労働衛生コンサルタント試験 2022年 労働衛生一般 問26

能力向上教育に関する指針




問題文
トップ
受験勉強に打ち込む

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2022年度(令和04年度) 問26 難易度 能力向上教育指針に関する基本的な知識問題。初めての出題だったためか、正答率は低かった。
能力向上教育指針

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問26 厚生労働省の「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」における能力向上教育及びその実施に当たっての留意事項に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)この指針による能力向上教育の対象者には、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者のほか、作業主任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者が含まれる。

(2)能力向上教育の実施者は事業者であるが、事業者自らが行うほか、安全衛生団体等に委託して実施することができる。

(3)事業場において機械設備等に大幅な変更があった時に行う随時の能力向上教育を実施した場合には、社会経済情勢の変化に対応して一定期間ごとに行う定期の能力向上教育を実施したものとみなして取り扱うことができる。

(4)衛生管理者については、衛生管理者免許の取得により衛生管理者の業務に必要な最小限度の能力を有していることから、当該免許の取得から初めて衛生管理者に選任されるまでの期間が6か月以内の場合は、初任時の能力向上教育は要しないものとされている。

(5)作業主任者については、労働災害の防止のための業務が比較的限定されることから、初任時の能力向上教育は要しないものとされているが、資格取得から初めて作業主任者に選任されるまでの期間が長期に及ぶ場合は、選任時に定期又は随時の能力向上教育を実施する。

正答(4)

【解説】

問26試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

本問は、問題文にもあるように厚生労働省の「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針」(以下「指針」という。)からの出題である。

(1)適切である。指針の対象者は、指針Ⅱの1に定められており、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者のほか、作業主任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者が含まれる。

【労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針】

Ⅱ 教育の対象者及び種類

1 対象者

  次に掲げる者とする。

(1)安全管理者

(2)衛生管理者

(3)安全衛生推進者

(4)衛生推進者

(5)作業主任者

(6)元方安全衛生管理者

(7)店社安全衛生管理者

(8)その他の安全衛生業務従事者

(2)適切である。この指針の教育は、安衛法第19条の2で事業者に努力義務が課せられたものであり、実施者が事業者であることは当然である。また、教育の実施そのものを事業者が第三者に受け負わすことは禁止されておらず、安全衛生団体等に委託して実施することができることは、法律上、当然である。

なお、指針のⅣの1は、念のためであろうが、安全衛生団体等に委託して実施できると定めている(※)

※ 指針のこの規定がなくても、能力向上教育を第三者に委託して実施できることは当然である。また、安全衛生団体等の者に委託することも当然に可能である。

【労働安全衛生法】

(安全管理者等に対する教育等)

第19条の2 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない。

 厚生労働大臣は、前項の教育、講習等の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができる。

【労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針】

Ⅳ 推進体制の整備等

 能力向上教育の実施者は事業者であるが、事業者自らが行うほか、安全衛生団体等に委託して実施できるものとする。

  事業者又は事業者の委託を受けた安全衛生団体等はあらかじめ能力向上教育の実施に当たって実施責任者を定めるとともに、実施計画を作成するものとする。

(3)適切である。平成元年5月22日基発第246号「労働災害の防止のための業務に従事する者の能力向上教育に関する指針の公示について(※)の記の2の(2)のロの②に「なお、随時教育を実施した場合には、定期教育を実施したものとみなして取り扱うこととすること」とされている。

※ 当該通達はリンク先の一番下の方に添付されている。なお、中災防の安全衛生情報センターの同名通達と内容が異なっているが、中災防止の方は平成18年の改正が反映されていないようである。

(4)適切ではない。本肢のような規定はない。なお、安全管理者については、初任時教育そのものが存在していない。

【「労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針の一部を改正する指針」等の周知等について(平成18年3月31日基発第0331023号)】

第1 労働災害の防止のための業務に従事する者に対する能力向上教育に関する指針の一部を改正する指針関係

 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第5条第1号において、安全管理者の資格要件として、厚生労働大臣が定める研修を修了したことが追加されたことに伴い、安全管理者能力向上教育(初任時)のカリキュラムを削除したこと。

2及び3 (略)

(5)適切である。(3)に示した平成元年5月22日基発第246号「労働災害の防止のための業務に従事する者の能力向上教育に関する指針の公示について」の記の2の(2)のイに「作業主任者については、当該業務が衛生管理者、安全衛生推進者者等に比べかなり限定されることから、初任時教育は要しないものとする。ただし、作業主任者であっても、資格取得から初めて作業主任者に選任されるまでの間が長期に及ぶ場合(概ね5年を超える場合)には、選任時に次の定期教育又は随時教育を実施することが望ましいこと」とされている。

【「労働災害の防止のための業務に従事する者の能力向上教育に関する指針の公示について(平成元年5月22日基発第246号)】

2 能力向上教育の対象者及び種類

(1)対象者

(2)能力向上教育の種類

   (本文略)

イ  初任時教育

  安全衛生業務のうち衛生管理者、安全衛生推進者等の業務に初めて従事する者は、当該業務に必要な最小限度の能力を有していることはもちろんであるが、技術革新の進展等の状況により適切に対応できるよう必要な知識等を付与する能力向上教育を行うこととしたものであること。初任時教育は、選任後3カ月以内を目安に実施することが望ましいこと。

  なお、作業主任者については、当該業務が衛生管理者、安全衛生推進者者等に比べかなり限定されることから、初任時教育は要しないものとする。ただし、作業主任者であっても、資格取得から初めて作業主任者に選任されるまでの間が長期に及ぶ場合(概ね5年を超える場合)には、選任時に次の定期教育又は随時教育を実施することが望ましいこと。

ロ  定期教育及び随時教育

  (本文略)

2022年12月11日執筆