地方公務員の労働災害・職業性疾病の推移




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怪我をした女性

※ イメージ図(©photoAC)

地方公務員の公務災害(労働災害)の発生状況は一般にはあまり知られていません。

しかし、OECD の「Government at a Glance」によると、日本の被雇用者全体に占める公務員(国家公務員を含む。)の割合は 5.9%(世界全体では 17.7%)とされており、公務員のうち地方公務員は約8割とされています。

すなわち、被雇用者全体の20人に1人は地方公務員ということになります。

本稿では、地方公務員の公務災害・職業性疾病の発生件数の推移を、脳・心臓疾患や精神障害を含めてグラフによって示しています。また、合わせて、地方公務員の長時間労働者の割合や、その把握状況、メンタルヘルス対策を行う地方公共団体の割合なども示しています。




1 はじめに

執筆日時:


(1)地方公務員の公務災害発生件数の推移

一般の労働者の労働災害統計は、労働者死傷病報告に基づいて厚生労働省が取りまとめている。地方公務員(非現業)の場合は労働者死傷病報告は各地方公共団体の人事委員会等に提出される(※)ので、死傷病報告に基づいて全国統一の統計を作ることはできない。

※ 詳細は本サイトの「地方公務員と安衛法の適用」を参照されたい。

地方公務員の全国統計は、公務災害の認定を統一的に行う地方公務員災害補償基金が認定した数値を公表している。最初に、地方公務員の公務災害(労働災害)発生件数の推移を示す。ここで、一般の労働災害の発生件数統計との違いに留意しなければならない。公務災害の統計と一般の労働災害の発生件数統計には次のような違いがある。

表 地方公務員の公務災害と一般の労働災害の統計の違い
内容 公務災害 労働災害
災害発生件数の定義 地方公務員災害補償基金が公務災害と認定した件数 厚生労働省が労働者死傷病報告によって把握した件数
年又は年度で計上される件数 その年度に公務災害として認定した件数を計上する その年に発生した災害のうち、翌年の4月8日までに報告された件数を計上する
計上する死傷災害の範囲 災害が発生して新たに療養(医療機関で治療)を開始した件数 発生した災害によって新たに4日以上休業した件数
統計を取る期間 原則として年度 原則として

従って、労働災害発生件数と公務災害発生件数は単純に比較の対象とすることはできない。死傷災害の発生件数の統計値は、一般に地方公務員の公務災害の方が見かけ上はかなり多くなる。

地方公務員の労働災害の発生状況

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死亡災害、死傷災害共に、過去30年程度の期間では減少傾向が続いており、とくに2006年から2009年にかけて死傷災害が急減していることが分かる。

なお、公務上死亡者数が2011年に急増しているのは、東日本大震災によるものである。


(2)職員区分別地方公務員の労働災害の発生状況

次に、地方公務員の死傷災害の職員区分別の発生状況を示す。

職員区分は、地方公務員災害補償基金定款別表第2の職員区分によるものであり、「義務教育学校職員」、「義務教育学校職員以外の教育職員」、「警察職員」、「消防職員」、「電気・ガス・水道事業職員」、「運輸事業職員」、「清掃事業職員」、「船員」及び「その他の職員」の9区分であるが、発生件数の少ない区分は「その他」に含めている。

職員区分別地方公務員の労働災害の発生状況

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発生件数は「その他」を除けば「義務教育学校職員」「警察職員」「義務教育学校職員以外の教育職員」の順となっている。


(3)認定事由別地方公務員の労働災害の発生状況

次に認定事由別の災害発生件数の推移を示す。ほとんどが負傷であることが分かる。一般の労働災害ではこのような統計は公表されていないが、仮に統計を取れば似たような数値(※)となるだろう。

※ 負傷に起因する疾病とその他の疾病で、地方公務員の場合その他の疾病の方が多いが、一般の労働災害では負傷に起因する疾病の方が多い。

認定事由別地方公務員の労働災害の発生状況

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2020年と2021年でその他の疾病が増加している。これについては詳細は後述するが、おそらく新型コロナによるものであろう。

また、負傷災害の認定事由別の内訳は次のようになっている。一般の労働災害では、とられない統計であるが、地方公務員の公務災害は、認定件数の統計なのでこのような統計がとられるのであろう。

認定事由別地方公務員の負傷による労働災害の発生状況

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(4)地方公務員公務災害認定件数(発生率)の推移

次に、地方公務員の災害発生率を見てみよう。死傷災害は千人率、死亡災害は10万人率である。

地方公務員公務災害認定件数(発生率)の推移

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労働災害の発生件数そのものはトレンドとしては減少傾向にあるが、発生率でみると増加傾向にあることが分かる。この間、一貫して公務員数が減少してきたためにこのような結果となるのであろう。

なお、死傷災害の年千人率は9人前後である。このままの状況で40年間(25歳~65歳)働くと仮定して、高次の項を無視して計算すると、

9人 × 40 年 = 360人

となり、公務員 1,000 人のうち 360 人が公務災害に遭うこととなる。このリスクは、容認できるレベルではなく、さらなる減少へ向けた努力が望まれる。

なお、職員区分別の年千人率は次表のようになっている。

表 地方公務員公務災害発生率(千人率)
年千人率(年度)
2020 2021
義務教育学校職員 7.50 8.14
義務教育学校職員以外の教育職員 8.80 9.34
警察職員 12.04 11.61
消防職員 7.35 7.93
電気・ガス・水道 事業職員 4.02 3.72
運輸事業職員 7.24 6.94
清掃事業職員 23.32 21.32
船員 8.55 6.76
その他 8.89 9.20
合計 8.84 9.13

※ 一般財団法人 地方公務員安全衛生推進協会「公務災害の現況 ~令和3年度認定分~」(2023年3月)より

職種別で見ると、清掃事業職員がきわめて高く、警察職員がやや高いが、その他は大きくは変わらない。清掃業職員が多いのは、ゴミ回収車走行中の交通事故やゴミ回収車による災害が多いからであろうか。


(5)労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

国や地方公共団体の経費で雇用されていても、現業職員や単純労務職員、企業職員、独法職員の場合は、労働基準監督署等の監督権限が及ぶ(※)ため、労働基準監督署長に対して労働者死傷病報告が提出される。そのため、国と地方公共団体の区別はされていないが、これらの職員の労働災害は、厚生労働省から公表される労働災害統計に含まれている。

※ 詳細は本サイトの「地方公務員と安衛法の適用」を参照して頂きたい。

ただし、国又は地方公共団体の官公署で、社会公共のために主に権力によらない業務を行う事業所は、一般の産業と同様にその行う業務により、それぞれの産業に分類される。このため、公務という区分で統計が公表されるわけではない。

しかし、国又は地方公共団体の機関のうち、国会、裁判所、中央官庁及びその地方支分部局、都道府県庁、市区役所、町村役場など本来の立法事務、司法事務及び行政事務を行う官公署は「官公署」という業種区分で統計が公表されている。とは言っても、本来の立法事務、司法事務及び行政事務を行う官公署の職員の多くは、労働者死傷病報告の対象とはならない。現実には、労働災害統計の「官公署」という業種区分に含まれるのは、これらの職員のうち単純労務職員の災害ということになる。

発生件数は少なくなるが、次にグラフを示しておく。高齢の職員が建物の中で転倒したり、無理な動作で身体を傷めたりといったケースが多いようである。

【官公署】の労働災害の発生状況

型別労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

型別

起因物別労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

起因物別

年齢別労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

年齢別

規模別労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

規模別

月別労働者死傷病報告による「官公署」の災害発生状況

月別

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2 職業性疾病の発生状況

(1)「その他の疾病」による公務災害認定件数の推移

次に地方公務員災害補償基金公務災害の認定事由別等件数一覧表の各年版によって「その他の疾病」についての統計を示す。なお、ここにいう「その他」とは、公務上の負傷による疾病以外の疾病であることを意味している。

「その他の疾病」による公務災害認定件数の推移

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この統計では「職業病」という項目があるが、これは労働災害防止の関係者にはかなり違和感があるのではないだろうか。公務災害として認められたのであれば、そのすべての疾病が「職業病」(※)だと感じるのが常識的だろう。

※ 労基法、労基則、安衛法、安衛令、安衛則及び労災保険法には「職業病」という言葉は用いられていない。これに当たる言葉としては、「業務上の疾病」という用語があるが、安衛法令ではこの用語も使われてはいない。

しかし、この統計には「職業病」が何を意味するのかについての説明がない。公務災害の認定基準では、俗称として「地方公務員災害補償法施行規則別表第1第2号から第9号の疾病」を「職業病」とか「職業性疾病」と呼ぶことがあるが、これとも異なるようである。

【公務上の疾病の認定基準による公務上の疾病の分類】

平成15年9月24日地基補第153号(最終改正:平成30年4月1日地基補第 80号)「公務災害の認定基準について」では、公務上の疾病を次のように分類して判断基準を定めている。

【公務上の疾病の分類】

  • 地方公務員災害補償法施行規則別表第1第1号の疾病(公務上の負傷に起因する疾病)
  • 地方公務員災害補償法施行規則別表第1第2号~第9号の疾病(職業病(職業性疾病))
  • 地方公務員災害補償法施行規則別表第1第10号(その他公務に起因することが明らかな疾病)

ここで、職業病(職業性疾病)とあるのは俗称であるが、例えば沖縄県の「認定基準について」によると「公務上の負傷に起因する疾病」とは「公務上の負傷が原因となって新たに発生した疾病、又は著しく増悪した疾病」であり、職業病(職業性疾病)とは「特定の有害因子により発症することが医学的に証明されている疾病」とされている。

従って、2018年以降に「職業病」が急増している原因ははっきりしない。2020年後の「職業病」の急増は新型コロナ肺炎によるものが多いと思われる。


(2)脳・心臓疾患の地方公務員の公務災害補償状況の推移

次に、脳・心臓疾患の地方公務員の公務災害補償状況の推移を次図に示す。一般の労働災害に比較すると、死亡の割合が高いように思える。

脳・心臓疾患の地方公務員の公務災害補償状況の推移

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なお、これに関連する情報として、地方公務員と一般の労働者の有所見率の推移(※)を次に示す。

※ 地方公務員の有所見率は、一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況 調査結果」によった。一般労働者の有所見率は、厚生労働省「定期健康診断結果報告」による。

定期健康診断における有所見率(地方公務員と一般労働者)

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これを見れば分かるように、地方公務員は一般の労働者よりも20ポイント近く有所見率が高いのである。定期健康診断は安衛法に基づいて行われているので、健診項目は同じはずであり、統計の取り方に原因があるとは考えにくい(※)

※ 一般の労働者の場合、法定外健診項目の有所見率は除いて計算されることになっているが、地方公務員の場合に法定外健診項目を除いているのかどうかが、公表資料に明記されていない。従って、地方公務員の場合は、法定外健診項目を含めて算定されている可能性が否定できないが、統計の趣旨から考えにくい。

地方公務員の有所見率が20ポイントも高くなる理由ははっきりしない。地方自治体では女性が婚姻や出産を原因として離職する割合が、一般労働者よりかなり低いことは容易に想像がつく。従って、地方公務員の方が平均年齢が高くなることが原因かもしれない。

また、公共交通機関の発達した都市部と自家用車で移動することの多い農村部では、都市部の方が健康診断の有所見率が低くなることはよくしられている。地方公務員は一般の労働者よりも農村部に居住しているものの割合が高いことも一因かもしれない。

いずれにせよ、結果的に地方公務員の有所見率が一般労働者より高いことは事実であり、過労死のリスクは高いと考えられる。


(3)精神障害等の地方公務員の公務災害補償状況の推移

次に、精神障害等による地方公務員の公務災害補償状況の推移をみてみよう。一般労働者とほぼ同様な動きをしているが、一般労働者に対して死亡の割合が高いようである。

精神障害等による地方公務員の公務災害補償状況の推移

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3 地方公務員の過労死等の対策のために

(1)過労死した地方公務員の労働時間の実情

地方公務員の2021年度の過労死事案について、認定の原因を労働安全衛生総合研究所の報告書(※)でみると、長時間労働が原因とされたものが多い。とりわけ発症前1月、発症前6月の労働時間が認定の原因となっている。

※ 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所「令和4年度 地方公務員の過労死等に係る公務災害認定事案に関する調査研究事業調査研究報告書」(2023年3月)

精神障害等による地方公務員の公務災害補償状況の推移

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2021年度の過労死事案全体の発症前1か月間の所定外労働時間は92.5 時間(2020年度 94.2 時間)、発症前6か月間の所定外労働時間の平均は 67.3 時間(2020年度 68.5 時間)となっている(※)

※ かなり低いと思われるかもしれないが、長時間労働を直接の認定理由としないものを含んでいる。

精神障害等による地方公務員の公務災害補償状況の推移

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現実に地方公務員の労働時間の実態は次のようになっている。

表 長時間労働者数と割合
職員数(人) 月45時間超100時間未満 月100時間以上
人数(人) 割合(%) 人数(人) 割合(%)
都道府県 3,175,453 209,842 6.61 24,055 0.76
指定都市 1,858,848 100,784 5.42 9,554 0.51
市区町村 7,628,951 334,835 4.39 34,521 0.45

※ 総務省「令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」(2022年12月)

所定外労働時間が月 100 時間を超える労働者の比率は少ないが、長時間労働者の数がかなりの数になっていることが分かろう。これらの労働時間の削減が急務と言うべきである。


(2)労働時間の把握の方法

また、地方自治体による労働者の労働時間の確認方法は次のようになっている。なお、労働時間の未把握は法令違反(安衛法第66条の8の3:罰則はなし)である。

時間把握の方法は、タイムカードによる記録、パーソナ ルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切 な方法(安衛則第52条の7の3)によるべき(※)であり、高度プロフェッショナル制度対象労働者を除く全ての労働者が対象(裁量労働、みなし労働を含む)である。

※ やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合は、自己申告による把握が考えられるが、その場合は、「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に沿った措置(対象労働者及び管理者への十分 な説明、必要に応じ実態調査と適宜補正、適正申告を阻害する措置の防止など)を全て講じる必要がある。なお、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合とは、例えば、労働者が事業場外において 行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握 する手段がない場合をいう。

表 労働時間の把握の方法を採用している地方自治体の割合

① 勤務管理者の現認による確認・記録

② タイムカード、IC カード、パソコンの使用時間等の客観的な記録による確認・記録

③ 職員本人からの自己申告(システム入力等)による確認・記録

④ 職員本人からの自己申告(紙媒体)による確認・記録

都道府県 29/47 41/47 40/47 19/47
指定都市 5/20 17/20 10/20 7/20
市区町村 539/1721 912/1721 647/1721 720/1721

※ 総務省「令和3年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」(2022年12月)

当然のことながら、もっとも信頼できるのはタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間等の客観的な記録(※)による確認・記録である。①、③、④の方法などは、まったくあてにならないと考えるべきである。

※ タイムカードやICカードなどは、その気になればごまかせるのではあるが・・・。なお、第2電通事件の高橋まつりさんについて、ICカードによる時間管理がごまかされていたという週刊現代の指摘東京新聞中澤記者の指摘があることを紹介しておく。

都道府県や指定都市の場合は、多くが客観的な時間管理を行っているが、市区町村となると半数程度である。ここをきちんとしないとサービス残業がはびこることになる。


(3)地方公務員のメンタルヘルス対策の状況

一方、地方自治体のメンタルヘルス対策の状況は、総務省によると次表のようになっている。

表 地方公務員のメンタルヘルス対策の実施状況

① メンタルヘルス不調による10万人当たり休務者数

② 休務者の有無(有りの自治体の割合)

③ 職員に対する研修の実施をしている自治体の割合

④ 管理職に対して研修以外の支援をしている自治体割合

都道府県 1,935 100.0 100.0 95.7
指定都市 2,257 100.0 100.0 100.0
市区 2,447 99.7 81.4 55.7
町村 1,312 75.8 46.5 36.6

⑤ 研修以外で実施している予防策のある自治体の割合

⑥ 管理職から職員へ定期的な面談をしている自治体割合

⑦ 組織外の相談窓口の活用をしている自治体の割合

⑧ ストレスチェックの活用を図っている自治体の割合

都道府県 100.0 91.5 100.0 100.0
指定都市 100.0 70.0 85.0 100.0
市区 95.3 63.4 57.0 98.1
町村 78.4 49.8 39.8 92.4

※ 総務省「令和2年度 地方公務員のメンタルヘルス対策に係るアンケート調査結果」」(2021年12月)

10万人当たりの休務者数は、都道府県、指定都市、市区の順に増えているが、これは組織の規模が小さくなるとメンタルヘルス対策が十分に行えなくなることが理由かもしれない。

逆に町村で休務者数の人数が少ないのは、組織の人数が少ないため休みたくても休めない状況があるか、休ませる余裕もなく辞めざるを得ない状況があるのかもしれない。ここはなんともいえないが。

一方で、メンタルヘルス対策は、ストレスチェックのような法定事項さえ 100 %になっていない(※)現状がある。ストレスチェックは実施するだけでは意味がないのだが、法定の事項を公的な機関である地方公共団体が実施さえしないというのはやや問題であろう。

※ これは労働者の実施率ではなく、地方自治体の実施率であることに留意するべきである。組織として実施しているが受けていない労働者が 7.6 %いるということではなく、実施していない自治体が 7.6 %あるのだ。


4 最後に

笑顔の女性

※ イメージ図(©photoAC)

昨今は、公務員に対して福利厚生を充実させるべきというと、必ず一部から批判が出る。しかし、住民へのサービスを行う公務員が危険有害な状況で働いていたり、長時間労働をしていたりしているようでは、結果的に住民へのサービスの質が低下することとなろう。

自治体労働者の労働条件の向上は、間接的には住民サービスへの向上につながるのである。また、公務員の労働条件を低下させれば、これは一般労働者の労働条件の低下にもつながることとなる。

まして、過労死や精神障害で公務災害が発生しかねない状況を放置することは許されないと考えるべきである。

もちろん、財政的に豊かな地方自治体ばかりではないということは分かる。少子高齢化のためにこの傾向は今後も続くだろう。そもそも日本という国家そのものが没落してゆく中で対応が困難という面もあろう。

しかしながら、日本を、そして地方を活性化させるためには、何よりも若い労働者に未来に希望が持てるようにする必要があるだろう。そのためには、公務員を含めた労働者の労働条件の確保が何よりも重要であると最後に指摘しておく。


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