第1種衛生管理者試験 2022年10月公表 問16

化学物質による健康障害




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年10月公表問題 問16 難易度 化学物質による健康障害に関する基本的な知識問題。頻出事項であり、正答できなければならない。
化学物質による健康障害

問16 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンと強く結合し、体内組織の酸素欠乏状態を起こす。

(2)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(3)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻などがみられる。

(4)塩化ビニルによる慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸しょく症などがみられる。

(5)ふっ化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。一酸化炭素による中毒は、一酸化炭素が血液のヘモグロビンと結合してしまい、酸素がヘモグロビンと結合することを妨害し、血液が酸素を運搬する能力が減少することによって起きる。

(2)正しい。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(3)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(4)誤り。塩化ビニルによる慢性中毒で、慢性気管支炎、歯牙酸しょく症などがみられるという報告はない。

なお、塩化ビニルによる慢性中毒では、発がん性(肝臓がん、血管肉腫、脳及び中枢神経系のがん、肺がん)、肝機能障害、肝臓腫大、肝脾腫大、肝線維症、門脈性高血圧症などがみられる。

(5)正しい。ふっ化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

2022年10月05日執筆