害では、かつては墜落・転落が最も多く、転倒がこれに次いでいた。最近では、転倒が急増して最も多くなっている。墜落転落は、近年でも減少傾向が続いており、転倒よりもかなり少なくなっている。

近年の労働災害防止の重点が、かつての典型的な災害であった足場や作業床からの仮設物からの墜落から、恒久的な建物内部の転倒災害などに移す必要がある(※)ことを示唆している。

※ ただし、死亡災害では、2021年の仮設物、建築物、構築物等を起因物とする全死亡災害 147 件のうち、墜落・転落が109件と3分の2以上を占めており、その対策が現在も重要性であることはいうまでもない。

仮設物、建築物、構築物等を起因物とする型別労働災害の推移

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