= 労働安全コンサルタント試験はどのような人が受けているのか =

安全コンサルタント試験受験状況(2021年)




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統計のイメージ

※ イメージ図(©photoAC)

労働安全コンサルタント試験は、労働安全管理の能力を証明するための最もレベルの高い国家試験で、近年、受験者数は増加傾向にあります。

受験者は、職場の安全衛生の担当者のみならず、医師、技術士など他の分野の専門家も数多く受験しています。

本サイトは、この試験を受験するほとんどの方のご利用を頂いています。そこで、択一試験の解答した状況と、受験した方の属性についてのアンケート調査をWEB上で行いました。

その結果を公開します。内容の無断流用はお断りします。



1 調査の方法と回答数

執筆日時:

筆記試験の結果を追記:


(1)調査の方法

説明する女性

※ イメージ図(©photoAC)

当サイトは、過去問の解説を中心に労働安全衛生コンサルタント試験の受験支援を行っている。そして、Googleアナリティクスの分析結果を見ると、労働安全衛生コンサルタント試験この試験を受験しようとしている方のほとんどすべての方にご利用いただいているといってよい状況になっている。

過去問の解説のうち択一試験については、私の主観に基づいて「難易度」を付けていたが、あくまでも私の感覚に頼っており、必ずしも客観性があるわけではなかった。そこで、このサイトを閲覧頂いている方に、WEB上でお願いして、2021年(令和3年)から実際の試験で解答した内容のアンケート調査を行うことにしたのである。

そして、解答を入力して頂いた方には会員サイトのIDコードとパスワードをお知らせし、それまで一般に公開していた試験直後の「正答予想」を本年から会員サイトで行うことにしたのである。


(2)回答数

実際に解答して頂いた方の数は、次のようになった。

表:解答者数
解答者数
労働衛生 労働衛生法令 143
労働衛生一般 51
労働安全 産業安全法令 269
産業安全一般 252

2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の筆記試験の受験者は、安全コンサルタントが1,290人、衛生コンサルタントが524人である。

実際には、労働安全衛生コンサルタントは、各科目の免除を受ける受験者がきわめて多いので、それぞれの科目については、全体の受験者の半数程度しか受験しないのが実態である。

そのように考えると、全受験者の半数近い方が解答を寄せて下さったと考えてよいのではないかと思う。解答数だけを考えれば、統計的には十分に全体を代表できる結果が出たと考えられる。

今回のアンケートでは、受験者の属性についてもいくつかの質問をさせて頂いている。氏名(ハンドルネーム可)と受験区分だけは必須入力としたが、他の項目は任意入力としている。実際には、ほとんどすべての方から御回答を頂いた。


2 択一式試験の解答結果


(1)難易度の区分と正答率の分布

ア 難易度区分

択一試験の個々の問題の解答状況はグラフにして各問題の解説の冒頭に掲げている。また、それとは別に「難易度」を示している。難易度は、正答率によって次のように分類してある。

表:難易度と正答率
正答率 難易度
80%以上
70%以上 80%未満
60%以上 70%未満
50%以上 60%未満
      50%未満

イ 難易度ごとの問題数分布

その結果、各科目の難易度ごとの問題数は、次のようになった。例えば、産業安全一般だと、80%以上の方が正答した難易度1の問題が8問あり、50%未満の方しか正答できなかった難易度5の問題が5問あったわけである。

表:難易度ごとの問題数
難易度
労働衛生 労働衛生法令
労働衛生一般
労働安全 産業安全法令
産業安全一般

ただ、受験の結果を入力して頂いている方は、正答予測が知りたいという方が多いであろうから、本気で受験している受験者や合格の可能性がある受験者に集中している可能性はある。当然のことではあるが、成績は良い方向へバイアスがかかっていると考えるべきであろう。

とくに、労働衛生一般、産業安全一般については、70%以上正答された問題が半数以上ある。これは、個々の問題をみてみると実感できるが、この科目が易しいということではない。解答を入力して頂いた受験者が優秀だということだと思える。

なお、現実の2021年度の筆記試験の結果は、合格率が40.1%と、2015年の43.4%以来、6年ぶりに40%台の好成績となった(※)

※ 筆記試験の結果の詳細は、当サイトの「労働安全コンサルタント試験受験の勧め(2/7)」を参照されたい。


(2)労働衛生と産業安全の難易度の差

ここで、60%以上正答すれば合格という観点から考えると、正答率が60%以上の難易度が1~3の問題数は衛生が29問、安全が28問であるから、労働衛生と産業安全で、とくにどちらが難しいというわけではないかもしれない。

また、一般と法令を合わせて、27問を正答できれば合格できるのであるから、労働衛生では難易度1と2の問題を全てと難易度3の問題を8問正答できれば合格である。また、産業安全では、難易度1と2の問題を全てと難易度3の問題を6問正答できれば合格である。こう考えても労働衛生と産業安全では差がないように見える。


3 受験者の属性

(1)産業安全法令

ア 試験区分

受験者・試験区分

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試験区分は、ほぼ予想通りではあったが、土木が56.5%、建築が23.0%、機械が10.0%、電気5.6%、化学4.8%であった。これは、現実の受験者の比率を反映しているのであろう。

イ 合格までの学習時間

受験者・学習時間

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合格までの学習時間については265名とほとんどの方に御回答を頂いている。100時間以内が42.6%で、200時間以内と合わせて70.2%となる。これは労働衛生法令とほぼ同じであった。勤務や家庭内での責任のある方が多いであろう多くの受験者にとって、試験勉強の時間は200時間以内しか確保できないということのようだ。

ただ、200時間超の方が全体で21.5%おられ、800時間を超えると回答した方も1.9%おられる。やはり、多くの学習時間を費やす必要のある試験ということでもあろう。

ウ 受験者の年齢

受験者・年齢

図をクリックすると拡大します

年齢は261名の方に御回答を頂いている。やはり試験の性格からか20代の方は1.9%と少なかった。30代が9.6%、40代が28.4%と働き盛りの方が多いようだ。

意外なことに50代の方が39.5%とかなりの割合を占めている。退職準備という意味合いがあるのだろうか。

一方、60代が19.5%、70代以上の方が1.1%と高齢になっても、労働衛生の分野で働きたいという希望を持たれる方も多いようである。

エ 受験者のジェンダー(性別)

受験者・ジェンダー(性別)

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ジェンダー(性別)は262名の方に御回答を頂いている。男性が94.3%と圧倒的な多数となった。労働安全の分野には、まだまだ女性の進出は進んでいないようだ。

女性は3.8%、その他の方は1.9%(※)となった。

※ もちろん、このことはSOGI(LGBTQ)の方が1.9%であることを意味しない。そもそも本項では性的指向を訪ねてはいないし、性的指向が多数派と異なる方も多くは男性又は女性である。さらに言えば、トランスジェンダーの方も多くは男性(FtM)又は女性(MtF)である。その他に当たる方はクエスチョニングの方だが、カミングアウトしていない場合も多く、アンケートとはいえ戸籍上の性別で解答された方もいるだろう。

オ 労働安全衛生業務の経験

受験者・労働安全衛生業務の経験

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労働安全衛生業務の経験は256名の方に御回答を頂いている。回答は、「なし」から「20年以上」まで、ばらついている。20年以上が18.8%と、長期の経験者が多いということが分かる。

原則として受験のためには実務経験が必要なのだが、実務経験が必要でない資格をお持ちの方も多く受験しておられるようだ。

カ 所属事業場の業種

受験者・所属事業場の業種

図をクリックすると拡大します

所属事業場の業種は257名の方に御回答を頂いている。なお、「コンサルティング(社労士事務所等)」までは通常の選択肢で、「公務員」以下は「その他」の項目の自由回答に記載された内容である。とくに修正せずにそのまま記載している。

建設業が最も多く72.0%を占めた。次いで多いのが製造業の16.3%で、この2つで88.3%と9割近くを占める。その他は、コンサルティング(社会保険労務士等)の3.9%が目立つ程度で、「運輸交通/貨物取扱」が0.4%、「商業」が1.4%と、他の業種が意外なほどに少なかった。

キ 受験者の勤務内容

受験者・勤務内容

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勤務内容は、254名の方から御回答を頂いた。こちらは、「営業所専任技術者」以下が「その他」の項目の自由回答である。

「専門・技術」が39.8%で、「安全衛生」の24.4%、「管理部門」の23.2%がこれに次いでいる。「生産部門・生産技術」の方は9.1%と意外に少なかった。

労働安全コンサルタントの多くが、たんに「安全衛生」の分野の専門家の資格にとどまらず、様々な分野の専門知識を有しておられる方の資格であるということが分かる。わが国の企業の安全を専門家として支えているのは、幅広い分野で活躍しておられる方だということが読み取れる。


(2)産業安全一般

ア 試験区分

受験者・試験区分

図をクリックすると拡大します

労働安全コンサルタント試験は、産業安全法令と産業安全一般で、回答者がほぼ重なっている。従って、産業安全一般も産業安全法令と大きくは変わらないので、以下、その違いに着目して説明する。

試験区分は、それほど法令と異なっていない。わずかに建築が少ない程度であろうか。

イ 合格までの学習時間

受験者・学習時間

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合格までの学習時間は248名とほぼ全員の方に御回答を頂いている。産業安全法令とそれほど変わらないが、わずかではあるが全体に短いという程度である。

ウ 受験者の年齢

受験者・年齢

図をクリックすると拡大します

年齢は243名の方に御回答を頂いている。産業安全法令に比して、やや高齢の方が多いだろうか。

エ 受験者のジェンダー(性別)

受験者・ジェンダー(性別)

図をクリックすると拡大します

ジェンダー(性別)は240名の方に御回答を頂いている。女性の比率が3.3%とわずかに少なくなり、その他の方も0.4%と少なくなっている。

オ 労働安全衛生業務の経験

受験者・労働安全衛生業務の経験

図をクリックすると拡大します

労働安全衛生業務の経験は240名の方に御回答を頂いている。ほぼ、産業安全法令と傾向は変わらない。

カ 所属事業場の業種

受験者・所属事業場の業種

図をクリックすると拡大します

所属事業場の業種は242名の方に御回答を頂いている。ほぼ、産業安全法令と傾向は変わらない。

キ 受験者の勤務内容

受験者・勤務内容

図をクリックすると拡大します

勤務内容は、238名の方から御回答を頂いた。ほぼ、産業安全法令と傾向は変わらない。


4 最後に

(1)受験者の保有資格

アンケートでは保有資格についても統計を取っているが、Googleフォームの関係でグラフ化することができなかった。いずれ手動で行うのでしばらく待って欲しい。

概括すると、産業安全法令では、技術士が最も多く82名(34.0%)で、意外なことに衛生管理者がそれに次いで54名(22.4%)であった。

技術士は、記述試験が免除になることもあり、安全コンサルタント試験の受験生に技術士が多いのである。衛生管理者の資格者が多いのは、安全衛生の担当者が安全コンサルタント試験にも挑戦するということのようだ。労働衛生コンサルタントも4名(1.7%)おられる。

その他は、建築士が34名(14.1%)、作業環境測定士9名(3.7%)が目立つ程度である。社会保険労務士は1名(1.7%)であり、医師、歯科医師及び薬剤師はいなかった。法律職や医療職など他分野からの参入が難しい試験なのだろう。


(2)今年の難易度

本年度の試験問題の解説を執筆して感じたことだが、例年に比してそれほど難易度が上がったとか下がったとは感じられない。

産業安全一般については、回答者の試験の解答状況をみると、かなり成績がよかったという印象を受ける。受験者の知識の高さを感じられる状況となった。

また、産業安全法令についても、産業安全一般ほどではないにせよ、かなり成績が良いという印象を受ける。労働衛生コンサルタント試験では、労働衛生一般に比較して労働衛生法令の成績がかなり低いことと対照的である。


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