※ イメージ図(©photoAC)
現在、イスラエルは、2023年10月7日のハマス等によるイスラエルへの攻撃を契機として、パレスチナのガザ地区に対してジェノサイドと評される攻撃を行っています。このため、すでに2万人以上の市民が殺害され、そのうち多くを子供と女性が占めています。
このようなジェノサイドが行われていることを見過ごすことは、人類の未来に大きな禍根を残すことになるばかりか、世界の安定に不安要素をもたらします。
ネタニヤフとシオニストの強硬派によるこのような大量殺人を止めさせるために、私たちが何をなすべきかについて私なりの解説を本稿で行っています。
私たちが目指すべきは、パレスチナ人とユダヤ人がともに平和に生きられる社会です。パレスチナ人とユダヤ人の友好が実現し、ともに若者が未来に夢を持てる社会の実現なのです。しかし、その実現のためには、ネタニヤフに対して国際世論によって圧力を加えるとともに、彼らに和平がイスラエルにとって必要なのだと理解させる必要があります。そのために、何をなすべきかを考えていきましょう。
1 国際社会が行うべきこと
執筆日時:
最終改訂:
BREAKING: In the pouring rain in New York City, actress @SusanSarandon joins over 100+ cities around the world in today's global day of action for Rafah.
— BreakThrough News (@BTnewsroom) March 2, 2024
Activists say millions around the world are standing up today against Israel's threats to intensify the genocide. pic.twitter.com/DJCXJtbE2B
最後になるが、現在のガザにおけるジェノサイドの状況は解消されなければならないし、イスラエルが行っていることは許されることではない。
また、パレスチナ人は、本来は川から海までの正当な権利を有するものであるが、そこにこだわっていては解決の道筋は見えてこない。
国際社会が目指すべきは、イスラエルとパレスチナの和解であり、イスラエルとパレスチナに住むユダヤ人とパレスチナ人が平和に生きられる社会を実現することである。
グリーンラインでイスラエルとパレスチナを分かつ、2国家解決をアッバスもハマスも認めているのであり、その方向での解決の道筋を探るべきである。
ネタニヤフは、承認しないだろうが、承認させるために、国際社会は断交措置をとるなど断固とした措置を採るべきである(※)。
※ 残念ながら日米欧はイスラエルとの友好関係を保持するだろうが、アジア・アフリカ・中東(一部を除く)が力を合わせることで、イスラエルに圧力をかけることはできるだろう。グローバルサウスも団結できるとは限らないが、その力は大きくなりつつあるのだ。
2 私たちが行うべきこと
I'm not ashamed...
— Mariam from Gaza 🇵🇸 (@KufiyyaPS) February 24, 2024
I'm not ashamed to say that I'm hungry, sometimes I dream of eating my favorite meal but I taste nothing, and then I wake up and cry
I'm not ashamed to say I'm afraid of death, scared of airstrikes, shivering from the cold at night, and have nightmares every…
繰り返すが、私たちが目指すべきは、パレスチナ人とユダヤ人がともに平和に生きられる社会である。パレスチナ人とユダヤ人の友好が実現し、ともに若者が未来に夢を持てる社会の実現である。
私は、本稿を執筆するに当たって、パレスチナの側に立つ論者のみならず、ユダヤ人やときにはシオニストの側の論者の主張もできるだけ引用するようにした。それは、この問題がユダヤ人対アラブ人という構造ではないと理解して頂きたかったためである。これはユダヤ人対パレスチナ人の問題ではないのだ。
これは、他の民族を支配し抑圧する側と人間性を開放しようとする側の争いなのである。反占領、反植民地主義、反ジェノサイドは、反ユダヤ主義ではないのだ。
ガザの解放のために、我々がなすべきことは何だろうか?それは、第一にパレスチナ問題から目をそらさないことである。さらに、和平に背を向け、ジェノサイドを続けるイスラエルに対して圧力をかけ続けることである。
【私たちにできること】
- パレスチナに目を向け続けること、そして、様ざまな機会にパレスチナについて発言することを忘れないこと
- 政府に対して、イスラエルの横暴を止めることを要求し続けること
- BDS(イスラエル製品のボイコット、投資の引き上げ、経済制裁)を続けること
※ イメージ図(©photoAC)
もちろん、これらのことを行ったからといって、ただちに世界が変わるわけでもなければ、イスラエルがガザでのジェノサイドや西岸での暴力を控えるわけではないだろう。しかし、第一次インティファーダによる国際世論の変化がイスラエルに圧力をかけ、オスロ合意というきわめて問題の大きなものであったにせよ、和平への動きが出たことも事実なのである。
グローバルサウス、南北双方の心ある世界の市民、そしてイスラエル内外の良識あるユダヤ人も含めて、声を上げてゆくことが重要なのである。
我々、個々の市民の力は小さいが、それを合わせれば世界を動かすことが可能となる。我々人類の歴史はそのことを明確に証明しているのだ。
3 反ユダヤ主義は我々の敵だ
ここで、気を付けなければならないことは、反ユダヤ主義に陥ることは絶対に避けなければならないということだ。むしろ、反ユダヤ主義は我々の敵なのだ。少なくないユダヤ人は植民地支配やシオニズムに反対している。それら多くのユダヤ人は我々の友人であって敵ではない。
そればかりか、我々は穏健派のシオニストとも敵対関係となることを避けなければならない。彼らを味方に付けない限り、パレスチナに和平は訪れはしないということを理解するべきだ。
最後に、イスラエルのジャーナリストであるギデオン・レヴィ氏によるスピーチ(下記ポスト)の逐語訳を紹介しておこう。
【ギデオン・レヴィ氏によるスピーチ】
Israeli man delivers one of the greatest speeches in modern history…🇮🇱🇵🇸 pic.twitter.com/tL84eUEFru
— Pelham (@Resist_05) February 2, 2024I'm an Israeli
私はイスラエル人です
I was born in Israel
イスラエルで生まれました
I even perceive myself as an Israeli patriot
私自身をイスラエルの愛国者であるとさえ認識しています
I care about Israel
イスラエルのことが大切です
I belong to Israel
私はイスラエルに帰属しています
I'm attached to Israel
イスラエルに愛着があります
Don't speak about Symmetry because there is no Symmetry
対称性について語るべきではありません。対称性などないからです
I would even suggest that there is no conflict
あえて申し上げるが、紛争も存在していないのです
Was there a French Algerian conflict?
フランスとアルジェリアの間に紛争がありましたか
There was a brutal French occupation in Algeria
残忍なフランスによるアルジェリアの占領があっただけです
which came to its end
それは終わりました
And there is no Israeli Palestinian conflict
そしてイスラエルとパレスチナの間に紛争はありません
There is a brutal Israeli occupation
残忍なイスラエルの占領があるのです
Which must come to its end one way or the other
何らかの方法で必ず終わらせなければなりません。
In our backyard there's a regime which is today by far one of the most cruel brutal tyrannies on earth
私たちのすぐ近くに、太古から今日まで地球上でもっとも残酷な独裁政権が存在しているのです
And I know what i say because I cover it for 40 years and this regime cannot be defined bit is an apartheid
私はそれを40年間取材してきたから言えます。それは、アパルトヘイトとしか言いようがありません。
Two peoples live on one piece of land one people is all the right in the world
二つの民族が一つの土地に住んでいて、一方がすべての権利を享受しているのです
And I'm talking now only about the occupied territories
そして、私が話しているのは占領地のことだけではありません
One people is all the right in the world
一方が、すべての権利を享受しているのです。
The other people have no right whatsoever
もう一方は、何の権利もないのです。
It looks like apartheid
アパルトヘイトのように見えます
It talks like apartheid
アパルトヘイトのような発言があります
It is apartheid and nobody can contradict it
それはアパルトヘイトなのです。誰にも反論はできません
Go to the Jordan Valley see the prosperity in the settlements
ヨルダン峡谷(※)へ行けば、入植者の繁栄を見ることができます
And then go and the Palestinians who live there without electricity without water without any right
そこで暮らしているパレスチナ人は、電気も水も、なんの権利もない生活をしています
And then tell me if it's apartheid
これはアパルトヘイトです
or you might invent it another title
そうでないというなら、何なのでしょう
※ ヨルダン川西岸の東部。ほとんどが C 地域で、パレスチナ人の人口は多くない。(引用者注)
※ 「Israeli man delivers one of the greatest speeches in modern history」
なお、イスラエルにおける差別構造はパレスチナ系住民に対するものだけではない。社会の中枢をなしているのは欧州や旧ソ連からの移民がほとんどで、エチオピア出身者などは二級国民の扱いを受けている。また、ホロコーストサバイバーに対する差別も深刻で、ダニエル・ゴーディス(※)に、ホロコーストサバイバーが「せっけん」と呼ばれて差別されているエピソードが紹介されている。差別していたシオニストは、ナチがユダヤ人の犠牲者の遺体から石鹸を製造していたことを知っていたのだ。
※ ダニエル・ゴーディス「イスラエル 民族復活の歴史」(ミルトス 2018年)245頁による。なお、イスラエルでは欧州のユダヤ人の言語であるイディッシュ語が嫌われているが、シルヴァン・シベル「イスラエル vs. ユダヤ人」(明石書店 2022年)によるとイディッシュ語がホロコーストの犠牲者が話していた言葉だからである。
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