第1種衛生管理者試験 2022年10月公表 問15

作業環境における有害要因




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年10月公表問題 問15 難易度 作業環境中の有害要因に関する基本的な知識問題。頻出事項でもあり、正答できなければならない。
作業環境中の有害要因

問15 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)低温の環境下では、手や足の指などの末梢部において組織の凍結を伴わない凍そうを起こすことがある。

(2)電離放射線による造血器障害は、確率的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると発生率及び重症度が線量に対応して増加する。

(3)金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生し、数時間にわたり発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)窒素ガスで置換したタンク内の空気など、ほとんど無酸素状態の空気を吸入すると徐々に窒息の状態になり、この状態が5分程度継続すると呼吸停止する。

(5)減圧症は、潜かん作業者や潜水作業者が高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた炭酸ガスの気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻などの症状がみられる。

正答(1)

【解説】

本問は、(1)及び(2)は、過去 10 回で、まったく同じ肢は出題されていない。初出の肢が2つあったため、やや難問だったようだ。

(1)正しい。凍瘡とは「しもやけ」のことだと知っているかどうかの「用語問題」である。気温が低下すると、手や足の指など末梢に、皮膚の赤みや腫れ、水ぶくれ、かゆみなどの症状が現れる。これが凍瘡である。

(2)誤り。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。受験対策としては、次のように覚えておけばよい。

  • 確定的影響
  • 線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。
  • 急性影響、白内障及び不妊
  • 確率的影響
  • 線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。
  • 挽発性影響(白内障及び不妊を除く。)

※ 被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを挽発性影響と呼ぶ。

そして、電離放射線による造血器障害(白血病及び再生不良性貧血を除く。)は、確定的影響である急性影響の一つである。なお、急性影響には、造血器障害、消化管障害、神経血管障害などがある。

(3)誤り。金属熱は、金属熱は、鉄、アルミニウムなどの金属を溶融する作業などで金属のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生するものではない。

(4)誤り。ほとんど無酸素状態の空気を吸入すると、肺胞毛細血管中の酸素濃度より肺胞内の酸素濃度の方が低くなる。こうなると、肺胞のガス交換が不可能になる。このため、酸素濃度の低い空気は一呼吸するだけでもきわめて危険である。徐々に窒息の状態になるわけではない。

(5)誤り。減圧症は、潜かん作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻などの症状がみられる。

炭酸ガスが気泡化して起こす症状ではない。

2022年10月05日執筆