化学物質のリスクアセスメント手法の一つであるECETOCのTRAの具体的な使用方法を分かりやすく説明しています。
このマニュアルに従って実施することで、容易に企業内でECETOCのTRAが使用できるようになります。
内容の無断流用はお断りします。
- 1 ECETOCのTRAを入手しよう
- (1)ECETOCのTRAとは
- (2)厚生労働省はECETOCのTRAをどのように位置づけているか
- (3)ECETOCのTRAのダウンロード
- 2 当準備作業と必要なデータの収集
- (1)リスクアセスメントを行う想定作業
- (2)リスクアセスメントを行うために必要な情報を調べよう
- 3 データの入力とアセスメントの実施
- (1)データを入力する
- (2)リスクアセスメントの実施
- 【別稿】ECETOC TRAのAPFの入力
- 4 最後に
- (1)ECETOC TRAの精度
- (2)精度を理解した上で活用する必要
1 ECETOCのTRAを入手しよう
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(1)ECETOCのTRAとは
ア ECETOCのTRAの特徴
※ イメージ図(©photoAC)
ECETOCのTRA(Targeted Risk Assessment (TRA))とは、ECETOC(欧州化学物質生態毒性および毒性センター)が開発した、パソコンで実施できる簡易なリスクアセスメントツールです。無償で誰でも使用することができます(要登録)。
実際に化学物質を用いた仕事を始める前に、いくつかの指標を用いてリスクアセスメントを実施することができるため、低コストでリスクを予測することが可能となります。
イ ECETOCとは
ECETOCは民間の企業が会員となって1978年に創設された非営利団体ですが、公的な機関として位置づけられており、様々な化学物質に関する情報を発信しています。
ウ 国内での普及状況と入力項目APFについて
日本国内では、日本化学工業協会もECETOCのTRAを基にした日本語で使用できるツールを、ユーザー登録(有償)した方に対して公開しています。こちらを利用することも考えてよいと思います。なお、日本化学工業協会のサイトでは、ECETOCのTRAを用いる上で参考となる情報を一般向けに公開しています。
しかし、その一方で必要な情報が一般の事業者にとって入手できにくい状況は存在してます。例えば、後述するようにECETOCのTRAでは、保護手袋の指定防護係数(APF:assigned protection factor)を入力するようになっています。ところが、ここで入力すべきAPFとして、何をどのように入力すればよいかを解説した文献や資料がほとんど見当たらないのです。
事業場外の専門家や保護具メーカーの職員でさえ、TRAで入力すべき“保護具のAPF”について、どのように入力すればよいかが分かっていない例も少なくないようです。TRAがこれまでそれほど一般的に使用されてこなかった我が国の現状では、ある意味でやむをえないのかもしれません。
とは言え、そのことのために、TRAの使用を、あきらめてしまう事業者が少なからずいるようでは、リスクアセスメントの普及のためにもやはり問題ではあります。
(2)厚生労働省はECETOCのTRAをどのように位置づけているか
ECETOCのTRAは、厚生労働省が平成27年9月18日基発0918第3号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」に紹介したことから、日本国内でも急速に普及しました(※)。
※ なお、厚生労働省の通達が発出された直後に、ECETOCがWEBサイトのデザインを大幅に改修し、その後も、数度の改修を行ったためサイトの画面は当初の通達のものとはまったく異なったものとなっていました。
厚生労働省のWEBサイトに、一般財団法人化学物質評価研究機構が作成した「ECETOC TRAを用いる(推定ばく露濃度の算出を含む)労働者リスクアセスメントマニュアル」(2016年6月)が掲載されています。
(3)ECETOCのTRAのダウンロード
ア ECETOCのTRAのダウンロードページ
ダウンロードするために、まずTRAのサイトを参照してください。
このページは先述した厚労省の通達に出ているものと同じです。なお、厚生労働省音通達に紹介された当時、このページはSSL化(https)されていませんでしたがが、現在はSSL化されています。
また、このページは【ECETOC TRA】でGoogleかYAHOOで検索すると、右図のように、かなり上位(この画面では4位)にヒットします。最上位にならないのは、Googleが日本語のサイトを優先しているためだと思います。
ちなみにそのすぐ上(第3位)の「ECETOCのTRAを用いたリスクアセスメントマニュ...」とあるページは、今、ご覧になっているこのページです。
イ ECETOCのTRAをダウンロードする
さて、このページのグローバルナビ(グレーの帯の部分)の「TOOLS」のところにマウスカーソルを合わせて下さい。プルダウンメニューが表示されます。
ここで「TARGETED RISK ASSESSMENT(TRA)」のところをクリックして下さい。ここにカーソルを乗せるとサブメニューの「EVOLUTION OF THE TRA」が表示されますが、気にしないで下さい。なお、もしプルダウンメニューが表示されなければ「TOOLS」を直接クリックし、遷移した画面の左側にある「Targeted Risk Assessment(TRA)」をクリックしてください。
すると画面が遷移して右図のような画面に切替わります。
この中の「Target RISK Assessment(TRA)」の「DOWNLOAD THE TOOL」をクリックしてください。すると次のような画面に切り替わります。
右図のような表示が現れます。緑色の2つのボタンがありますね。
右側の「Integrated tool」の「Download」のボタンをクリックしてください。
あなたの情報を入力する画面が出てきます。必要事項を入力して「SUBMIT」と記されているボタン(画面では下部に隠れている)を押してください。
これで、あなたの登録したメールアドレスに、圧縮された TRA が送付されてきます(※)。適当な解凍ソフトで解凍してください。あなたのパソコンが市販のものであれば、(たぶん)解凍ソフトはプリインストールされていますから、ダウンロードしたファイルをクリックするだけで解凍されます。
※ もし、送られてこないようなら迷惑メールフォルダを確認してください。
解凍して、次のようなEXCELファイル構成になっていればOKです。更新日時が2014年になっていますが、2023年5月29日にECETOCのサイトからダウンロードした最新版です。
これでダウンロードは完了です。