労働安全コンサルタント試験 2021年 産業安全関係法令 問08

電気による労働災害の防止措置




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和03年度) 問08 難易度 感電防止の規定は条文も多くなく、学習しやすい分野である。ここで正答できなければならない。
電気による災害防止措置

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)高圧の電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行うときは、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行う期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させなければならない。

(2)墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが2メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(3)対地電圧が50 ボルトを超える電気機械器具の操作の際に、感電の危険又は誤操作による危険を防止するため、当該電気機械器具の操作部分について必要な照度を保持しなければならない。

(4)対地電圧が50 ボルトを超える充電電路に用いられる絶縁用防護具については、厚生労働大臣が定める規格を具備したものでなければ、使用してはならない。

(5)交流で300 ボルトを超える低圧の充電電路の点検、修理等の作業に従事する労働者に着用させる絶縁用保護具については、1年以内ごとに1回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。ただし、1年を超える期間使用しない絶縁用保護具の当該使用しない期間においては、この限りでない。

正答(5)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
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電気による災害の防止の設問は、ほぼ毎年平易な問題が出題される。学習するべき条文も多くはない。この問題も2013年問8の(5)の解説を読み込んでいれば正答できる問題であった。電気による災害防止の問題は、確実に正答しておきたい。

(1)正しい。本肢の「高圧の電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業」は安衛則第342条第1項の高圧活線近接作業に該当するので、同350条により、作業に従事する労働者に対し、作業を行う期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させなければならない。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線近接作業)

第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯く側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯く側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)

第350条 事業者は、第三百三十九条、第三百四十一条第一項、第三百四十二条第一項、第三百四十四条第一項又は第三百四十五条第一項の作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行なう期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めて、その者に次の事項を行なわせなければならない。

一~三 (略)

(2)正しい。安衛則第332条の規定により、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが2メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

なお、本条は自動電撃防止装置の使用の義務を一定の場合に限定しているが、実務においては、自動溶接を除き、交流アーク溶接を行う場合は常に自動電撃防止装置を使用させるべきである。

【労働安全衛生規則】

(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)

第332条 事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(3)正しい。安衛則第335条の規定により、対地電圧が50 ボルトを超える電気機械器具の操作の際に、感電の危険又は誤操作による危険を防止するため、当該電気機械器具の操作部分について必要な照度を保持しなければならない。

なお、本肢が「対地電圧が50 ボルトを超える」としているのは、同第354条が、安衛法第2編第5章電気による危険の防止(第329条~第354条)について、「電気機械器具、配線又は移動電線で、対地電圧が五十ボルト以下であるものについては、適用しない」としているためである。

【労働安全衛生規則】

(電気機械器具の操作部分の照度)

第335条 事業者は、電気機械器具の操作の際に、感電の危険又は誤操作による危険を防止するため、当該電気機械器具の操作部分について必要な照度を保持しなければならない。

(適用除外)

第354条 この章の規定は、電気機械器具、配線又は移動電線で、対地電圧が五十ボルト以下であるものについては、適用しない。

(4)正しい。安衛法第42条(及び安衛令第13条第3項(第七号))により、対地電圧が50 ボルトを超える充電電路に用いられる絶縁用防護具については、厚生労働大臣が定める規格を具備したものでなければ、使用してはならない。

なお、本肢の絶縁用防護具と絶縁用防具は異なる概念であるので留意すること。

【労働安全衛生法】

第42条 特定機械等以外の機械等で、別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。

【労働安全衛生法施行令】

第13条 (第1項及び第2項 略)

 法第四十二条の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~六 (略)

 絶縁用防護具(対地電圧が五十ボルトを超える充電電路に用いられるものに限る。)

八~三十四 (略)

4及び5 (略)

(5)誤り。安衛則第351条により、交流で300 ボルトを超える低圧の充電電路の点検、修理等の作業に従事する労働者に着用させる絶縁用保護具については、6月以内ごとに1回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。ただし、6月を超える期間使用しない絶縁用保護具の当該使用しない期間においては、この限りでない。

1年以内ごとに1回ではない。

【労働安全衛生規則】

(低圧活線作業)

第346条 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならない。

 (略)

(絶縁用保護具等の定期自主検査)

第351条 事業者は、第三百四十八条第一項各号に掲げる絶縁用保護具等(同項第五号に掲げるものにあつては、交流で三百ボルトを超える低圧の充電電路に対して用いられるものに限る。以下この条において同じ。)については、六月以内ごとに一回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わなければならない。ただし、六月を超える期間使用しない絶縁用保護具等の当該使用しない期間においては、この限りでない。

2~4 (略)

2021年11月12日執筆