衛生管理者試験に短期合格するための効率的な学習方法を示しています。
衛生管理者試験の受験者は仕事を抱えていることが普通ですし、職場に資格者がいなければ短期で合格しなければならない場合もあります。
もちろん衛生管理者の職務を適切に行うための知識を得ることも重要ですが、残念ながら試験の合格のための知識とは必ずしも一致しないのが実情です。
職場の労働衛生のために必要な知識を身に付けることとは別に、本稿では短期合格のためのノウハウを解説しています。
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衛生管理者試験は過去問から繰り返し出題される
執筆日時:
1 過去問は繰り返し出題されている
(1)第1種衛生管理者試験から例をとると
例えば、2020年4月に公表された第1種衛生管理者試験の問23をみてみよう。
問23 衛生委員会に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
(1)衛生委員会の議長は、衛生管理者である委員のうちから、事業者が指名しなければならない。
(2)衛生委員会の議長を除く全委員は、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
(3)衛生管理者として選任しているが事業場に専属ではない労働衛生コンサルタントを、衛生委員会の委員として指名することはできない。
(4)当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するものを衛生委員会の委員として指名することができる。
(5)衛生委員会は、毎月1回以上開催するようにし、重要な議事に係る記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
そして、直前の2019年10月に公表された第1種衛生管理者試験の問22は次のようになっていた。
問22 衛生委員会に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
(1)衛生委員会の議長は、衛生管理者である委員のうちから、事業者が指名しなければならない。
(2)衛生委員会の議長を除く全委員は、事業場の労働組合又は労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
(3)衛生委員会の委員として、事業場に専属でない産業医を指名することはできない。
(4)衛生委員会の付議事項には、労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関することが含まれる。
(5)衛生委員会は、毎月1回以上開催するようにし、重要な議事に係る記録を作成して、5年間保存しなければならない。
これを見れば分かるように、まったく同じ問題というわけではないが、2020年4月の(1)と(5)は、2019年10月の(1)と(5)と、表現が多少異なるだけで、記述されている内容は同じである。また、2020年4月の(2)も、2019年10月の(2)と実質的には同じと言ってよい。事前に2019年10月の問題を学習して、(2)の間違の理由が理解できていれば、2020年4月の(2)も間違いだと分かるのである。
次に、(3)であるが、実はこれも他の過去問に同じ肢があるのだ。2017年の4月公表問題の問22の(3)が、次のようになっており2020年4月公表問題の(3)と実質的に同じなのである。
(3)事業場に専属ではないが、衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントを、衛生委員会の委員として指名することができる。
(4)は過去6回分の問題中には同種選択肢はない。しかし、過去問を学習していれば、衛生委員会の委員に選任できる者については、毎年の過去問にあるのだから、過去問で問われている内容を理解していれば正しいと分かるであろう。
すなわち、2020年4月公表の問23については、過去問をきちんと学習しておくことにより正答できる問題なのである。
(2)過去問とまったく同じ問題が出題された例
次に2020年4月公表の問32を見てみよう。
問32 メタボリックシンドローム診断基準に関する次の文中の 内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満( A 脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では B cm以上、女性では C cm以上の場合である。」
A B B
(1)内臓 85 90
(2)内臓 90 85
(3)皮下 85 90
(4)皮下 90 85
(5)体 95 90
そして、2018年10月に公表された第1種衛生管理者試験の問34は次のようになっていた。
問34 メタボリックシンドローム診断基準に関する次の文中の 内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満( A 脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では B cm以上、女性では C cm以上の場合である。」
A B B
(1)内臓 85 90
(2)内臓 90 85
(3)皮下 85 90
(4)皮下 90 85
(5)体 95 90
すなわち、まったく同じ内容の問題が出題されているのである。過去問で、メタボリックシンドロームの診断基準が出題されていることを知り、その基準を覚えておけば正答できるのである。
2 過去問からの出題の比率は極めて多い
もちろん、過去問に全く類例のないような問題も出題されないわけではない。例えば、2019年4月公表の問40は、少なくとも2027年までの範囲では類問はない。しかし、合否基準は全体で6割(各科目ごとに4割で足切り)であるから、このような問題は「捨て問」として無視しても、合格することはできるのである。
私は、この原稿を執筆するまでに、サイトで過去問の解説を7回分執筆している。最初の1回分を作成するときは、もちろんすべて新たに書き起こしたのだが、次の回の解説を作成するときは5割程度は前回のものをそのまま利用できた。そして、最後の方になると、ほぼ過去問の解説をそのまま使用できたのである。そして、最後の回では過去6回分の原稿が、ほぼそのまま利用できたのである。
受験者の側から言えば、このサイトの過去問をきちんと理解しておけば、合格は十分可能だということである。ただし、過去問がそのまま使われることはそれほど多くはない。解答を丸暗記していても役には立たない。きちんと理解して、自分のものにしておく必要はある。