
※ イメージ図(©photoAC)
労働安全衛生コンサルタント試験は、筆記試験と口述試験があり、筆記試験は、専門一般(択一)、関係法令(択一)、専門(記述)の3科目に分かれています。しかし、ここ数年、急速に難易度が高まっているといわれています。
一般に将来性のある資格は、受験者数が増加する傾向にあり、必然的に難易度が高くなってゆく傾向があります。そのような資格は、将来のキャリアを有利にするために、また、リスキリングのためにも「ねらい目」の試験であるということができます。
本稿では、過去4年間の受験者の実際の得点状況を分析し、労働安全衛生コンサルタントについての難易度の変化を解説しています。結論を言えば、難易度は急速に高まっており、将来の自己価値の向上のために受験しておくことが望ましい試験と言えます。
労働者の職業性疾病の防止や健康の確保は、SDGsの高まりの中で、その重要性を今後とも増してゆくことでしょう。本稿では、択一試験の最近の各科目ごとの得点分布状況をお示ししています。これからの産業界に必要不可欠な専門家への登竜門であるコンサルタント試験の受験をお勧めします。
- 1 得点分布の調査の方法と回答数
- (1)調査の方法
- (2)回答数
- 2 択一式試験の解答結果
- (1)難易度の区分と正答率の分布
- (2)正答数の分布
- 3 免除を受けるメリット・デメリットは
- 4 今後の難易度の動向の予測
1 得点分布の調査の方法と回答数
執筆日時:
(1)調査の方法

※ イメージ図(©photoAC)
本稿の得点分布の調査の方法は、当サイトを閲覧頂いている方に対してWEB上でお願いし、2021年度(令和3年度)から、実際の試験で解答した内容のアンケート調査を行うことによっている。
なお、解答を入力して頂いた方には、メリット(incentive)として会員サイトのIDコードとパスワードをお知らせしている。会員サイトにおいては、それまで一般に公開していた試験直後の「正答予想」を会員サイトに移動したほか、メールまたは掲示板でご報告いただいた口述試験の結果を掲載している。
(2)回答数
実際に回答して頂いた方の数は、次のようになった。いずれも筆記試験の実施日から口述試験の最終日までにご入力を頂いた方の統計である。
実施年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | ||
労働衛生 | 労働衛生法令 | 143 | 193 | 275 | 324 |
労働衛生一般 | 51 | 68 | 101 | 108 | |
労働安全 | 産業安全法令 | 269 | 243 | 214 | 297 |
産業安全一般 | 252 | 246 | 209 | 294 |
※ 全問又は半数程度以上について「無解答/忘れた」と解答した方、及び、筆記試験全免除の受験者で架空の値を入力したことが判明した方のデータは統計から除いた。
なお、重複して入力した方(メールアドレスの一致、氏名(ハンドルネーム)が酷似し解答状況が完全一致など)のデータは、最後の入力のみを残した。
ここで、労働衛生コンサルタント試験について回答して頂いた方の数は年を追うごとに増加しているのに対し、労働安全コンサルタントの方は 2023 年度までは減少したが 2024 年度に急増したのが分かると思う。この原因は必ずしも明確ではない。安全コンサルタントの 2023 年度までの減少は難易度が高くなったためとも思える(※)が、それでは 2024 年度の急増の説明がつかない。
※ 回答をして頂いた方には会員サイトの ID コードを発行しているのだが、会員サイトには正答の予測と口述試験の過去問が掲示されている。おそらく、安全コンサルタント試験の 2023 年度までは筆記試験を受けた方が、合格をあきらめてしまったために、回答数も落ち込んだというのが理由のように思える。

※ イメージ図(©photoAC)
では、受験者のうちどの程度の割合の方が回答して頂いたのだろうか。2023 年度の労働安全衛生コンサルタント試験の筆記試験の受験者数は、(公財)安全衛生技術試験協会の「統計のページ」によると、安全コンサルタントが 1,372 人、衛生コンサルタントが 749 人とされている(※)。
※ 受験申請者数ではなく、欠席者を除いた実際の受験者数である。
実際には、労働安全衛生コンサルタント試験は、各科目を免除される受験者の範囲がきわめて多いので、それぞれの科目については、全体の筆記試験受験者の半数程度しかいないのが実態である(※)。
※ 免除を受けた受験者数は公表されていない。なお、労働衛生一般について回答して頂いた方は、労働衛生法令に回答して頂いた方はよりもかなり少ない。これは、労働衛生一般を免除によって受けなかった方(ほぼ全員が医師の方)が多いためである。
そのように考えると、全受験者のかなりの割合の方が解答を寄せて頂いたと考えてよいのではないかと思う。解答数だけを考えれば、統計的には十分に全体を代表できる結果であると考えられる。
ただ、受験の結果を入力して頂いている方は、正答予測や口述試験の過去問が知りたいという方が多いであろうから、本気で受験している受験者や合格の可能性がある受験者に集中している可能性はある。当然のことではあるが、成績は良い方向へバイアスがかかっている(※)と考えるべきであろう。
※ 一方で、極端に正答率の低い回答が、数件、混じっていることも事実である。明らかに問題のあるケースを除き、そのようなものも統計から除いてはいない。
なお、今回のアンケートでは、受験者の属性についてもいくつかの質問をさせて頂いている。氏名(ハンドルネーム可)と受験区分だけは必須入力としたが、他の項目は任意入力としている。実際には、ほとんどすべての方から御回答を頂いた。
2 択一式試験の解答結果
(1)難易度の区分と正答率の分布
ア 難易度区分
択一試験の個々の問題の解答状況はグラフにして各問題の解説の冒頭に掲げている。また、それとは別に正答率から算定した「難易度」を示している。難易度は、正答率によって次のように分類してある(※)。
※ 統計を開始した 2021 年度の結果から、すべてのレベルの解答者がほぼ均等になるように、かつ切れの良い区切れになるように設定した。しかし、2024 年度にはレベル5の問題がかなり増えてしまった。
正答率 | 難易度 |
---|---|
80%以上 | 1 |
70%以上 80%未満 | 2 |
60%以上 70%未満 | 3 |
50%以上 60%未満 | 4 |
50%未満 | 5 |
イ 難易度ごとの問題数分布
その結果、各科目の難易度ごとの問題数は、次のようになった。例えば、2024 年度の労働衛生法令だと、80%以上の方が正答した難易度1の問題は1問しかなく、50%未満の方しか正答できなかった難易度5の問題が7問となるわけである。
年度 | 難易度 | 正答率 40%未満 (内数) |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||||
労働衛生 | 労働衛生法令 | 2024年度 | 1 | 2 | 3 | 2 | 7 | 7 |
2023年度 | 3 | 5 | 3 | 0 | 4 | 2 | ||
2022年度 | 2 | 4 | 2 | 3 | 4 | 4 | ||
2021年度 | 4 | 0 | 1 | 1 | 9 | 6 | ||
労働衛生一般 | 2024年度 | 6 | 7 | 6 | 7 | 4 | 2 | |
2023年度 | 11 | 5 | 3 | 4 | 7 | 3 | ||
2022年度 | 16 | 4 | 0 | 2 | 8 | 6 | ||
2021年度 | 6 | 9 | 9 | 1 | 5 | 4 | ||
労働安全 | 産業安全法令 | 2024年度 | 1 | 0 | 0 | 5 | 9 | 5 |
2023年度 | 0 | 0 | 4 | 3 | 8 | 5 | ||
2022年度 | 1 | 3 | 6 | 1 | 4 | 3 | ||
2021年度 | 0 | 4 | 4 | 4 | 3 | 1 | ||
産業安全一般 | 2024年度 | 5 | 4 | 4 | 2 | 15 | 7 | |
2023年度 | 5 | 3 | 3 | 7 | 12 | 7 | ||
2022年度 | 6 | 4 | 6 | 4 | 10 | 5 | ||
2021年度 | 8 | 9 | 3 | 5 | 5 | 3 |
これまでの4年間の調査では、実施年度によって難易度はややばらつきはあるものの、安全コンサルタントについては、難易度は年を追うごとに高くなるようである。難易度5の問題や、正答率 40 %未満の問題が、一貫して増加している。2024 年度には、産業安全法令は、15 問中、難易度5の問題が9問、産業安全一般が 30 問中 15 問といずれも半数以上となっている(※)。しかも、難易度が2以下の問題も減少傾向があるようだ。
※ 労働衛生法令でも難易度5の問題が7問と前年の4問を大きく上回った。2021 年度も9問と多かったが、このときは難易度1の問題が4問あった。なお、労働衛生一般の難易度は、2022 年度と2023 年度が低かったため、2021 年度と 2024 年度は相対的に高くなっている。
安全コンサルタント試験は衛生コンサルタント試験よりも筆記が難しいといわれることがある。確かに、この表を見ても、産業安全法令は、労働衛生法令に比して難易度が高いという印象を受ける。これは、実際に解説を作成していてもそのように感じる。
次の図は、労働衛生一般及び産業安全一般のそれぞれの問の正答率を、正答率の高い順に左側から並べたグラフである。このグラフ(折れ線)が下にあるほど難易度が高いということになる。正答率 70% 以上の問題にすべて正答すると、2024 年度の場合、労働衛生一般は 13 問(2023 年度では 17 問。以下、括弧内は 2023 年度のデータ)が正答できるが産業安全一般では9問(9問)しか正答できない。
コンサルタント試験では、合格するには、18 点以上を正答しなければならない。仮に、正答率の高い問題の順に正答できるとすると、2024 年度の労働衛生一般は正答率が 61.7 %(67.3 %)以上の問題を解ければよい。これに対し、同年度の産業安全一般については、正答率44.9 %(50.0 %)以上の問題まで解けなければならないのである。
では、労働衛生法令及び産業安全法令についてはどうだろうか。次のグラフを見て頂きたい。2021 年度の労働衛生法令は、かなり難易度が高かった(※)が、2023 年度、2024 年度は産業安全法令の難易度はさらに高くなっている。
※ 2021 年度は、コロナ禍の関係で医師が筆記試験免除を受けることができないケースが多かった。そのために正答率が高くなったと思われるかもしれないが、これは後述するように事実に反する。少なくとも、当サイトの分析では、医師の正答率が他の受験者の正答率より低いという事実はない。
法令は、合格するためには9問以上を正答しなければならない。2024 年度について言えば、労働衛生法令の難易度は高くなり、正答率 39.8 %(69.6 %)までの問題が解かなければならないが、それより難易度の高い問題は産業安全法令をかなり下回っている。これに対し、産業安全法令は正答率 47.6 %(45.3 %)の問題まで解けばよいものの、それより難易度の高い問題は労働衛生法令を上回っている(※)のである。
※ 2023 年度は、労働衛生法令は産業安全法令よりも正答率がかなり高かった。
次に、上記グラフについて、労働衛生コンサルタントと労働安全コンサルタントの試験ごとに過去4年の平均を取って、法令と一般でどちらが正答率が高いかを比べるためにグラフを重ねてみよう。法令は15問しかないので、法令の最も難しい問は一般の2番目、法令の2番目の問は一般の4番目と、法令は一般の難易度が2倍の試験問題のところにプロットし、空白になる部分は直線でつないでいる。
これを見れば分かるように、安全法令は比較的易しい問題で正答率が低いのである。難易度が高い部分は逆転しているが、合格のために必要なレベルの問題では明らかに法令の方が難易度が高い。また、労働衛生でも極端に難易度が易しい問題と極端に難易度が高い問題では一般と衛生でそれほど差はないものの、合否に影響を与えるレベルでは法令の方が難しいのである。
これは何を意味するだろうか? 合格を有利にするという観点だけから考えるのであれば、平均的な受験者(※1)にとっては、過去4年間の傾向がこれからも続くなら、法令を受験するなら一般の免除を受けるべきではないということになる(※2)。
※1 もちろん、それぞれの得意分野が何かによって、結論は異なる。また、免除を受けないことで、試験の機会に学習をしておけば、後の仕事に役立つということもあろう。なお、記述式の問題で、60%前後を確保できると仮定してのことである。
※2 労働衛生コンサルタント試験については、とくに 2021 年度は労働衛生法令の難易度が高かったため、この傾向が強かった。
なお、医師の資格を有する受験生はかなりおられ、ほとんどの方が労働衛生法令のみを受験しておられる。医師は法令は不得意だと思われるかもしれないが、次図を見て頂ければお分かりいただけるように、成績は医師以外の受験生(※)より、ややよい傾向がある。
※ 「保有資格」について何らかの回答をされた方で「医師」が含まれている方、及び、仕事が「産業医」であるとされた方を医師とした。なお、歯科医師は医師以外としてカウントした。「保有資格」について解答していない方は、仕事を「産業医」としている方を除き、「医師以外」とした。
医師が筆記試験の成績を下げているというのは、統計を見る限り誤解に過ぎない。
(2)正答数の分布
次に、受験者の正答数の分布をみてみよう。次のグラフは、労働衛生一般及び産業安全一般について、正答した問題数ごとの受験者数(割合)を 2021 年度から 2024 年度までの平均について示している。
これを見て分かることは、4年分を平均すれば衛生の方がかなり成績が良く、かなりの違があるということだろう。
合格するためには 18 問以上に正答しなければならない。安全、衛生ともに最頻値は 18 問を上回っている。ただし、他の科目(法令、記述)で高得点を取れば、正答数が 18 問を下回っても逆転合格の可能性はある。
ただし、12 問よりも正答数が少なければ、その時点で不合格である。安全も衛生も足切りになる受験生がいるが、ほとんど学習が進まないうちに「お試し」的な受験をしたケースもあるだろう。
衛生一般について、過去4年分を個別にみると以下のようになっている。受験する年によってかなりのばらつきがあるようだが、同じ問題で試験をすることはできないので、やむを得ない面はあろう。
すべての年度で最頻値は 18 問を上回っている。しかし、最頻値は。2021 年度から 2023 年度まで、年々、下がっていたが、2024 年度は上昇した。
なお、12 問未満の受験生は少ないが、2021 年度は比較的多かったようだ。
一方、安全一般は、2023 年度まではすべての年度で最頻値が 18 問を上回っていたが、2024 年度は下回ってしまった。さらに、18 点未満の受験者数も増加している。
また、2023 年度まで 12 問未満の受験生はかなり少なかった。しかし、2024 年度にはかなり増加している。安全コンサルタント試験については、この4年間では難易度が高まっているといえそうだ。
一方、法令については全般に成績はあまりよくない。
とはいえ、労働衛生法令と産業安全法令を比較すると、労働衛生法令の方がやや成績が良いことが分かる。
これは試験問題の解説を作成していても、産業安全法令の方が難しいという印象を強く受けるのである。あまりにも細かい内容が出題されるのだ。
労働衛生法令は、2021年度、2022年度ともに最頻値が合格圏の9問を下回っている。ところが、2023年度は最頻値が9問を大きく上回ったばかりか、全体に難易度が下がっている。
ところが、2024 年度には再び難易度が高まったばかりか、過去4年間で最も最頻値が低くなっているのである。これが、今後も続く傾向なのかどうかはもう少し様子を見るべきだろうが、難易度の上昇傾向は否めないところである。
これは、試験問題の解説を作成していても感じたが、労働衛生の常識的な知識があれば正答できる問題が 2023 年度は多かったように思う。ところが、2024 年度はかなり細かいことが問われている。ある程度、受験年度によって難易度が変動するのはやむを得ない面はあるが、やや極端だった。
一方、2024年度の労働衛生法令については、裾切り値の6問を下回った受験者が 324 名中 69 名(21.3%)いる。かなりの難関だったといえよう。
労働安全法令は、2021年度、2022年度ともに最頻値が合格圏の9問を上回っていたが、2023 年度は9問を下回ったばかりか全体に難易度が上昇した。
さらに、2024 年度になると最頻値が7問にまで下がったばかりか、裾切り値の6問を下回った受験者が 297 名中 104 名(35.0%)となった。もはや難関の試験になっているといえよう。
さて、ここでも、労働衛生法令について、医師の資格を有する受験者と医師以外の比較をしてみよう。次図を見れば明確だが、医師の方がその他の受験生に比して成績が良いことが分かる。
医師以外の成績は、最頻値が合格ラインの9問を下回っている。一方、医師の成績は、最頻値が合格ラインを上回っているのである。
ただし、注意しなければならないことは、労働衛生法令で6問から8問の正解をした受験者が、かなりいることである。医師の場合は、ほとんどが労働衛生一般と衛生管理(記述式)の免除を受けているので、6問から8問の正解をした受験者はそのまま不合格になってしまう。
ところが、医師以外の受験者の多くは労働衛生一般の免除を受けていないのである。そして、労働衛生一般は6割以上の解答をした受験者の割合がかなり高い。そのため、6問から8問の正解をした医師以外の受験者で、合格をした方もかなりいると思われるのである。このため、医師の合格率が、医師以外の受験者の合格率よりも低い可能性は否定できない。
なお、労働衛生一般に関しては、2021 年度は医師で受験された方は3名のみだったが、2022 年度は 11 名、2023 年度は 36 名、2024 年度は 40 名おられる。そこで、2022 年度以降の得点の分布のグラフを次に示しておこう。
やはり医師の方が医師以外の受験者の方よりも成績は良いようだ。しかも、ほとんどの受験生が合格点の 18 点を上回っているのである。そして、さらに重要なことは、誰も足切りの 12 点を下回っていないということである。
ただ、医師の方は、免除が受けられるにもかかわらずあえて受験しておられる方なので、そもそも労働衛生一般について自信のある方が多かっただろう。その意味では一般化はできないかもしれない。
また、それぞれの「問題ごとに医師の方と医師以外の方の正答率を見ると、2024 年度は顕著に医師の方が正答率が高くなった(※)。実は、2022 年度と 2023 年度では顕著に医師の方が正答率が高い問題があったが、ほぼ医師と医師以外の方で差はなかった。
※ 試験問題の作成委員に、医師の割合が増えたのかもしれない。いずれにせよ、この理由は明確ではない。
とくに問 10(振動障害の診断に用いられる検査項目)の医師の正答率は 95.0 %(医師以外は 54.2 %。以下正答率の括弧内について同じ。)と問 11(職場における熱中症予防)は 95.0 %(50.9 %)、問 15(THP 指針)は 90.0 %(53.7 %)、問1(労働衛生管理)は 87.5 %(51.9 %)、問6(けい肺症)も 87.5 %(41.1 %)である。
確かに、医師(とりわけ公衆衛生の専門家)の方が有利だろうと思える問題ばかりではある。
3 免除を受けるメリット・デメリットは

※ イメージ図(©photoAC)
最後に昨年度の分析結果で述べたことの繰り返しになるが、このように見る限り、労働衛生コンサルタントに関しては、労働衛生法令を受けるのであれば、労働衛生一般の免除を受けることは、一般的には避けた方がよいことになる。
また、繰り返しになるが、合格後の仕事を適切に行うためにも、試験の免除を受けずに、受験の機会を利用して学習をしておくということも考えられる。試験のためとはいえ、一定の学習の効果は、仕事においても役に立つはずである。
もちろん、それぞれの受験生ごとに、得手不得手があるだろうからなんともいえないが、労働衛生一般の難易度はそれほど高くない。労働衛生一般の免除を受けるのであれば、慎重に検討をした方がよさそうだ。
とくに医師の受験者の方は、ほとんどの方が労働衛生法令のみを受験して、労働衛生一般を受験しておられない。しかし、先述したように、労働衛生法令のみで受験していると、6問から8問を正解しても不合格になってしまう。一方、労働衛生一般の免除を受けていなければ、合格した可能性があるのだ。
医師の方で、法令はあまり得意ではないという方は、労働衛生一般の免除を受けないことも視野に入れた方がよいかもしれない。
4 今後の難易度の動向の予測
さて、労働安全衛生コンサルタント試験の筆記試験について、今後の動向を考えてみよう。
これまで見てきた通り、労働安全コンサルタント試験は、過去4年間に関する限り難易度は高くなる傾向を示している。とりわけ産業安全法令に関しては、2024 年度には裾切り値の6問を下回った受験者が 297 名中 104 名(35.0%)となっている。産業安全一般も最頻値は、すでに合格ラインを下回っている。
図を見ても分かるように、労働安全衛生コンサルタント試験の受験申請者数は、年を追うごとに増加しているのである。そうなると、試験協会としても、合格率を低下させる必要性は感じないであろう。少なくとも安全コンサルタント試験については、今後も難易度は上昇を続ける可能性が高いのではなかろうか。
一方、衛生コンサルタント試験については、この4年間で難易度は、2022 年度にいったん下降し、2023 年度以降は上昇を続けている。今後、どうなるかは予断を許さないが、受験申請者数が増えている以上、一般には難易度は上がる方向で動くだろう。
今後、化学物質管理の在り方が、法令依存型の対策から自律的管理に変わろうとしてることからも分かるように、労働衛生管理の方向が、自ら考えて対策を行う方向に大きく舵を切り替えつつあることは間違いのないところである。
その様な中、化学物質管理のみならず、メンタルヘルス対策など、労働衛生の専門家に対する需要は高まることが予想される。
ある意味で、この試験は、今のうちに取得することが強く望まれる試験となりつつあるといえよう。
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