ミャンマーと企業のリスク管理




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ミャンマー国旗

ミャンマーの軍事政権による人権侵害が国際的な批判を浴びています。欧米の指導者たちは、自らの言葉でただちに軍事政権の弾圧行為を強く批判するとともに、欧米が強調して経済制裁による圧力をかけています。

日本企業は、ミャンマーと経済的なつながりを有するケースもあります。このような中で、人権を守らないこと、人権弾圧を非難しないことは、企業の存続に対するリスクとなっています。

人々の目は、企業が人権と利益のどちらを重視しているかを監視しているのです。




1 ミャンマーの軍事政権の人権侵害への国際社会の対応

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ミャンマー国旗

ミャンマーの軍事政権による人権侵害がすさまじい。TwitterやFacebookには、現地の市民による軍事政権の残虐行為の動画や写真が多数、アップされている(※)

※ あまりにも悲惨すぎるので、ここに直接、動画や画像を埋め込むことは避ける。関心がある方は、thutricia氏Kai Gracey氏The Irrawaddy (Eng)などのTwitterを確認して頂きたい。

欧米の指導者たちは、軍事政権による人権侵害が起きると、早いうちに自らの言葉で軍事政権の弾圧行為を強く批判するとともに、欧米が強調して経済制裁による圧力をかけている(※)。国連の事務総長も軍事政権を批判し、国際社会への団結を呼びかけた。

※ 朝日新聞DIGITAL 2021年2月3日「米、ミャンマー政府への援助停止へ 軍クーデターと認定」、時事通信 2021年3月29日「米、対ミャンマー貿易協定停止 国軍の武力弾圧で USTR」など

これに対し、我が国の菅総理は自らの言葉で軍事政権を批判しようとしていない。加藤官房長官が記者会見の席で、記者からの質問に答えておざなりな批判をしているのみなのである。経済制裁も3月31日になっても、検討をしているような段階で(※)、6月22日まで何もしていない。

※ 読売新聞オンライン 2021年3月31日「【独自】ミャンマーへのインフラ支援、一部停止へ…国軍からの新規要請は拒否」など。なお、5月14日には「ミャンマーでのクーデターの影響を受ける住民への食料支援のための緊急無償資金協力」を決定している。その支援が軍事政権の手に渡るだけではないかという疑念には堪えていない。



2 日本政府の反応の鈍さ

国際的な人権侵害に対する我が国政府の動きは、概して低調である。今回も、軍事政権に対する圧力をほとんどかけていない(※)

※ 例えば時事通信 2021年3月30日「政府、対ミャンマー制裁なお慎重 米欧と隔たり、対応苦慮続く」、毎日新聞3月27日「『日本政府、何もしてない』在日ミャンマー人、外務省に公開質問状」、篠田英朗「日本政府が『ミャンマー軍の市民虐殺』に沈黙を続ける根本的理由」(PRESIDENT Online 2021年4月27日)など

このため、ミャンマー国内で日本政府に対する苛立ちが高まっている。軍事政権による人権侵害が明らかになった状況下でさえ、ミャンマーに対する支援を停止しようとしなかった(※)のであるから、当然のことである。政府は、医療支援などは市民のために必要だと主張しているが、軍事政権への支援が市民の手に渡るという期待は、ばかげた妄想に過ぎないというべきだ。

※ クーリエ・ジャポン 2021年3月27日「ミャンマーで日本政府によるメッセージが炎上!『失望』の烙印は押されたのか」、東洋経済 2021年3月3日「日本の「ミャンマー宥和外交」は機能しているか」、東洋経済 2021年4月3日「ミャンマー虐殺、日本政府の対応に広がる失望」など

そればかりか、日本政府は3月31日には新たな円借款に関する書簡の交換を行っている(※)

※ 外務省「ミャンマーに対する円借款に関する書簡の交換」(2021年3月31日)による。なお、NHKは同日付で、「ミャンマーへの制裁は実施せずも新規ODAを見送る方針 日本政府」(2021年3月31日)という報道をしている。



3 日本国内における信じがたい主張

このような中、安倍総理の熱心な支持者である山田敏弘氏が、信じがたい発言をしている。ITmediaの2月11日の記事で「クーデターで世界から非難を浴びるミャンマーを見捨てずに、つながりを強化した方がいい。それが日本の利益につながることになる」と主張しているのである。この記事が掲載された日は、国軍による発砲で最初の死者が出た後のことである。そして、6月23日現在、国軍による死者が数百名に達した段階に至るも削除されていない。

山田氏は、また「今、菅首相はまずミャンマーとの協議に力を入れるべきだろう。それが日本のミャンマーでのビジネスにもつながる」とも言っておられる。市民を殺害する政権と協力をすることによって、日本企業のビジネスに繋げるべきだというのである。

世界がミャンマーと手を切ろうとしているときに、抜け駆けをするべきだと主張しているのだ。



4 日本企業はどのように行動するべきか

当然のことながら、山田氏の発言は良識ある企業からは相手にされていない。だが、軍事政権に対して毅然とした態度をとっている企業が多くはないことも事実である(※)。そのような中、キリンホールディングス株式会社が、軍事政権に対して毅然とした態度をとったことには好感が持てる。

※ 読売新聞オンライン2021年3月31日「原田勝広の視点焦点:ミャンマー、日本企業どうする?」など

日本企業は、人権を守らないこと、人権弾圧を非難しないことは、企業の存続に対するリスクであると認識するべきだ。人々の目は、企業が人権と利益のどちらを重視しているかを監視しているのである。

※ 例えば、読売新聞オンライン2021年4月29日「【独自】ミャンマー人の9割超「日本は経済制裁すべき」…日系企業勤務者に意識調査」によれば「日系企業の対応については、日本人では『意見表明が不十分』との回答が53・3%で、『ミャンマー人の間で失望感が高まっている』などの意見が寄せられた」などとされている。

世界的に見れば、人権侵害や環境破壊を行う企業への不買運動は、当然のことだと考えられている。最近の日本国内でも、代表者がヘイトを行った化粧品企業に対する不買運動が広がった。そして、それはSNSを通して、あっという間に世界に拡がるのである。

現在、世界中で軍事政権の市民への弾圧に批判が集まっている。TwitterにもFacebookにも、ハッシュタグ #SaveMyanmar が溢れている。そして、(中ロ日は別として)各国の首脳も軍事政権を強く批判している。

ミャンマーの軍事政権に対して、あいまいな態度をとることは、多くの企業にとって極めて危険でリスクの高い行為なのである。



5 軍事政権に対する態度を明確にしよう!

軍事基地

ミャンマーの軍事政権の市民への弾圧は、すでに常軌を逸していると言えよう。無抵抗で非武装の市民に対し、デモ参加中ばかりでなく家の中にいる場合にまで銃撃を行い、女性や子供まで殺害しているのである。そして、その証拠は多くの報道やSNSにあふれている。

今、我々が行うべきことは、短期的な損失を覚悟してでもミャンマーの軍事政権との経済的な関係を切ることである。そして、公式又は非公式に軍事政権を批判することである。

いつまでも軍事政権が続いたりはしない。軍事政権が倒されてミャンマーの民主化が実現すれば、また事業活動は再開できるのである。今、軍事政権との繋がりを切らなければ、民主化が実現した後で、ミャンマー国民はおろか、世界中の市民からボイコットを受けることになろう。






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