衛生管理者試験の勧め(1)




トップ
衛生管理者試験

労務管理系の資格試験に挑戦したいけれど、衛生管理者についてよく分からないという方に、衛生管理者試験に合格するメリットと、試験の範囲内容等について解説しています。

内容はすべて筆者の書きおろしです。柳川に著作権があることにご留意下さい。



衛生管理者とは

執筆日時:

最終改訂:

1 衛生管理者の職務

(1)衛生管理者とはどこにいるのか

このサイトを訪問してこの記事を読んでおられる方は、衛生管理者について基本的なことはお分かりだろう。しかし、よく知らないという方もおられるだろうから、まずは基本的なことから始めよう。

そもそも衛生管理者とは、どこにいるのだろうか。その答えは、労働安全衛生法(以下「安衛法(※1)」と略す。)と労働安全衛生法施行令(以下「安衛令」と略す。)に書かれている。安衛法第12条は、事業者(※2)に対して衛生管理者の選任を義務付けている。そして、安衛令第4条は、衛生管理者を選任するべきなのは、常時50人以上の労働者を雇用する事業場(※3)であると規定している。

※1 労働安全衛生法は、一般の法律の専門家は労安法と略記することが多いが、労働安全衛生の世界では安衛法と略記する。文献を読んだときに安衛法と書いてあれば労働安全衛生の分野の専門家が書いたもので、労安法と書いてあれば法律の専門家の書いたものだと思ってまず間違いない。

※2 事業者とは、会社形式の企業の場合は、会社そのものを意味する。厳密には、法人事業主の場合はその法人を指し、個人事業主の場合はその個人を指す法律用語である。社長個人のことではないので誤解しないように。

※3 事業場とは、これも法律用語であるが、その意味は、労働事務次官通達昭和47年9月18日発基第91号の第2の三「事業場の範囲」に示されている。やや分かりにくい表現ではあるが、要は、工場、店舗、事務所などのことで、(特殊な例外は別にして)地理的にみて一か所にまとまった企業の組織を指すと考えればよい。同一の場所にあるものは原則として一つの事業場であり、場所的に分散していれば原則として別の事業場ということである。

すなわち、日本国内で常時50人以上の労働者を雇用する、すべての工場や店舗などに必ず衛生管理者がいるはずなのである。そして、衛生管理者になるための要件は、本サイトの「衛生管理者となる資格・要件」にまとめてあるが、ほとんどの場合は、衛生管理者試験に合格した方がなっているのが現状である。

(2)50人以上の事業場では、衛生管理者の有資格者を確保しておく必要がある

しかも、衛生管理者は、特別な場合を別にすれば、その事業場に専属でなければならない(※1)。すなわち、その事業場に所属する者でなければならないのである。例えば、本社の従業員が、離れた場所にある店舗や工場の衛生管理者になることは原則としてできない(※2)

※1 さらに、500人以上の事業場では、少なくとも1人は専任でなければならない。専任の場合は、衛生管理の仕事のみを行う必要がある。

※2 なお、衛生管理者には労働衛生コンサルタントも選任することができるが、複数の衛生管理者を置かなければならない事業場では、衛生コンサルタントのうち1名は専属でなくともよいとされている。従って、外部のコンサルタント事務所の労働衛生コンサルタントが衛生管理者に就任することができる。労働衛生コンサルタントについては「労働衛生コンサルタント試験受験の勧め」を参照されたい。

こんなことを言うと、試験に合格している者がいない場合はどうするのかと思われるかもしれない。そのときは、事業者としては違反状態にならないためには誰かを試験に合格させざるを得ない。労働基準監督官の臨検監督があれば、衛生管理者を選任していないと、是正勧告書を切られることになる。是正勧告書に記載された期日までに選任できなければ、書類送検されて略式の訴訟手続きで罰金刑となるおそれもある。

従って、50人以上の労働者を雇用しているなら、なにがなんでも有資格者を専属で確保せざるを得ない。すなわち、衛生管理者試験合格者を雇用しておかざるを得ないのだ。衛生管理者試験とは、それだけ重要な試験なのである。

(3)衛生管理者とは何をしているのか

では、それほど重要な衛生管理者とは、事業場で何をしているのだろうか。その答えも法律に書かれている。安衛法第12条(及び第10条)の規定により、事業者は衛生管理者に次の事項のうち、衛生に係る技術的事項を管理させなければならないのである。なお、5の(1)~(3)は安衛則第3条の2に定めてある。

【衛生管理者の職務】

以下の事項のうち、衛生(※)に係る技術的事項を管理する。

  1. 1 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
  2. 2 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
  3. 3 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
  4. 4 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
  5. 5 その他
  6. (1)安全衛生に関する方針の表明に関すること
  7. (2)リスクアセスメント及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
  8. (3)安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること

 上記事項のうち、「安全」の部分は除いて考えてよい。

すなわち、その事業場で働く労働者の心身両面の健康管理や、職業性疾病の防止についての技術的事項を管理するのが衛生管理者なのである。事業者の指揮の下で、労働衛生に関する管理業務を引き受けるのである。

一部に誤解があるが、産業医の下位に位置付けられているわけではない。むしろ、産業医に対して、必要な事項を依頼する立場にあると言ってよい。





プライバシーポリシー 利用規約