労働衛生コンサルタント試験 2022年 労働衛生一般 問10

情報機器作業労働衛生管理のガイドライン




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2022年度(令和04年度) 問10 難易度 情報機器作業ガイドラインに関する知識問題である。かなりの難問だったようだ。
情報機器作業

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問10 厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に関する次のイ~ニの記述について、適切でないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ 情報機器による1日の作業時間は、8時間までとされている。

ロ 室内での情報機器作業において最低照度は定められているが、最高照度は定められていない。

ハ ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮して10ポイント以上とされている。

ニ 情報機器を用いた作業では、長時間座位姿勢を続けるのではなく、時折立位姿勢を交えて作業することが望ましい。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ハ  ニ

正答(2)

【解説】

問10試験結果

試験解答状況
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本問は、問題文にもあるように「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)に関する問題である。

正答状況をみれば分かるように、受験生の多くはロとハでかなり迷ったようだ。ロは、最高照度の定めについての有無を問うものだが、ないものをないと判断するのは難しいということだろう。

イ 適切ではない。ガイドラインの解説において「一日の作業時間については、これまでの経験から、職場において情報機器作業に関して適切な労働衛生管理を行うとともに、各人が自らの健康の維持管理に努めれば、大多数の労働者の健康を保持できることが明らかになっており、他方、各事業場における情報機器作業の態様が様々で作業者への負荷が一様でなく、また、情報機器作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいこともあり、ガイドラインでは上限を設けていない」としている(※)

※ 旧VDTガイドラインは、当初の「VDT作業のための労働衛生上の指針」(1985年)、これを大きく改正した「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2002年)が定められていた。この旧VDTガイドラインが、2011年の東日本大震災のときに、少なくない報道機関から「VDTガイドラインでVDT作業の1日の最長時間を制限している。民間の感覚では非常識であり、これによって役所の仕事が非効率的になっている」という批判を浴びたのである。

この批判の妥当性については触れないが、この批判を受けて「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年)の際に、作業時間に関する記述を簡素化し、このような注釈を設けたというのが実態であろう。

実を言えば、旧VDTガイドライン時代にも具体的な1日の作業時間の定めはなかったし、著者の知る限り、VDTガイドラインを遵守している役所など存在していなかったのだが。

ロ 適切である。室内での情報機器作業において最低照度は300ルクスと定められているが、最高照度は定められていない。

グレア(まぶしい光源)の存在を別にすれば、明るすぎる職場というのはほとんどないだろうから、指針の策定者は最高照度を定める必要性を感じなかったのだろう。規制しなくても問題がなければ、規制はしないのである。

ハ 適切ではない。指針には「ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3mm以上とすること」とされている。また、印刷物ではないのだから、ディスプレイの文字を本肢のようにポイントで定めるのは不自然である。仮にポイントがピクセル(ドット)の意味で使用されているとしても、ディスプレイの大きさが変われば文字の大きさは変わってしまうのだから意味がない。

そもそも、情報機器は大型コンピュータの専用端末でもない限り、パーソナルコンピュータが用いられることが多く、文字の大きさはユーザーが指定できることがほとんどである。3mm以上という規定もあまり意味のあるものとは思えない。

ニ 適切である。ガイドラインでは作業姿勢として「座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく」とされている。

2022年12月08日執筆