ECETOCのTRAについては、保護手袋の使用の有無とAPFの値を入力するようになっています。
プルダウンメニューから選択入力するようになっていますが、何を選択するべきかが厚労省のマニュアルにも書かれていません。
本稿では、この入力方法について解説します。
1 ECETOC TRAにおける保護手袋の入力
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ECETOCのTRAについては、保護手袋の使用とAPFについて入力する項目があり、「Dermal PPE/Gloves(Note:Gloves APF 20 for industrial onry!)」に対して、以下の4つのプルダウンメニューから選択するようになっている。なお、Type of Setting(作業形態)の入力項目でProfessionalを選択した場合にはAPF20は選べないようになっている。
選択項目 | 仮訳 | |
---|---|---|
① | NO | 使用せず |
② | Gloves APF 5 | 保護手袋 指定防護係数 5 |
③ | Gloves APF 10 | 保護手袋 指定防護係数 10 |
④ | Gloves APF 20 | 保護手袋 指定防護係数 20 |
ところが、本稿の冒頭にも述べたが、保護手袋の指定防護係数(APF)は、日本ではあまり一般的な概念ではなく、公的な機関が保護手袋のAPFを公開していない。また、保護具メーカーも、保護手袋ごとに防護係数をカタログなどに記載しているわけではないので、ここに何を入力すればよいかが分からないという声が多かった。
2 ECETOC TRAにおけるAPF(指定防護係数)の選択方法
これについてはECETOCがTR107「Addendum to ECETOC Targeted Risk Assessment Report No.93」のp78に次の表を掲載している。この右側の欄「Exposure Reduction Factor」がAPFに当たるものである。
Dermal Protection Characteristics Indicated
Efficiency %Exposure
Reduction
Factora. Any glove / gauntlet without permeation data and without employee training 1 b. Gloves with available permeation data indicating that the material of construction offers good protection for the substance 80 5 c. Chemically resistant gloves(i.e. as #b above)with ’ basic’ employee training 90 10 d. Level ‘c’ in combination with specific activity training(e.g. procedures for glove removal and disposal) for tasks where dermal exposure can be expected to occur 95 20 ※ ECETOC「Addendum to ECETOC Targeted Risk Assessment Report No.93」(2009年)
次表は、これを仮に訳したものである。なお、gauntlet(ガントレット)を籠手と訳したが、glove(手袋)が手首まで覆うのに対し、gauntletは肘近くまで覆うもので、日本語としては双方を含めて「手袋」と訳しても意味は通じるかもしれない。
経皮ばく露防護の特性 防護率 % ばく露
防護係数
(APF)a. 化学物質の浸透に関する情報のない通常の手袋又は籠手を、労働者に対する教育なしに使用させている場合 1 b. 取扱う化学物質が防護できる材質で作られ、耐浸透性能があり使用が可能であると表示されている手袋を使用させる場合 80 5 c. 化学防護手袋(b以上の性能)を基礎的な教育を行った労働者に使用させる場合 90 10 d. cに示す化学防護手袋を、経皮ばく露防止のための特別な教育(手袋の交換や廃棄など)を行った労働者に使用させる場合 95 20 ※ ECETOC「Addendum to ECETOC Targeted Risk Assessment Report No.93」(2009年)を筆者において仮訳
すなわち、保護手袋という“物”によってのみ決めるのではなく、労働者の教育という概念を含めて決めるわけである。
また、確かに、保護手袋の材質と用いる化学物質によって、防護係数は変わるだろうから、呼吸用保護マスクのように、形状によって単純には決められない。
これを、分かりやすく言えば次のようになろうか。
- ① 保護手袋としてスーパーマーケットに売っているような家庭用の手袋をしている場合には「No(手袋を使用せず)」
- ② その化学物質に耐性があり使用可能と表示されている保護手袋を用いている場合は「APF=5」
- ③ 化学防護手袋を基礎的な教育を行った労働者に使用させている場合には「APF=10」
- ④ 化学防護手袋を特別な教育を行った労働者に扱わせる場合には「APF=20」(Type of Setting(作業形態)の入力項目でindustrialを選択した場合のみ)
3 謝辞
本稿の執筆に当たり、十文字学園女子大学教授(現名誉教授)の田中茂先生にご質問をしたところ、貴重なお時間を割いて調査をして頂いて御助言を頂いた。心より感謝する次第である。