労働衛生コンサルタント試験は、労働衛生管理の能力を証明するための最もレベルの高い国家試験です。ここ、数年、受験者数は急増している状態です。
とはいえ、受験者数はそれほど多くはなく、他のメジャーな資格試験ほどには情報があふれているわけでもありません。
労働衛生の分野でのキャリアアップを検討しておられる方のために、労働衛生コンサルタントとは何か、その難易度はどの程度か、具体的な内容はどのようなものかなどを、私自身の受験体験を交えて紹介します。
内容の無断流用はお断りします。
3 私からのアドバイス(受験勉強法等)について
(1)使用するテキスト類
労働安全衛生コンサルタント試験を受けようとするとき、まず困るのが適当な参考書がないということである。ただ、出版社の立場に立ってみると、受験者が少ないのであまり売れることは期待できず、一方で、労働安全衛生の分野は制度が頻繁に変わるので頻繁な改訂を余儀なくされる。これでは、商業ベースにのるようなテキストを発行することは困難だろう。つまり、今後も専用の受験テキストが発行されることはないといってよい。
過去問は、日本労働安全衛生コンサルタント会から、2年分がまとまった冊子になって発刊されている。私は、受験する年の5月頃に、3年前の版(24・25 年版)を購入した。当時は27 年のものが出ていなかったので、出たら 26・27 年版を購入しようと思ったからである。しかし、26・27 年版は、結局、購入しなかった。そのときは、過去問を中心に勉強しても意味がないのではないかと思ったからである。
テキストとして使用したのは衛生管理者のテキストが2種類である。その他には、厚労省の労働衛生分野のガイドラインや指針、主な通達類を厚生労働省のWEB サイトから入手した。これはあまり読むひまがなかったが、基本的なテキストの選択としては誤ってはいなかったと思う。
(2)受験時の注意事項
ア 受付について
私は、受験の申し込みは締め切りギリギリになって郵送で行った。とくに深い意味はないが、忙しさにまぎれたのである。ただ、受験番号は意外に若い番号だった。口述試験も初日の最初である。これらは必ずしも受け付け順ということでもないようだ。
筆記試験の試験当日は、とくに受付のようなものはなく、試験開始の 20 分前までに指定された試験場へ入ればよい。ただ、試験会場は、建物の中がやや分かりにくいので早めに着くようにした方がよいと思う。場所が分からなくて迷っている受験生がかなりいた。
口述試験は会場についたときに受付をすませる必要がある。こちらは分かりやすい場所である。
イ 退出について
筆記試験は、早めに試験会場を出たとしてもすることもないので、私は、全ての科目で最後まで試験場にいたが、択一の場合は最後までいる受験生の方が少数派だった。
私の隣に座っていた受験生は、択一試験の2科目では、試験場を出ても良いと言われたとたんに会場から出ていた。あきらめたのかと思ったら、次の受験科目のときには会場に戻ってきた。記述式ではさすがにしばらくは残っていたが、かなり早めに会場を出ていた。
ただ、択一はともかくとして、記述式くらいは最後まで頑張った方が良いと思う。たんなる知識を問うだけではなく、考えて解くべき問題も出ているからである。
なお、WEB サイトなどで、口述試験の再現というものを見かけることがあるので、口述試験を始めて受ける場合は参考にしたら良いと思う。ただ、設問の趣旨を取り違えている可能性もあるので、過信は禁物である。なお、東京会場より大阪会場の方が試験官がやさしいという噂がたつことがあり、わざわざ大阪で受験する受験生がいると聞いたことがあるが意味はない。たんなる都市伝説にすぎない。
(3)科目免除を受けるべきか
筆記試験の試験会場は、安全コンサルタントは試験区分ごとに部屋が分かれていたようだが、労働衛生コンサルタントは2つの試験区分で一つの部屋になっていた。試験が開始された時に受けた印象だが、やたらに空席が目立つのである。これまでいろんな国家試験を受けたことがあるが、ここまで空席の多い試験というのは初めてである。なぜだろうと思っていたのだが、その理由は午後の「健康管理」の試験のときになって分かった。
「健康管理」の試験のときは、試験会場がほぼ満席になったのである。要するに、科目免除の受験者が多いということだろう。私自身は科目免除の要件に合致していないと思っていたこともあり(※)、すべての科目を受けたのだが、全科目を受けた受験者の方がかなりの少数派だったようだ。
※ 翌年、安全コンサルタント試験を受けるときに、厚労省の担当者から法令は免除要件に合致していると教えられた。
私は社労士試験も受験しているが、このときは科目免除が受けられるにも拘わらず、全科目を受験した。社労士試験では、私と同様に、免除を受けることができても全科目を受けるという受験者が多かったように思う。
というのは、免除を受けられるのは、ほとんどの場合、得意科目だからである。つまり、他の不得意科目だけで受けると、その科目だけでは合格基準に達しないような場合でも、得意科目を受けておけば、全体の平均点では合格基準に達することがあるので、免除を受けない方が有利なのである。事実、社労士試験では、免除を受ける受験者は部屋が別になっていたが、かなり狭い部屋を使用していたように記憶している。
労働衛生コンサルタント試験で、制度的に科目免除を受けることができる者の範囲が広いことの理由は明確ではない。おそらく、試験の制度が始まったときに、実務経験が試験の成績よりも重視されていたのだろう。また、あえて免除を受けようとする受験者が多いのは、試験範囲が広いので受験勉強が大変だからではないかと思う。
ただ、私個人の考えとしては、どうしても合格したいと思うのであれば、免除を受けることはかえって不利になる面もあると思う。最大の理由は、免除を受けない方が、科目全体の平均点を上げるには有利だからである。
詳細は「安全衛生コンサルタント試験の科目免除は有利か」をご覧になって頂きたいが、労働衛生一般は労働衛生法令よりも得点を取りやすいので、とりわけ労働衛生一般の免除を受けることは慎重に考えた方がよい。
私の場合について言えば、試験協会が試験後に公表する5肢択一の2科目の正答を見たところ、記述式で足切にならなければ合格できるだけの点数が取れていた。5肢択一の科目は衛生管理者のテキストを読み込んでおけば高得点をとることが可能である。そのため、5肢択一の科目を受けておく方が、容易に合格できると思う。
そもそも免除を受けなければ合格できないようでは、コンサルタントとしてやっていけないだろう。コンサルタントとして仕事をする気があるのであれば、資格を取るに当たって科目免除を受けるようなことはしない方がよいのではないかという気がする。