第1種衛生管理者試験 2017年4月公表 問15

化学物質による健康障害




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合格

 このページは、試験協会が2017年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年04月公表問題 問15 難易度 化学物質による健康障害に関する基本的な内容。頻出事項でもあり、正答できなければならない。
化学物質による健康障害

問15 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一酸化炭素による中毒では、ヘモグロビン合成の障害による貧血、溶血などがみられる。

(2)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(3)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺などがみられる。

(4)二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕症などがみられる。

(5)弗化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯がみられる。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。一酸化炭素による中毒は、一酸化炭素が血液のヘモグロビンと結合してしまい、酸素がヘモグロビンと結合することを妨害し、血液が酸素を運搬する能力が減少することによって起きる。ヘモグロビンが合成されることの障害が起きるわけではない。

「ヘモグロビン合成」という用語が、「ヘモグロビンが合成されること」を意味し、「ヘモグロビンと酸素が結合すること」を意味する言葉ではないと気付けば、あとは常識問題であろう。なお、「溶血」とは赤血球が崩壊してヘモグロビンが遊離し、周囲の液体に浮遊することである。

(2)正しい。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(3)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(4)正しい。二酸化硫黄(亜硫酸ガス)による慢性中毒では、歯牙酸食症、慢性気管支炎、喘息製気管支炎、胃腸障害、結膜炎、鼻咽頭炎、味覚・嗅覚の異常、食欲不振、体重減少、易疲労感などがみられる。

(5)正しい。弗化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

2020年08月08日執筆