第1種衛生管理者試験 2017年4月公表 問14

作業環境中の有害因子による健康障害




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合格

 このページは、試験協会が2017年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年04月公表問題 問14 難易度 幅広い知識を問うているが、基本的な問題だといえる。正答できる問題である。
物理的因子

問14 作業環境における有害因子による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)電離放射線の被ばくによる発がんと遺伝的影響は、確率的影響に分類され、発生する確率が被ばく線量の増加に応じて増加する。

(2)熱虚脱は、暑熱環境下で脳へ供給される血液量が増加したとき、代償的に心拍数が減少することにより生じ、発熱、徐脈、めまいなどの症状がみられる。

(3)金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻痺することにより発生し、長期間にわたる発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)凍瘡は、皮膚組織の凍結壊死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。

(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを挽発性影響と呼ぶ。受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響で、他は確率的影響だと覚えておけばよい。

そして、電離放射線による発がんと遺伝的影響は挽発性影響であり、確率的影響に分類される。

(2)誤り。熱虚脱は、暑熱環境下で皮膚へ供給される血液量が増加したとき、代償的に心拍数が減少することにより生じ、心拍は頻脈で微弱、めまいや血圧低下などの症状がみられる。発熱はほとんどみられない。

(3)誤り。金属熱は、金属の溶融作業やアーク溶接作業などで亜鉛や銅などの金属ヒュームを吸入したときに発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)誤り。凍瘡とは、普通の「しもやけ」のことである。氷点下のような極寒条件よりも、気温5℃前後の環境や、昼夜の気温差が激しいときなどに起こる。

また、皮膚組織の凍結壊死を伴う場合は「凍傷」と呼ばれ、「しもやけ」とは異なる。気温が-4℃以下に長時間晒されたような場合に発生する。

(5)誤り。潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。「酸素」ではない。

2020年08月08日執筆