溶接ヒューム関連、安衛法令改正




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2020年に安衛令が改正され、溶接ヒュームと塩基性マンガンが特定化学物質に追加された。これまで、特定化学物質は単体又は化合物の化学物質(及びその混合物)であり、ヒュームのような「ある『状態』のもの」が指定されたことはなかった。

また、条文や通達を見ても、分かりにくさがあることは否めない。こいくつかの疑問点について厚労省の担当者から回答を得たので、それを含めて緊急に解説をアップする。

なお、本稿の文責はあくまでも柳川にあり、厚労省の責任ではないことをお断りしておく。



2020年の溶接ヒューム等に関わる安衛令、特化則等の改正について(2/4)

2 溶接ヒューム等の特定化学物質(第二類物質)への追加

(1)趣旨

ア 溶接ヒューム

溶接ヒュームのばく露による有害性については、溶接ヒュームのばく露による肺がんのリスクが上昇していることが多数報告され、ばく露量―作用関係も大規模疫学研究等で確認された。このため、溶接 ヒュームとマンガン及びその化合物の毒性、健康影響等は異なる 可能性が高いことから、特定化学物質(第ニ類物質)として「溶接ヒューム」が追加されたものである。

イ 塩基性酸化マンガン

これまでもマンガン及びその化合物は特定第二類物質として規制されていたが、塩基性酸化マンガンは除かれていた。

しかし、塩基性酸化マンガンを含む溶接ヒューム及び溶解フェロマンガンヒュームのばく露による神経機能障害が多数報告され、その多くに、ばく露量-作用関係が認められた。さらに、塩基性酸化マンガンに関する特殊健康診断において、一定の有所見者(2.4%)が認められたのである。これらを踏まえて、塩基性酸化マンガンが特定化学物質(第ニ類物質)に追加されたものである。

(2)改正内容

溶接ヒューム又は塩基性マンガンを製造し又は取り扱う場合には以下の対策が必要となる。

  • 作業主任者の選任
  • 作業環境測定(溶接ヒュームについては、安衛令第21条第7号カッコ書きにより義務付けられない。)
  • 特殊健康診断の実施(作業場所は屋内又は屋外)
    • 雇入れ時等及び6月以内ごとに定期に特化則別表第3の健診
    • 同別表第3の健診で異常の疑いがあり、医師が必要と認めるときは、同別表第4の健診
    • 結果の5年保存

※ 「常時性」は、作業頻度のみならず、個々の作業内容や取扱量等を踏まえて個別に判断する必要があることとされている。疑問があれば監督署に相談するべきである。

※ 金属アーク溶接等作業については、従来より、じん肺法に基づくじん肺健康診断が義務付けられていることに留意するべきである。なお、この場合、「常時粉じん作業に従事する」とは、労働者が業 務の常態として粉じん作業に従事することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするものではないとされている。

(3)疑問点に対する厚労省の回答

安衛令の「溶接ヒューム」という用語には、どこにも定義が示されていない。そのため、安衛令の「溶接ヒューム」は、アークを用いる溶接、切断等のみなのか、ガスを用いる溶接、切断等や、レーザ切断によるヒュームを含むのかどうかが、法令の条文上は必ずしも明確ではない。

※ 後述するが、特化則の改正後の第38条の21には「金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業」という文言があり、これは通達(令和2年4月22日基発0422第4号)によって、ガス溶接やレーザー溶断などは含まれないと明記されている。

そこで、厚労省の担当者に尋ねたところ、安衛令の「溶接ヒューム」は、アークを用いる溶接、切断等によって発生したものであり、ガス溶接・ガス切断によるもの等は含まないとの回答を得た。従って、条文上は、やや疑問はあるものの、安衛令において溶接ヒュームという場合、ガス溶接やレーザ切断によって発生するヒュームは含まれないとしてよい。現実には、ガス溶接・ガス切断ではそれほど溶接ヒュームは発生しないだろうから、実務上もとくに問題はないだろう。

また、気中に浮遊していない床等に堆積したものも、法令上の「溶接ヒューム」に当たり、これらを清掃する作業は「取り扱う」に該当するとのことであった。





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