労働安全コンサルタント試験は、労働災害防止のための労働安全管理の能力を証明するための最もレベルの高い国家試験です。ここ、数年、受験者数は急増している状態です。
とはいえ、受験者数はそれほど多くはなく、他のメジャーな資格試験ほどには情報があふれているわけでもありません。
労働安全の分野でのキャリアアップを検討しておられる方のために、労働安全コンサルタントとは何か、その難易度はどの程度か、具体的な内容はどのようなものかなどを、私自身の受験体験を交えて紹介します。
内容の無断流用はお断りします。
2 労働安全衛生コンサルタント試験の概要等
(2)筆記試験の内容等
イ 筆記試験(産業安全法令(択一))
(ア)試験の概要
“産業安全法令”の出題は、ほとんどが条文レベルであるが、ごく一部に告示や通達レベルの問題もあるようだ。ただ、労働安全衛生規則ひとつとっても膨大な数の条文があり、すべてを覚えることなど不可能である。ところが、試験では、ここまで覚えている必要はないのではないかと思えるような、かなり細かなことが出題される。おそらく、元労働基準監督官のような受験生(※)でさえ、かなり苦労するだろうと思える。
※ 実際には、労働基準監督官として10年以上その職務に従事した者は「産業安全関係法令」が免除されるが、得意分野で点数を稼ぐためにこの科目を受験するケースも多いようだ。
なお、試験の範囲は、試験のある年の4月1日現在で施行されている法令が前提となる。従って、それ以降に施行される法令は試験の範囲ではない(※)。
※ 試験の申込書に同封されている「試験案内」に「法令等の基準日」が記載されているので、参照して頂きたい。
正直に申し上げれば、私は、安全コンサルタントも衛生コンサルタントも法令は免除の対象だった。そして、衛生コンサルタントのときは免除を受けなかったが、安全コンサルタントでは受けた。私はどちらかというと衛生の方が詳しいということもあるが、安全はあまりにも細かい内容が出題されるので敬遠したのだ。
(イ)参考書等
法律系の最難関の試験は司法試験と司法書士試験であろう。これらの試験では、受験の3種の神器として、基本書、条文、過去問がよく挙げられる。
労働安全コンサルタント試験の“産業安全法令”にこれを当てはめてみよう。まず基本書だが、残念ながらこの試験では専用の基本書といえるようなものは存在していない。そこで、安全管理者のためのテキストのうち、しっかりしたものを選ぶとよいと思う。
安全管理者のテキストで、コンサルタント試験に本当に合格できるのかと不安に思うかもしれない。確かに、機械関連の問題にはやや足りないかもしれない。そこで、「小型移動式クレーン」と「掘削用機械」の技能講習用テキスト、「産業用ロボット」の特別教育用テキストを補助教材として利用するとよいかもしれない。ただし、技能講習や特別教育のテキストは、産業安全法令の受験対策としてはやや無駄が多いが、産業安全一般の役にも立つ。これらのテキストは、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会などで販売(直販)されている。
(ウ)過去問への対応
次に過去問だが、労働安全コンサルタント試験の過去問は、このサイトで詳細な解説を示している。また、問題のみであれば試験協会のWEBサイトにも公開されている。なお、解説書はコンサルタント会からも出版されている。
もちろん、過去問だけで合格できるわけではないが、過去問は、試験のレベルと出題傾向を知るためにも重要であるし、過去の試験問題の内容を理解しておけば解ける問題も、毎年、数題は出題される。過去問だけの学習は避けるべきだが、過去問の内容はきちんと理解しておく必要がある。
過去問をどのように活用するかについては、別稿を起こしたい。
(エ)法令集は必須
条文については、もちろん、基本的なものを別にすれば、細かな条文の内容を覚える必要はない。しかし、学習するとき、テキストや過去問の解説に条文が出てきたときは、条文を参照する癖をつけておくと役に立つ。
安衛法便覧が便利だが、それ以外でもかまわないので、労働安全衛生の条文集を1冊購入しておくとよいと思う。