労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生一般 問15

加齢による人体の機能の変化




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和05年度) 問15 難易度 加齢による身体変化は、昨年に続く出題。内容が細かすぎ、棄て問と割り切ってよい。
加齢による身体変化

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問15 加齢による人体の機能の変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)筋持久力の指標である上体起こしは、男性で 60 ~ 64 歳にはピーク時の約6割まで低下する。

(2)全身持久力の指標である 20m シャトルラン(往復持久走)は、男女とも40歳頃から著しい低下傾向を示す。

(3)女性の更年期は、閉経を迎える前後をいい、エストロゲンの分泌が低下することによる更年期障害を伴う。

(4)女性の更年期には、子宮、ちつ、尿道、膀胱ぼうこう、毛髪、皮膚、骨などの器官が萎縮してくる。

(5)男性では、テストステロンの分泌の低下により、筋力低下、自律神経失調症状や精力減退などを生じる。

正答(2)

【解説】

問15試験結果

試験解答状況
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2022年の問15にも同種の問題が出てはいるものの、あまりにも細かすぎる内容である。この問題は、「体力・運動能力調査」の内容を知っておかないと正答できないが、ここまで知っている必要があるとも思えない。捨て問と割り切ってよい。

なお、本問の医師である受験者の正答率は 30.6 %、医師以外の受験者の正答率は 38.7 %であった。このことからも、本問にはやや疑問を感じざるを得ない。

上体起こし

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(1)正しい。「体力・運動能力調査」(令和4年)によると、筋持久力の指標である上体起こしは、男性の場合、60 ~64歳(平均 19.01 回)にはピーク時(17歳:平均 30.38 回)の約6割まで低下している。

ただ、運動のトレーナーでもない限り、このような知識を持っている必要があるとは思えない。あまりにも問題として細かすぎるだろう。

20mシャトルラン(往復持久走)

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(2)誤り。「体力・運動能力調査」(令和4年)によると、全身持久力の指標である20mシャトルラン(往復持久走)が、男女とも40歳頃から著しい低下傾向を示しているとは思えない。

これも細かすぎる問題である。ただ、「全身持久力が 40 歳前後で著しい低下傾向を示す」というのは、常識的にはやや不自然ではある。そのことから、本肢を正答(誤りの肢)とすることで正答できたかもしれない。

(3)正しい。女性の更年期は、閉経を迎える 50 ~ 51 歳の前後である 45 歳~ 55 歳の約 10 年間をいう。女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が閉経にともなって低下することで更年期障害が起きる。

(4)(2)が誤っているようなので、こちらは正しいとしておく。なお、女性の更年期に罹りやすい疾病として、子宮やちつなどが萎縮する萎縮性腟炎という疾病はあるが、これは疾病であって、必ずしも更年期のすべての女性がそうなるわけではない。

また、尿もれや膀胱ぼうこう炎になるケースもあるが、尿道や膀胱が萎縮するわけではない。また、皮膚は萎縮することがあるにせよ、毛髪や骨は、毛髪の衰えや骨粗しょう症なども起こりやすくなるとはいえ、必ずしも萎縮するわけではない。

現実に、(4)が誤っているとした受験生が最も多く、かなり疑問のある内容である。なお、本問を誤り(正答)とした受験者は、医師では 36 名中 15 名(41.7 %)、医師以外では 62 名中 22 名(35.5 %)であった。専門知識があるとかえって間違いやすくなる問題というのは「引っ掛け問」というべきであろう。専門的な知識を測るべき試験の問題として適切なのかという疑問は残る。

(5)正しい。男性の更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH 症候群)では、男性ホルモンであるテストステロンの分泌の低下により、筋力低下、自律神経失調症状や精力減退などを生じる。なお、女性の更年期障害のように一定の年齢で起きるのではなく、40歳以降であれば、いつでも起こり得る。

2024年01月24日執筆