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労働安全コンサルタント試験受験の勧め(5/7)




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政府による圧力

労働安全コンサルタント試験は、労働災害防止のための労働安全管理の能力を証明するための最もレベルの高い国家試験です。ここ、数年、受験者数は急増している状態です。

とはいえ、受験者数はそれほど多くはなく、他のメジャーな資格試験ほどには情報があふれているわけでもありません。

労働安全の分野でのキャリアアップを検討しておられる方のために、労働安全コンサルタントとは何か、その難易度はどの程度か、具体的な内容はどのようなものかなどを、私自身の受験体験を交えて紹介します。

内容の無断流用はお断りします。



2 労働安全衛生コンサルタント試験の概要等

(2)筆記試験の内容等

ウ 筆記試験(記述式)

(ア)出題数及び解答数

記述式の問題は、4問が出題される。問1と問2から1題、問3と問4から1題を選んで回答する。記述式といっても、司法試験のような論文式ではない。1問の中の小設問数はかなり多く、それぞれの設問に短い簡潔な解法と解答を答えればよい。

なお、普通であれば、時間が足りなくなることはない。

(イ)出題の内容及びレベル

私が受けた電気安全に関して言えば、4問とも労働災害防止に関する形式を取ってはいたが、2問は電気工学に関する知識があれば安全の知識など全くなくても解ける問題であり、残り2問は電気工学の知識がなくても安全の知識があれば解ける問題であった。

分かりやすく言えば、電気工学と安全の知識の双方がないと、合格レベルに達することはできないということである。

試験問題のレベルであるが、電気工学の知識は高校の物理学程度の知識でも解けるのではないかという気がする。電磁気学の基本と電気回路学の基本が理解できていれば、十分に解けると思う。

(ウ)具体的な出題の例(電気安全関係)

私が受験したときの、電気安全について次のような問題が出題されている。

問1 可燃性ガス・蒸気によって爆発性雰囲気が形成される危険場所に関して、以下の設問に答えよ。

(1)可燃性ガス・蒸気の危険場所は、可燃性ガス・蒸気によって爆発性雰囲気が形成される時間又は頻度により特別危険箇所(ゾーン0)、第1類危険箇所(ゾーン1)及び第2類危険箇所(ゾーン2)に区分されている。

これらの危険箇所の意味について説明せよ。

(2)可燃性液体が入ったタンクの一部が開放されたときに形成される爆発性雰囲気の分類を示す下図において、記号a、b 及びc で示した領域の場所はそれぞれ上記(1)で挙げたどの危険箇所の区分に該当するか答えよ。

a :タンク内の液体上部

b :開放部近傍

c :タンク近傍(開放部近傍を除く。)

爆発性雰囲気の範囲
図 可燃性液体が入ったタンクの一部を開放したときの
  爆発性雰囲気

(3)電気機器の防爆構造のうち、次のものについて、どのようにして爆発・火災を防止しているのか簡潔に説明せよ。

① 耐圧防爆構造

② 安全増防爆構造

③ 本質安全防爆構造

(4)爆発性雰囲気を形成させないための一般的な対策を二つ以上簡潔に述べよ。

ご覧いただければお分かりいただけると思うが、電気工学の知識があっても全く解くことはできない。しかし、爆発防止に関する知識としては、かなり基本的な問題である。先述した大関親著「新しい時代の安全管理のすべて(第6版)」(中央労働災害防止協会2014年)にすべて解説が載っている。

① 小問(1)について

小問(1)の正解は次の通りである。これは定義なので覚えておくしかない。

① 特別危険箇所 :危険箇所のうち、連続し、長時間にわたり、又は頻繁に、ガス又は蒸気が爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所

② 第一類危険箇所:危険箇所のうち、通常の状態において、①及び②に該当しない箇所

③ 第二類危険箇所:危険箇所のうち、通常の状態において、ガス又は蒸気が爆発の危険のある濃度に達するおそれが少なく、又は達している時間が短い箇所

② 小問(2)について

小問(2)は、a=①、b=②、c=③である。これも覚えるしかない問題である。

③ 小問(3)について

小問(3)は次の通りである。

① 耐圧防爆構造:全閉構造で内容内部で爆発性ガスの爆発が起こった場合に、容器がその圧力に耐え、かつ、外部の爆発性ガスに引火するおそれのないようにした構造

② 安全増防爆構造:正常時及び事故時に発生する電気火花、又は、高温部を生じてはならない部分に、これらが発生するのを防止するように、構造上及び温度上昇について、特に安全度を増加した構造

③ 本質安全防爆構造:正常時及び事故発生に発生する電気火花、又は、高温部により爆発性ガスに点火しないことが、公的機関において試験その他によって確認された構造

③ 小問(4)について

小問(4)の答えはいろいろあるだろうが、要は可燃性のガス・蒸気を出さないこと、酸素を供給しないことである。

① 可燃性のガスや引火性の物を使用しないようにする。

② 可燃性のガスや引火性の物を密閉化し、内部に酸素や空気が入り込まないようにする。

③ 引火性の液体の温度を下げたり表面を他の液体で覆ったりする。

など、いろいろと考えられるだろう。

(エ)具体的な出題の例(電気理論関係)

問4 作業現場では、導電性フレコンバッグ、容器、工具などの導体の接地忘れ、接地不良が静電誘導の原因となり、爆発・火災事故が発生している。図に、絶縁された物体B(導体)の近くに帯電物体A が存在するときの静電誘導現象の状況を示す。これに関して以下の設問に答えよ。

ただし、図内の記号は以下のとおりである。なお、括弧内の記号は単位である。

C:物体A の静電容量[F]

C:物体B の静電容量[F]

C12:物体A と物体B 間の静電容量[F]

Q:物体A の電荷[C]

Q:物体B の誘導電荷[C]

V:物体A の電位[V]

V:物体B の誘導電位[V]

静電誘電現象
図 絶縁された物体B(導体)の近くに
  帯電物体A が存在するときの静電誘導現象

(1)負極性に帯電した物体A を物体B に接近させたとき、物体B の電荷分布を解答用紙の図に示せ。また、静電誘導現象について説明せよ。

(2)V[V]とV[V]を求めよ。

(3)Q[C]を求めよ。

(4)物体B に蓄積された静電エネルギーWs[J]を求めよ。

(5)物体B の周りに爆発性雰囲気が存在するときに、物体B から静電気放電が発生した。爆発性雰囲気の最小着火エネルギーが0.5 mJ である場合、この静電気放電により着火する可能性がある最も低いV[V]を求めよ。

一見、安全に関する問題のように見えるかもしれない。しかし、実際には単純な電磁気学と電気回路学の問題なのである。安全の知識など全くなくても正答は可能である。

① 小問(1)について

小問(1)については物体Aから出る電束がどのように拡がるかを考えればよい。電束の多くはBに向かうであろう。そして電束がBに当たるところに“+”の電荷が発生する。そして、同じ量の“-”電荷が発生するが、かなりの部分は大地側(下側)に発生するであろう。従って、まず、物体Bの左側に“+”を記す。次に、下側から右側にかけて“-”を記すが、下側を密にして右にいくにつれて疎にすればよい。

静電誘導については解説するまでもないだろう。「正又は負の電荷を帯びた物体を導体に近づけたとき、導体内の自由電子が動いて、電荷を帯びた物体に近い側にその電荷とは逆の極性の電荷が現れ、反対側などに電荷を帯びた物体と同じ極性の電荷が現れること。なお、この現象によって、導体内の電荷の総量が変化することはない」といった内容を書いておけばよい。

② 小問(2)について
等価容量回路図

図をクリックすると拡大します

小問(2)は高校生の物理レベルの問題である。この系を単純化して表すと右図のようになる。この系の全体の容量Cは、

C=C1+ C12C2
C12+C2

である。ここに電荷Q1が蓄えられているのであるから、V1

V1 Q1
C

となる。実際の答えの数字はマイナスになることに注意すること。

一方、V2はC12とC2の比によって定まり

V2=V1x C12
C12+C2

となる。これも答えの数字はマイナスになることは当然である。

③ 小問(3)について

小問(3)も普通高校の知識レベルで解ける。

Q2 = C12 ×(V1-V2

である。計算間違いをしないように注意すればよい。なお、この数字にはマイナスをつける必要はない。なお、物体B全体の電荷の総和はゼロであることに留意すること。従ってC12に蓄えられる電荷とC2に蓄えられる電荷は同じになる。

なお、C1に蓄えられている電荷は“Q1-Q2”である。添え字がCとQで統一されていないので誤解のないように留意すること。

④ 小問(4)について

小問(4)はやや迷うかもしれない。まず、コンデンサに蓄えられるエネルギーEが

E= 1 CV2
2

となることは、誰でも知っていることである。あとは、C12のエネルギーとC2のエネルギーをそれぞれ計算して合計し、物体Bはそれぞれのコンデンサの半分を形成しているので、2で除してやればよい・・・のだろうか?

ここで、迷うのは、エネルギーが本当に物体Bに蓄えられているのかということである。エネルギーが蓄えられているのはあくまでも物体間の空間であって物体ではない。物体Bに蓄えられたエネルギーは、本当にコンデンサに蓄えられたエネルギーを2で除して算出してよいのだろうか? フレコンバックを除電したら、物体Bのエネルギーはどこへ行ってしまうのだろう? 単純に考えれば答えは“ゼロ”とすべきだとも思うのだが・・・。

また、考えようによっては2で除さずに算出するべきだという考えもあるだろう。とりわけC2のエネルギーは2で除さないというのが常識的とも思える。

受験時にかなり迷ったのだが、最終的に私は2で除して解答しておいた。そうしないと(5)の問いに繋がらないからである。たぶん、出題者の意図と違ってはいないと思う。

⑤ 小問(5)について

静電気放電が発生したと問題文にはある。だがどこへ? 対地であればC2のエネルギー(もちろん2で除してはいけない)が発生するし、対フレコンバックであればC12のエネルギーが発生する。まあ常識的には対地だろう。そこで、解答用紙には「対地に放電したと考える」と明記しておいた。

その上で、C2のエネルギーが最小着火エネルギーに等しくなるV2の値を解答としておいた。





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