10月7日事件以降の国際社会の反応

トップ
パレスチナの国旗

※ イメージ図(©photoAC)

イスラエルは、2023年10月7日のハマス等によるイスラエルへの攻撃を口実として、パレスチナのガザ地区に対してジェノサイドを行っています。すでに3万人以上の子供や女性が犠牲になっています。

※ 死者数は、イスラエルの人権組織 B’TSELEMFatalities: All data [Explanation]に詳しく紹介されている。

ところが、イスラエルによるジェノサイドについて日米欧(欧州は一部のみ。)の政府は、遠慮がちに批判はするものの、基本的にイスラエルの行動を止めようとはしませんでした。むしろ米独仏の政府は積極的にイスラエルによるジェノサイドを支持し、独仏はイスラエルを批判することを非合法化するという暴挙を行っています。

これに対し、イスラエル内外の少なくないユダヤ人を含む世界の市民が、イスラエルによるジェノサイドを批判しています。グローバルサウスも、一部に例外はあるものの。多くの国ぐにがイスラエルへの批判を強めています。

本稿では、イスラエルの行っているジェノサイドについて、国際世界がどのように反応しているかについて、概説しています。

私たちが目指すべきは、パレスチナ人とユダヤ人がともに平和に生きられる社会です。パレスチナ人とユダヤ人の友好が実現し、ともに若者が未来に夢を持てる社会の実現なのです。しかし、その実現のためには、イスラエル=パレスチナの問題について世界がどのように反応しているのかを正しく理解することも重要です。




1 日米欧の政府の動き

執筆日時:

最終改訂:

(1)日米欧の政府の基本的な対応

10月7日の事件が起きると、それまで西岸での入植者の人権侵害や、ガザの封鎖による緩慢なジェノサイドについては気にもかけなかった(※1)西側のメディアは、突然、人権意識に目覚めたようだ(※2)

※1 小田切拓「続・ダヒヤドクトリン」(現代思想 2024年2つ記号)によると、ヨルダン川西岸では、イスラエル軍がA地域、B地域に侵入し、パレスチナ人 340 人が殺害され、4,000 人以上が負傷している。また、入植者による暴行、殺人も日常的に行われている。

さらにガザ地区は、国連が2012年に「イスラエルの封鎖によって2020年までに人が生活できない場所になる」と予想している。これらの重大な人権侵害について、西側諸国のメディアはほとんど関心を寄せなかった。

※2 私は、西側メディアに聞いてみたい気がする。あなたたちは、日米欧とイスラエルの市民(白人と日本人に限る)一人の生命は、パレスチナ人何人の生命と等しいと思っているのですか、100人ですか、1,000人ですか、それとも日米欧とイスラエルの国民の生命はかけがえのないものだが、パレスチナ人の生命など価値のないものだと思っているのですかと。

アラブの側のテロで西側の市民が死亡すると声高に人権を叫ぶくせに、「報復」と称してアラブの市民を平気で殺害する米国とイスラエルの「人権意識」、そしてそれを支持する日欧の政府の意識は私には理解不可能である。

そして、それは多くのアラブ諸国、アフリカ諸国、アジアの一部の諸国の国民にとっても同様なのである。彼らが「テロ」を批判する西側の正義感に対して胡散臭いものを感じ、ときには「テロ」に対してシンパシーを感じることさえあるのは、米国やイスラエルがアラブの市民を平気で殺害する西側のダブルスタンダードを知り抜いているからだ。この感覚が理解できないのであれば、その人は「平和を愛する人道主義の文明人」なのだろう。そのことを誇ればよい。私はごめんこうむるが。

西側メディアは、イスラエルの言うことはすべて信じて、ハマスの「残虐行為」の報道を始めた。現実には、その多くは証拠もない怪しげな情報だったのだが、西側メディアはそれを(イスラエルからの情報と断った上ではあったが)そのまま報じたのである。

このような中で、日米とイギリス、ドイツなど少なくない欧州の政府と多くの米国企業は、現在まで基本的にイスラエルの支持という立場に立っており、その一方で、ハマスをテロ集団と位置付けて批判した(※1)。そして、バイデンは、国連におけるガザの停戦決議のほとんどを拒否した(※2)ばかりか、イスラエルに対して武器の供与を行っているのだ。

※1 日本経済新聞2023年12月7日「要覧のテロ組織一覧にハマスなし、修正の方針 法相陳謝」によると、「公安調査庁が世界のテロ組織の情勢をまとめた2023年版『国際テロリズム要覧』で、テロ組織や過激派組織をまとめた一覧に、22年まで記載していたイスラム組織ハマスが載っていないことが7日、分かった」という。これは、「小泉氏(法相:引用者注)によると、22 年版要覧には、米国や欧州連合(EU)の指定したテロ組織など、ハマスを含むおよそ230団体を載せた。『なぜテロ組織なのか』などと外部の問い合わせが集中したため、23 年版は国連安全保障理事会の制裁委員会が指定した 60 団体ほどに絞った。この中にハマスは入っていなかった」という。ところが、「23年版要覧は9月に公表。公安庁は7日、取材に対し、要覧の扱いについて『適切に検討する』と回答した。要覧を抜粋してテロ組織などをまとめたサイトの記載は『政府の立場について誤解を一部招いた』として、既に削除した」とのことである。

すなわち、国連安全保障理事会の制裁委員会は、ハマスをテロ組織とは認定していないのである。また、日本政府は公式にはテロ組織かどうか公式には明確にしていないということになろう。ハマスをテロ組織として、切り捨てる姿勢からは何も生まれない。西岸の暫定政府がパレスチナの支持を失っている現状では、当事者能力を有する交渉相手としてハマスを除外することは考えられないのである。

※2 日本経済新聞2023年12月9日「ガザの停戦決議、米の拒否権で否決 国連安保理」など参照。決議案はアラブ首長国連邦(UAE)が提出。イスラエルとハマスの双方に停戦を呼びかける内容で、アラブ諸国や中国、ロシアなど 100 国以上が共同提案者となっている。米国が拒否権を行使して否決となった。なお、13 カ国が賛成し、反対は米国のみ、英国は棄権した。日本もこのときは賛成に回っている。

【国連安保理の関連する決議案の結果】

日付 決議案 結果 投票状況
10月16日 即時停戦を求めるロシア案 否決 日米英仏が反対・棄権が6票で、賛成が9に満たず
10月18日 援助提供を可能にするため戦闘の一時的な中断を求めるブラジル案 否決 賛成は12票、米国が拒否権行使、英ロは棄権
10月25日 人道支援を可能とするために戦闘の一時的な停止が「不可欠」だが、その後はイスラエルの攻撃を認める米国案 否決 賛成は10票、中ロが拒否権行使、UAEは反対、棄権が2票

10月25日 人道的な停戦を求めるロシア代替案 否決 賛成は4票、米英が拒否権行使、棄権が9票
11月10日 フーシによる攻撃停止等を求める決議案を求める日米案 採択 賛成は11票、棄権は中ロなど4票
11月15日 子供支援の一時戦闘休止を求めるマルタ案 採択 賛成は12票、米英ロは棄権
12月08日 即時停戦を求めるUAE案 否決 賛成は13票、米国が拒否権行使、英国は棄権
12月22日 人道支援拡大を求めるUAE案 採択 賛成は13票、米ロは棄権
2月20日 ラファへの地上侵攻回避に向けた即時人道停戦を求めるアルジェリア案 否決 賛成は13票、米国が拒否権行使、英国は棄権
3月22日 ハマスによる人質全員の解放と、そのための6週間の停戦が「不可欠」だがその後はイスラエルの攻撃を認める米国案 否決 賛成は11票、中ロが拒否権行使、アルジェリアが反対、ガイアナが棄権
3月25日 日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案した戦闘のラマダン中の即時停戦と人質全員の即時かつ無条件の解放を求める決議案 採択 賛成は14票、米国が棄権

※ 米国案は、いずれも先頭の一時的な停止が「不可欠」とするのみで、戦闘の停止を求めるものはない。この他、修正案の決議が行われているがすべて否決された。12月の安全保障理事会で、即時停戦を求めたロシアの修正決議案には米国が拒否権を行使した。また、3月25日の決議案に「恒久的な」を追記するロシア修正案は米国が反対した。

さらに、国連人権理事会は2024年4月5日に、ガザでの停戦や、加盟国にイスラエルへの武器や弾薬、軍需品の売却や移転の停止を求める決議を賛成多数で採択した。ところが、米国とドイツを含む6カ国が反対し、日本を含む13カ国が棄権したのである。ガザでイスラエルによるジェノサイドが行われていることは明らかであり、そのイスラエルに武器を送ろうとする米国、ドイツなどは、もはや正義を口に出すべきではない。

しかし、あまりにもガザにおけるイスラエルの行動が非人道的に過ぎるためか、パレスチナへの同情の動きも起きつつある。国連の安全保障理事会で、イスラエル大使が演説している間、世界各地の外交官が退出したのは象徴的である。また、英国ではパレスチナを国家として承認する動き(※)も出ている。

※ BBC 2024年1月31日「英外相、パレスチナ国家の承認を「前倒しする用意」示唆 和平には「不可逆的進展」必要と

また、野党レベルでは、スペインのポデモス党がイスラエルとの国交断絶を主張するなど、様々な形で批判が広がっている。


(2)国内の言論を抑圧

米国には、強力なイスラエルロビー(ユダヤロビーではない)が存在しており、シオニズム支持派のユダヤ組織とキリスト教福音派が大統領選挙を左右する力を持っていることはよく指摘されることである(※)。米国大統領は、所属政党にかかわらず簡単にはシオニズムを批判できないのだ。最近では、ネタニヤフを批判すると各級議員が落選させられるような状況さえ起きている。

※ 日本でも統一教会が自民党議員の選挙を支援していることが大きな社会問題となった。また、某与党の支援団体である宗教組織の票がないと当選が困難になる自民党議員がいることもよく指摘されている。

イスラエルが情報技術の政治目的での使用に長じていることはよく知られている。国民の思想調査や世論誘導に関する欧米のような規制がないので、この種の技術力を試すにはもってこいの土地柄なのである。トランプが大統領になったことには、SNS での世論調査の影響があったとはよく指摘されることだが、議員にとってイスラエルの力は恐怖感を受けるには十分であり、シオニズムへの批判が困難になっている面があるのだ。

しかも、「民主国家」のはずのフランスとドイツは、パレスチナ連帯デモを、反ユダヤ主義だとして禁止するという暴挙を行っている(※)。後述するように、米国内ばかりかイスラエル国内でも、ユダヤ人によるイスラエルのジェノサイド批判のデモが行われている。ジェノサイドへの批判を反ユダヤ主義と規定するなど、まったく根拠のない言論封殺に過ぎないというべきである。

※ 反ジェノサイドと反ユダヤ主義を混同することによる誤りと言うべきだ。反イスラエルは反ユダヤ主義ではない。なお、米国、英国などではこのような措置はとられていない。

日米欧では、政府レベルではイスラエル支持に固まっているようだ。しかし、市民レベルではパレスチナ支持が有力となっている。中東は言うに及ばず、アジア・アフリカでは、一部の独裁国家を除けばパレスチナ支持が有力になりつつある。


(3)UNRWA への支援を停止する動き

また、2024年1月には、UNRWA の一部の職員が10月7日の攻撃に関与していたという「疑惑」が報道され、米国と日本の政府が UNRWA への支援金を停止するという暴挙にでた。UNRWA はガザにおいて、被災したパレスチナ人への食糧供給や負傷者への医療活動を行っている。これへの支援金の停止によって、多くの市民が亡くなることは確実である。ジェノサイドに手を貸す行為と言わざるを得ない。

UNRWAは、2月1日に声明を発し、「これまでにあわせて4億4000万ドル、日本円にしておよそ645億円の支援が停止され、2月中には活動を停止せざるを得なくなる可能性が高い(※)としている。UNRWA はパレスチナ支援の主要な公的機関であり、イスラエルによるガザへの攻撃と封鎖が続く中で、パレスチナ市民の増加が確実に見込まれる。日米欧のヒューマニズムには、米国の非友好国の市民は含まれないようだ。

※ NHK 2024年2月2日「ガザ地区支援の国連機関 UNRWA 資金支援停止受け 活動停止か

そもそもこの疑惑なるものがかなり怪しげなものであり(※1)、また仮に事実だったとしても、ジェノサイドの被害を受けつつあるパレスチナ市民への救援活動を続ける UNRWA への支援を止める理由はどこにもない。人道への支援を止める恥知らずな行為(※2)というべきである。

※1 時事通信 2024年2月16日「イスラエルからの証拠「ない」 職員の襲撃関与疑惑―UNRWA幹部」、Channel 4 2024年1月30日「Israel’s evidence of UNRWA Hamas allegations examined」、Sky News 2024年1月30日「Israeli intelligence report claims four UNRWA staff in Gaza involved in Hamas kidnappings」など

※2 BBC 2024年2月5日「国連のガザ支援機関、「極めて切迫した」状況 日本なども資金拠出ストップ」、AFP 2024年1月30日「UNRWA資金停止、悲嘆に暮れるガザ住民」、朝日新聞2024年1月29日「疑惑のUNRWA 資金拠出停止10カ国超に 「集団懲罰」の懸念も」など

また、2024年2月1日に国連広報センターが公表したところによると「ガザでは、多くの家族が避難している UNRWA 施設が少なくとも 270 回攻撃され、372 人が殺害された」としている。これは、テロではないのだろうか。


2 グローバルサウスの動き

国際社会のイメージ

※ イメージ図(©photoAC)

イスラエルによるガザでのジェノサイドの実態は、日米欧を除く各国政府の強い怒りを生んでいる。イスラエルは、国際的に孤立しつつあるといってよい。イスラエルが行っていることは、人類普遍の倫理に反するのだ。イスラエルは、国際社会が彼らの行為を支持すると信じていたようだが、最近になってようやく国際社会が彼らの行為を支持していないと気付いたようだ。

「ブチャは大虐殺だがガザは虐殺ではない」などという主張は、日米欧では通用しても、常識のある人間には通用しない(※)。グローバルサウスは、米国の同盟国の市民が殺害されると強い批判の声を上げてときには反撃と称して無関係な市民を殺害することがあるにもかかわらず、グローバルサウスの市民が殺害されてもほとんど関心を示さない日米欧の政府のダブルスタンダードに苦々しく感じている。これが、ロシアによるウクライナ侵攻への批判がグローバルサウスに拡がらない一因となっていることは否定できない。

※ 皮肉なことに、ジェレンスキーはイスラエルのガザ攻撃を支持している(AFP BB News 2023年10月8日「ゼレンスキー氏「イスラエルの自衛権に議論の余地なし」」、朝日新聞 2023年10月25日「苦境のゼレンスキー大統領「イスラエルと連帯」 関心低下を恐れたか」、JB press 2023年11月13日「変わり始めた「正義」の潮目、ゼレンスキーの大失策も後押し」など参照)。かつてジェレンスキーは、イスラエルに軍事支援を求めていたこともあり(テレ東BIZ 2022年3月21日「ゼレンスキー大統領がイスラエルに軍事支援を要請」)、もともとイスラエルによる西岸やガザでの人権侵害に無関心であった。

その典型的な例が、南アフリカが ICJ・国際司法裁判所にイスラエルの戦争犯罪を提訴したことであろう。ネルソン・マンデラは、かつて「私たちの自由は、パレスチナ人の自由が実現されなければ不完全なものだ」と述べたとされるが、自らがアパルトヘイトに苦しめられた歴史があるからこその行動であろう。

この南アフリカの提訴には、中東は言うに及ばず、広範なグローバルサウスが支持を表明している。もちろん、インドなどイスラエル支持を表明する国家も存在しているが、ガザでのイスラエルのジェノサイドが明らかになるにつれて、パレスチナへの支持が大きく広まっているとみるべきである。

また、ボリビアがイスラエルとの国交断絶を決め、チリとコロンビアは、自国の大使を召還するという方法で強く抗議した(※1)。さらに、ブラジル大統領がイスラエルのガザ攻撃をホロコーストと明言(※2)し、大使を召還するなど、抗議の声が広まっている。

※1 reuters 2023年11月1日「ボリビア、イスラエルと断交 コロンビアとチリも大使呼び戻す

※2 時事通信 2024年2月20日「ホロコースト発言、外交問題に=ブラジル、駐イスラエル大使召還

また、サウジアラビアやエジプトなど、イスラエルの友好国の政府でも、イスラエル批判の声が上がっており、これまでのイスラエルの外交上の成果が揺らいでいる。


3 世界各国の市民の動き

一方、政府ではない市民の側は、イスラエル批判の動きが世界的に広まっている。日本ではあまり報道されないが、アラブ諸国は言うに及ばず、英国、ドイツ、フランス、米国などで大規模なイスラエルによるジェノサイドを批判するデモが発生している(※)

※ 日本経済新聞 2023年11月12日「パレスチナに連帯、欧州各地で大規模デモ 英国は30万人」、朝日新聞 2023年11月12日「パレスチナ連帯デモ、ロンドンに30万人 「無力だけど、数の力で」」、時事通信2023年11月12日「欧州主要都市で停戦要求デモ=パレスチナに連帯、英は30万人規模」、ロイター22023年10月14日「ガザ攻撃への抗議広がる 世界各地でパレスチナ支持のデモ」など

フランスとドイツは、政府がパレスチナに連帯したりジェノサイドを批判するデモを禁止しているにもかかわらず、多くの人々がデモに参加している。英国でも世論がパレスチナ支持に変わりつつある(※)

※ THE TIMES OF ISRAEL 2024年01月24日「Poll finds ‘frightening’ rates of antisemitism among young British public」によれば、64 歳以上の英国人の4分の1が、イスラエルはナチがユダヤ人を扱ったようにパレスチナ人を扱っていると考えており、18 歳から 24 歳ではその割合が3分の1以上になるとされている。そして、英国の世論がこのように変化しているのは、10月7日以降のイスラエルによるガザでのジェノサイドによることは明らかであろう。

日本においても、諸外国の大規模デモに比べれば小規模ではあるが、街頭でパレスチナへ連帯しジェノサイドを批判するデモが展開されている。この他、一人あるいは数人でパレスチナへの連帯、即時停戦などを求めるスタンディングも行われている。

また、在日イスラエル大使館が、ガザへの攻撃を正当化するポストをアップすることがあるが、日本語のリプは、ほぼ9割以上がジェノサイドを批判するものとなっている。


4 ユダヤ人団体によるパレスチナ連帯の動き

シオニズムに対する批判は、ユダヤ人の間にも広まっている。米国のユダヤ人組織も2つに割れ、イスラエルの動きを批判する動きが出ている(※)。これは、イスラエル国内でも同様で、一部ではあるがユダヤ人がイスラエルのガザでのジェノサイドを批判する動きがある。イスラエルの報道紙ハアレツは、イスラエル国内におけるジェノサイド批判のユダヤ人の姿を繰り返し報道している。

※ 現在、ディアスポラ(離散)ユダヤ人の最も多く住んでいるのは米国である。イスラエルと米国が、ユダヤ人の2大居住国となっている。

米国内では、すでにユダヤ人の多くがシオニズムに批判的となっていた(※)が、ガザにおけるジェノサイドの動きがさらにその傾向を決定的なものとした。

※ シルヴァン・シベル「イスラエル VS. ユダヤ人」(2022年 明石書店)

イスラエルのユダヤ人の間でも、シオニストが非シオニストを激しく批判する例も見られる。このポストの動画は、イスラエルによるガザへの攻撃を支持する女性が、パレスチナへの連帯を表明するユダヤ人に対して激しく抗議している例である。これを観れば、シオニストによるパレスチナ侵略を批判することが、反ユダヤ主義などとは無縁であることが分かるだろう。

最近では、穏健派のシオニストの間でさえ、ガザへの攻撃を批判する動きがみられる。これはユダヤ対パレスチナの構図ではない。侵略を支持する者対侵略を批判する者という構図なのである。

パレスチナへの非人道的な攻撃を批判するかどうかは、ユダヤ人かアラブ人かが問題となるのではない。ユダヤ人であってもアラブ人であってもその他の者であっても、ガザで行われていることをどう捉えるかという人間性の問題なのである。


5 イスラエルを支持する企業へのボイコットの動き

また、イスラエル支持を明確にした企業へのボイコットの動きも広まっており、マクドナルド、スターバック、ケンタッキー・フライド・チキンなど多くの米国籍企業がボイコットにより打撃を受けている(※)

※ ロイター2024年1月31日「米スタバ、10─12月期売上高が予想下回る 年間見通し下方修正」によると、予想されたほどではないにせよ、スターバックスも一定の影響を受けている。

また、マクドナルドは、イスラエルによるジェノサイドを支持していないとの声明を出したが、ガザの攻撃に参加するイスラエル軍兵士に対して無償で食事を供給しているとの情報があり、同社に対するボイコットは続いている。

Kabutan 2024年2月6日「マクドナルドが決算受け下落 中東紛争の影響で既存店売上高が予想下回る=米国株個別」によると、「マクドナルド<MCD>が下落。取引開始前に10-12月期決算(第4四半期)を発表し、既存店売上高が予想を下回った。米国が予想を下回ったほか、中東紛争の影響もあり海外が不調だった。中東地域は売上の約10%を占める」とされている。ボイコットの影響が指摘されている。

日本では、社会的に問題を起こした企業へのボイコットは、企業へ打撃を与えるほどの規模にならないことが多いが、伊藤忠が強い市民の抗議を受けて、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズと結んでいる協力関係の覚書を終了させると表明する(※)などの影響が出ている。

※ 時事通信 2024年2月5日「伊藤忠、イスラエル軍事企業とのMOU終了 防衛装備品の輸入」など。

今後、SNS などでの批判の動向によっては、イスラエル支持を表明している企業等が打撃を受けることもあり得るだろう。


【関連コンテンツ】

握りこぶし

10月7日事件とは何だったのか

2023年10月7日のハマスによる攻撃は、イスラエルによるパレスチナへの植民地支配と切り離して考えることはできせん。また、その後、当初報じられたイメージとは大きく異なることが明らかになっています。最新の情報に基づいて解説します。

ガザの封鎖壁

パレスチナ問題をどのように解決するべきか

ネタニヤフ首相は、パレスチナ人をパレスチナから追い出してシオニスト国家を樹立しようとしています。しかし、これを放置することは人類の未来にとって大きなリスクとなります。その解決の方法、2国家解決の道について解説します。

世界平和のイメージ

ウクライナの戦闘支援ではなく戦争終結を!

ウクライナでの戦線が膠着したまま消耗戦が続いています。今、国際社会に求められるのは、ウクライナへの戦闘支援ではなく、和平の道を模索することです。その解決の道を探ります。

箜篌(古代東アジアの弦楽器)を扱う女性

ミャンマーと企業のリスク管理

日本企業は、ミャンマーと経済的なつながりを有するケースもあります。しかし、軍事政権による人権弾圧を非難しないことは、企業の存続に対するリスクとなっています。企業のミャンマーの軍事政権との向き合い方を考えます。

炎上して頭を抱える女性

人権感覚の欠如は企業のリスクとなる

インターネットが大きな影響力を持つ現代社会において、人権問題による炎上が企業のリスクとして無視できないものとなっています。企業として、また社員に対しても人権感覚を磨くことが重要であることを解説しています。




プライバシーポリシー 利用規約