労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問24

労働災害統計(全般)




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和05年度) 問24 難易度 労働災害統計は、頻出事項であるが、やや詳細な傾向が出題されたためか、正答率は低かった。
労働災害統計

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問24 厚生労働省の労働災害統計(令和3年)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)全産業の労働者数50人未満の事業場における休業4日以上の死傷者数は、休業4日以上の死傷者数全体の半数を超えている。

(2)休業4日以上の死傷者数を事故の型別でみると、製造業では、はさまれ・巻き込まれが最も多く、建設業では、墜落・転落が最も多くなっている。

(3)死亡者数を業種別にみると、多い方から建設業、製造業、陸上貨物運送事業の順になっている。

(4)製造業における休業4日以上の死傷者数を起因物別でみると、一般動力機械が最も多くなっている。

(5)死傷年千人率(休業4日以上)を業種別に比較すると、林業が最も高く、鉱業と比べても2倍以上となっている。

正答(4)

【解説】

問24試験結果

試験解答状況
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労働災害統計については、「労働災害の発生状況の推移」に掲示している各グラフを参照して頂きたい。ここ数年、労働災害統計の問題は、かなり詳細な傾向を問われるようになっている。

だからといって、細かな数値を記憶してもあまり意味はない。業種ごとの型別災害の傾向などを、なぜそのような傾向になっているのかを考えながら覚えるようにしたい。厚労省は、試験直前の記憶マシーンにコンサルタントになって欲しいわけではないのである。

とりわけ、安全衛生行政が大きな課題であると考えていることが出題される傾向がある。その課題とは何かについては、逆に、ここ数年の労働災害統計に関する過去問から読み取るようにしたい。

事業場規模別休業4日以上死傷災害の推移

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(1)適切である。全産業の労働者数50人未満の事業場における休業4日以上の死傷者数は、休業4日以上の死傷者数全体の半数を超えている。なお、災害が小規模事業場に集中する傾向は、死亡災害の方が大きい。

労働災害統計の問題で休業4日以上の死傷災害について問われている過去問を学習するときは、死亡災害についてもどうなっているかをグラフで参照するようにした方がよい(※)

当サイトの「労働災害の発生状況の推移」にアップしてある。

(2)適切である。休業4日以上の死傷者数を事故の型別でみると、製造業では、はさまれ・巻き込まれが最も多く、建設業では、墜落・転落が最も多くなっている。

業種ごとの型別労働災害発生状況は、よく出題されるので傾向だけは覚えておいた方がよい。なお、運輸交通業で墜落・転落災害が最も多い(死亡災害では交通事故)ことも覚えておこう。

第三次産業の労働災害発生状況(建設業)

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事故の型別労働災害発生件数の推移(製造業)

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事業場規模別休業4日以上死傷災害の推移

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(3)適切である。死亡者数を業種別にみると、多い方から建設業、製造業、陸上貨物運送事業(※)の順になっている。

※ 厚労省の労働災害の統計は、業種の分け方によって2通りのものが公表されている。片方は労基法の別表第1による業種分類で、もう一方は各労働災害防止団体の業種分類を用いている。本肢の陸上貨物運送事業という業種のある統計は、後者に該当する。

本肢を正答(適切ではない)とした受験者が多かった。死傷者数と年千人率を誤解したのだろうか。休業4日以上の死傷災害の年千人率だと、確かに陸上貨物運送事業、建設業、製造業の順になる。

製造業の起因物別休業4日以上災害の推移

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(4)適切ではない。製造業における休業4日以上の死傷者数を起因物別でみると、「仮設物、建築物、構築物等」となっている。転倒災害と墜落・転落災害の起因物のほとんどは「仮設物、建築物、構築物等」であり、製造業では転倒災害と墜落災害がかなりの割合を占めているからである。

なお、業種別の起因物別労働災害についての問題は、過去 12 年間でも初出である。今後の出題の可能性は何とも言えないが、リンク先の業種別の起因物別労働災害について、目を通しておくことをお勧めする。

業種別休業4日以上年千人率の推移

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(5)適切である。2021年(令和3年)の死傷年千人率(休業4日以上)を業種別に比較すると、林業(27.7)が最も高く、鉱業(13.9)と比べても2倍以上となっている。

しかし、現時点では、労働災害全体における鉱業の割合は極めて少ないのである。安全コンサルタントとはいえ、鉱業と林業の年千人率の比較を知っている必要があるのだろうか?問題として適切かという気はしないでもない。

2024年01月05日執筆