労働者への民事賠償を認めた判例




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労働災害が、同僚労働者の過失によって発生することがあります。このような災害では、被災者や遺族が、同僚労働者に対して民事賠償請求が可能となるケースがあります。

本稿では、他社の労働者によって災害が発生した場合(混在作業)に、労働者が訴えられた民事賠償訴訟の判決を取り上げて解説します。

一般の労働者でも、安全に対して高い意識を持つことが必要であることを示しているといえます。




1 最初に

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(1)一般の労働者に民事賠償請求することは可能か

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最近、ある事業主の方から、労働者が労働災害発生に関して民事賠償請求を受けた例はないかと聞かれた。労働災害防止の話を労働者にしても真剣に聞いてもらえないので、そのような例があれば知りたいということであった。

交通労働災害(第三者行為災害)で、加害車両を運転していた他企業の労働者が訴えられるケースは多いし、パワハラがらみで上司が訴えられたケースも何例かあると答えたのだが、工場内の一般的な労働災害の例が欲しいとのことである。

なお、最初に誤解のないようにお断りしておくが、労働災害の防止は、一義的には事業者の責任である。ある労働者の不安全行動(過失)によって他の労働者が被災した場合を考えよう。この場合、その被災労働者は、加害者である労働者でなく事業者を訴えることができるのである。

事業者を訴える法的な根拠としては、民法第415条(※)や第715条(※)がある。これらの条文によれば、他の労働者の不安全行動によって発生した災害の賠償責任を、事業者に対して問うことができるのである。

※1 事業者の安全配慮義務の履行補助者であるところの労働者の(故意又は)過失によって安全配慮義務が果たせずに災害(損害)が発生した場合、事業者に対して民事賠償請求をすることができるのである。

※2 被用者である労働者の過失によって災害(損害)が発生したときには、その使用者である事業者を訴えることができるのである。

また、状況によっては、同第709条を根拠に、事業者が管理責任を果たしていなかったことが過失であるなどとして、直接、事業者の不法行為責任を問うこともできる。

なお、会社のみならず、役員等についても、会社法第429条1項(任務懈怠責任)によって民事賠償請求を行うことも可能であり、状況によっては幹部職員に対しても民法715条2項によって民事賠償請求を行うことができる場合もある。現実に、会社法第429条1項については、精神障害に関して取締役が民事賠償請求で訴えられたケースがある。

しかし、だからといって、他の労働者は責任が問われることはないのかといえば、もちろんそのようなことはない。民法第709条によって不法行為責任を問われることはあり得るのである(※)。これは、会社の指示で不安全行動をとったような場合でさえ、それによって第三者に損害を与えれば、その労働者が責任を負うことがあるのである。

※ この場合、安全配慮義務は問題とはならない。安全配慮義務は、契約関係に基づく債務であり、労働者間には契約関係はないからである。


(2)現場の労働者に民事賠償請求をした例

ただ、現実には交通労働災害やパワハラの事例は別として、工場で発生した事故による労働災害で、労働者が民事賠償の請求を受けたという例はほとんど見当たらないのも事実である。

これは、現場の労働者を訴えて仮に勝訴したとしても、実際に執行することができるかどうか分からないということもあるのだろう。裁判に勝ってみても、相手側に取り立てるカネがなければ意味がないのである(※)。弁護士としても、相手にカネがなければ成功報酬を受け取れない可能性もあるから、そのような者を相手とする訴訟はやりたがらないだろう。

※ 現実には、個人や小規模企業を訴えるときは、訴訟の前に財産の保全をしておかなければならない。すなわち仮に差し押さえておいて、勝訴後にスムーズに執行ができるようにしておくのである。そうしないと、相手側は負けると思ったときに、財産を親戚や会社などに移転してしまうからである。

裁判をするにも一定の費用は掛かるのである。訴状には所定の金額の印紙を貼付する必要があり、弁護士に委任するにも費用は発生する。そして、これらが意外に高額なのである。

わが国の民事訴訟法においては、誰を訴えるかは原告側が決めることができるので、カネを取ることができないような相手を訴えたりはしないのが普通なのである。

おそらくそのような理由で、現場の労働者に対して民事賠償の請求で訴えたというケースはきわめてまれなのであろう。本稿の冒頭に挙げた事業主の方の質問を受けて、化学物質による災害など産業保健の分野での事例がないか探してみたのだが見つけることができなかった。しかし、産業保健の分野からは外れるが、フォークリフトを運転していた労働者が訴えられた例があるので、本稿で紹介しよう。基本的な考え方は、安全分野でも産業保健の分野においても変わらないので、ひとつの例として参考になるものと思われる。


2 事件の概要

(1)事故の概要

本件事故の概要は、次に示すようなものである。

【事故の概要】

  • 本件事故はY1社のB支店A営業所の構内で発生した。
  • Xは訴外D社の労働者である。D社は、Y1社のB支店A営業所からEセンターへの荷物搬送をXに行わせている。XはD社の車両を運転してA営業所へ行き、荷物を積み込んでEセンターに運搬する作業を1人で行っていた。
  • 被災当日午前6時過ぎ頃、Xは、A営業所の荷さばき場で荷物の積み込みをしていたところ、後方から走行してきたY2(Y1社の労働者)の運転するフォークリフトによって衝突され、前方へはじき飛ばされて、さらに右足首をフォークリフトの左後輪で轢かれた。このフォークリフトは、バック進行(※)をしており、Xの後方から衝突したものであった。

※ フォークリフトは荷を積むと前方が見にくくなるので、バックで走行すること自体はよくあることで、バックでの走行がとくに危険な行為というわけではない。


(2)原告による損害賠償請求

このため、Xは以下の者に対して、それぞれ以下の理由により民事賠償請求を行った。

【原告による賠償請求の相手と根拠条文】

  •  フォークリフトを運転していたY2について不法行為責任(民法第709条)
  •  現場を監督していたY3(Y1のB支店長)に対して不法行為責任(民法第709条)
  •  Y2の雇用主であるY1社に対して使用者責任(民法第715条)

また、その後Xは、出入りの他社の従業員から暴行を受け、これはY3支店長とY4(Y1社の労働者だった)も共謀していた(共同不法行為)として、同時にY3及びY4に対して損害賠償を請求した(※)。しかし、この暴行事件は労働災害とは言い難いようなので本稿では取り上げないものとする。

※ 実際に暴行を加えた者は被告とされていない。

なお、Xを雇用していたD社に対しても安全配慮義務不履行(民法第415条)を理由に損害賠償を請求していたが、D社とは和解が成立した。


3 裁判所の認定した事件の経緯等

(1)判決が認定した事実

ア 事故の経緯

判決文が認定した事故の経過は次のようなものである。

  • ① Xは、被災当日である7月31日の午前6時半頃、Y1社のビル構内で荷物の鉄製車輪付のかご(以下「ボックス」という。)を後ろ向きに引いていたところ、Y2が運転するフォークリフトが後進してきて、Xの背後に衝突し、倒れたXの右足を左後輪が轢いた。
  • ② 当時、その構内では、14~15名の作業員とボックスとが混み合う状態で各自が作業をしていた。Y2が運転するフォークリフトもその中で作業に当っていたものである。
  • ③ Y2は、フォークリフトのバック・ブザーがならないようスイッチを切ったまま運転していた。これは、Y1社が、早朝にフォークリフトの後進に伴って鳴るブザーが近隣住民に聞こえないように配慮し、鳴らさないよう指導していたためである。
  • ④ このため、Xは、ボックスを引っ張っていたときも、フォークリフトが後進して近づいてくるのに気付かなかった。
  • ⑤ Y1社の運転者安全手帳の中のフォークリフト安全作業マニュアルには、以下のように記されている。
  • a ボックスを運ぶときは原則としてバック運転で安全を確認しながら行うこと、
  • b 後方の障害物の有無、他の作業者の状況を確認しながら行うこと、
  • c 速度を落として、後ろを振り向き慎重に走行すること、
  • d 倉庫、上屋、屋内の運転には十分気を付けること、
  • e 必ず、指定された場所を走行・作業すること、
  • f 構内のフォークリフトの走行通路の表示・標識・エリアを厳守し、
  • g 走行中は、人が最優先であること、

イ 事故発生後の経緯

判決文が認定した事故発生後の経過は次のようなものである。

  • ① Xは、本件車両事故当日は、事故後、足の痛みを感じたが、仕事に支障が生じてD社及び被告会社に迷惑が掛からないよう仕事を続けた。
  •   しかし、翌日以降仕事を休み、8月3日、整形外科で右足打撲(右第1中足骨骨折の疑い)と診断され、その後同月6日には右第1中足骨骨折の正式診断を得た。
  • ② 原告は、D社なりY1社から何らかの補償なり対応があると思って待っていたが、何の連絡もなかったので、8月22日に職場復帰した。
  • ③ Xは、その後、同年8月、9月、10月、11月、翌年の1月、2月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、12月に1日ないし数日間、通院している。
  • ④ D社は、顧問社会保険労務士の指導に従い、被災翌々月の9月27日、同年7月31日から同年8月31日までの間の休業補償給付の請求を行い、「労働者死傷病報告」はD社のFがX本人による自損事故という報告内容を作成して同年10月3日に提出した。
  •   また、療養補償給付たる療養の給付請求は、事故の翌年4月19日、労働基準監督署に提出されているが、災害原因は自損事故としてXが知らないまま提出されていた。
  • ⑤ その後、右足の通院は様子見状態であったが、疼痛、圧痛が残っていたので、前記暴行事件後の事故翌年の11月26日から整形外科の治療を受け、「変形性足関節症」と診断されている。

(2)不法行為の成否についての判断

事実関係については、「運転者Y2は、荷さばきを行う作業員と荷物を満載したボックスが混在する中、バック・ブザーを鳴らさないで後進走行し、フォークリフトの存在に気付かずにボックスを後ろ向きに引いていたXの背後に衝突させ、同人に負傷を与えた」と裁判所は認定した。なお、このことについて被告側はとくに争わなかったようである(※)

※ 民事訴訟では当事者間に争いのない事実は、そのまま認定される。

ア 過失に関する被告の主張

被告らは、以下のことを指摘してY2に過失はないと主張した。

  • ① フォークリフトが構内で走行する場合には、フォークリフトの走行範囲の枠内(当時、黄色で表示されていた)への立ち入りが禁止されていたにもかかわらず、Xが禁止に反して自己の作業に取り掛かった。
  • ② Xは、フォークリフトがバック・ブザーを鳴らさないで走行していたのを知っていた。
  • ③ 衝突場所が黄色の表示線の枠内であった。

イ 裁判所の判断

しかしながら、以下の理由により被告らの主張は採用できないと裁判所は判断した(※)

※ 証拠によって事実関係が明らかだと裁判官が確信を持つことができなければ、判決では証明をする責任のある側に不利益な判断をすることになる。そして、原告が不法行為によって損害賠償責任を追及する場合、一義的には「被告に過失があったこと」の証明責任は原告の側にある。

しかし、この場合は、被告側の過失(混在作業において、バック・ブザーを鳴らさずに後方確認が不十分なままフォークリフトを走行させた)が、すでに明らかになっているのである。この被告の主張は、そのことへの反証なので、裁判官の確信を妨げさえすればればよいのだが、証明する責任は被告側にあるのである。そして、被告側は①と③については証拠を提出することができなかったのであろう。

  • ① 衝突地点が枠線内かどうか定かではない。
  • ② Xがフォークリフトの走行警笛がないことを知っていたとしても、被告Y2の注意義務が軽減されるものではない。
  • ③ フォークリフトの走行中は荷物の仕分けや荷捌きが禁止されていたかどうかも定かではない。
  • ④ 作業員とボックスの混み合う中をY2が後方を確認せずに、ブザーも鳴らさずフォークリフトを走行させたのは過失が認められるというべきである。

ウ 結論

それ故、Y1社と運転者Y2とは、Xが被った怪我による損害賠償請求について連帯して不法行為責任を負い、当時支店長であったY3は、構内現場の監督者として責任を同様に被告Y2と連帯して負うべきものというべきであると裁判所は判断した。


(3)賠償額についての判断

ア 損害額

Xの損害額は以下の通りに認定された。これをみると、治療費が比較的低額であるにもかかわらず、後遺障害の慰謝料や、後遺症逸失利益がかなり高額であることが分かるであろう。労働災害の発生時にはそれほどでもないと思ってきちんとした対応をとらないと、後になって重大な事故に発展するという典型的な例である。

治療費 : 5万円
傷害慰謝料(通院慰謝料) : 100万円
休業損害と逸失利益 : 71万2692円
後遺障害慰謝料 : 390万円
後遺症逸失利益 : 967万9320円
弁護士費用 : 140万円
合計 : 1674万2012円

イ 過失相殺についての判断

被告らは、Xに大幅な過失相殺がなされるべきであると主張していた。これについて裁判所は以下のように判断した。

  • ① まず、原告がフォークリフト走行の黄色の枠内に入ったこと及び衝突地点が当該枠内であったとの被告らの主張については、認定できる証拠はなく、原告の過失を認めることは困難であるといわざるを得ない。
  • ② フォークリフトの運転と荷捌き等の作業員の混在がどの程度禁止されていたかは明確でなく、Xと運転者Y2とはお互いに今回が初めてではない上、Xによれば以前から作業員がいる中でY2がフォークリフトを運転しており、Y2が特にこの日にXが作業していることに違和感を感じた様子がなく、混在状態は以前からあったものと推測される。
  • ③ そして、数トンの重量のあるフォークリフトと作業員が同時に構内で動いている場合に、衝突地点がフォークリフト走行枠の表示の内外かで過失の有無や度合を決したり、左右するのは適当とは思われない。
  • ④ ただ、Xも後方を確認せずにY2が運転するフォークリフトと衝突したことを考えると、フォークリフトが電動であった上、バック・ブザーが鳴らされていなかったために、Xがフォークリフトに気付かなかったとしても、同人の過失は1割程度と認めるのが相当である。

4 原告の訴えに対する裁判所の判断

裁判所は、以上の判断から、原告の被告らに対する請求は、1520万7811円及びこれに対する不法行為の日から民事法定利率(※)の支払いの限度で理由があるとして認容した。なお、先述したY3らの暴行へ共謀については、Xが主張しているだけで証明がされていないとして認めなかった。

※ 民法に規定があり、年率5%である。かなり高率なので裁判が長引くとかなりの金額になる。このため、交通事故裁判などでは、被告側が妥当と考える金額を供託してしまうことがある。

なお、判決の主文は、Y1社、Y2、Y3は連帯して1520万7811円を支払えと言っている。この「連帯して」という意味は、原告はY1社、Y2、Y3の誰に対しても全額を請求できるということである。請求は、3人に対して順番に行ってもよいし、同時に請求してもよい(※)。被告は、自分は3分の1だけ支払うから残金は他の被告に請求しろとはいえないのである。

※ もちろん各人から1520万7811円を受領できるわけではなく、誰かがいくらかを支払えば、その後は残金を請求できるのみである。

本件で、実際にフォークリフトを運転していた労働者が支払いの請求を受けたかどうかまでは分からない。しかし、会社の指示を受けていたとはいえ、ブザーを切って運転するような不安全行動をとって事故が起きれば、たとえ一労働者にすぎなくても、1千万単位の損害賠償の請求を受けることもあるということである。


5 最後に

(1)この判決から何を学び取るか

産業保健の実務家としてはここからどのような教訓を学びとるべきであろうか。

ア 事故が起きたときの対応等

民事訴訟では、事実関係が十分に証明されなければ、挙証責任を負う側(通常は証明をしようとする側)に不利益な判定をすることになる。

この事件では、運転者Y2の過失に関する事実関係についての被告の主張について、「衝突地点が枠線内かどうか定かではない」「フォークリフトの走行中は荷物の仕分けや荷捌きが禁止されていたかどうかも定かではない」として認められなかった。このことは、数年を経過した労働災害事件の訴訟における、事実関係の立証行為の困難性を示すものだということができよう。

おそらく原告の側も徹底的に争ったのであろう。争いになってしまえば衝突地点がどこかについては、水掛け論である。2年近く経過してから証人や証拠を出そうとしてもできるものではない。また、荷捌きの禁止についても、禁止したことについての文書による記録がなかったのであろう。

このことから得られる教訓は、災害が発生したときは、社内で事実関係を調べておくべきだということである。そして、調査者や被災者の署名入りの記録を残しておくべきなのである。このときは、会社側に有利なことも不利なことも記録しておく必要がある。有利なことだけを記録しておくようなことをすると、全体に矛盾が出て信用されなくなるからである。なお、重大な災害の場合には、CSRの観点からも、第三者による調査を行うことも考えた方がよい。

本件ではD社は虚偽の死傷病報告を提出しているが、このようなことはいわゆる労災隠しであり、労働安全衛生法違反であるのみならず、民事訴訟になったときにも決して有利にはならないことを理解すべきである。

また、禁止事項等については、作業手順書を作成して労働者に周知し、手順書の記録を残しておくべきであった。もっとも、バック・ブザーを切るように指導しているようでは、実際に「フォークリフトの走行中は荷物の仕分けや荷捌きが禁止されていたかどうかも定かではない」のかもしれないが。

イ 事業者の注意義務について

判決文では、「Xがフォークリフトの走行警笛がないことを知っていたとしても、被告Y2の注意義務が軽減されるものではない」としているが、これは当然であろう。このような主張が許されるなら、事業者の違法行為が行われると、労働者がそのことを知っていただけで過失相殺が認められるということになりかねないからである。

このことは、有害な化学物質のSDSの内容や、リスクレベルが高いというリスクアセスメントの結果を労働者に周知したからといって、実際に職業性疾病が発生したときに、「労働者も承知の上で働いていたのだから過失がある」などという主張が認められないことが当然であることと同様であろう。

危険・有害だということは教えたのだから、あとは知らないなどとは到底言えないのである。


(2)労働者と事業者の責任の分担について

最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転には、技能講習を修了していることが必要である(※)。フォークリフトの危険性については一定の知識があるはずだから、バック・ブザーを切るようなことをすれば危険なことは承知していたであろう。繰り返しになるが、たとえ事業者から指示されても、労働者の側もそのようなことをするべきではない。

※ 最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転をさせる場合には、事業者は特別教育を受けさせることが必要である。ただ、現実には1トン未満のフォークリフトは、あまり使用されていない。

だが、だからといってそのことのゆえに、違法な指示をした事業者の責任が軽減されるわけではないこともいうまでもない。また、この場合は第三者が被災しているが、事業者の指示によって不安全行為をした労働者本人が被災したという場合には、過失相殺はされない可能性が高いといってよい。

ところで、この事件は、法律的にはそれほど難しい事件ではない。労働者に不安全な行為があって事故が起きたという事実関係が認定できれば、労働者だからという理由で民事賠償の責任を免れることはなく、判断に迷うようなものではないとも考えられるからである。そのためか、この判例は判例集にも未登載である。

そして、本件の場合、この判決は法的には正しい判断かもしれないが、事業者の指示で労働者が不安全行動をとったという場合の事業者と労働者の責任をどのように分担するかについて、もう少し踏み込んだ判断をするべきではなかったかとは思える。

労働者としては事業者の指示に反することにはかなりの勇気を必要とするものである。指示をした事業者と、指示に従って不安全行動をした労働者に同様な責任を負わせたことには、やや疑問を感じないでもない。


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