第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問13

化学物質の常温・常圧での空気中の状態




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合格

 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年10月公表問題 問13 難易度 ガスと蒸気の区別は難しい面もある、有害物の常温における状態は基本的な知識。正答したい。
化学物質の物性

問13 化学物質とその常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

ただし、「ガス」とは、常温・常圧で気体のものをいい、「蒸気」とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。

(1) ホルムアルデヒド ・・・ ガス
(2) 塩化ビニル ・・・ ガス
(3) 二硫化炭素 ・・・ 蒸気
(4) 二酸化硫黄 ・・・ 蒸気
(5) アクリロニトリル ・・・ 蒸気

正答(4)

【解説】

蒸気とガスについては様ざまな定義があり、定義によってはどちらに該当するかが異なることもある。そのため、本問は但書でガスと蒸気の定義を示している。そして、常温・常圧で液体又は固体の状態にならないものは蒸気ではないと言っている。常温・常圧で気体となっているものは、ガスであって蒸気ではないのである。従って、沸点が常温よりも高いか低いかによって分類すればよいことになろう。

また、揮発とは物体の状態が液体から気体に変化することで、昇華とは固体から気体に代わることである。日常用語の「蒸発」は液体表面から気化する現象で、蒸気圧が気圧よりも高くなると「沸騰」して液体内部からも気化するようになる。

なお、ミストや湯気は液体であり、ヒュームは固体であって蒸気ではない。

(1)正しい。ホルムアルデヒドの沸点は約-20℃であり、ほぼ無色の刺激臭のあるガスである。

(2)正しい。塩化ビニル(モノマー)は、常温・常圧ではガスとして存在する。

なお、労働衛生の世界で「塩化ビニル」と言えば、モノマーのことを指すことは常識として知っておくこと。水道管などの材料の塩化ビニルはポリマーである。ただし、ポリマーであっても、粉状のものには有害性はあり、TLV-TWAは1g/m3(レスピラブル粒子として)とされている。

(3)正しい。二硫化炭素は、常温・常圧では液体として存在する。蒸発速度は酢酸ブチルを1としたとき、22.6となる。従って、二硫化炭素は常温・常圧の空気中で蒸気として存在する。

(4)誤り。二酸化硫黄の沸点は約-75.5℃で、沸点は7-10℃であり、常温では無色の気体である。なお、製品としては圧縮液化ガスとして提供される。

(5)正しい。アクリロニトリルの融点は約-82℃で、沸点は77.3℃であり、常温では液体である。蒸気圧は109mmHgであり、空気中では蒸気として存在し得る。

2020年12月28日執筆