KAZUⅠ経過報告書にみる過失の有無




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KAZUⅠ沈没前の状況

※ KAZUⅠ本件事故前の状況(知床遊覧船事故対策検討委員会 第7回委員会 資料4-1より)

2022年4月に(有)知床遊覧船が、遊覧船 KAZUⅠ の沈没事故を起こし、20 名が亡くなり、現在も6名の方が行方不明となっている悲惨な災害となりました。

この事件では、事故の当初から、ソフトウエア面(悪天候での出港指示、要件を満たさない運行管理者の存在)、ハードウェア面(無線装置の故障、好ましくない船体の改造、内海仕様の船舶の外洋での使用、船底の傷)の両面について問題点が指摘されていました。

さらに、会社社長による記者会見が事故後に行われず、ようやく開かれた会見の席では責任逃れと思われる発言に終始する一方で、派手なパフォーマンスを行うなど、対応が不誠実との声が被災者の関係者の間に上がっています。

この会社に対しては、6月6日に事業許可が取り消されるなど、行政罰が課されています。また、5月2日に業務上過失致死罪容疑での強制捜査が行われるなど、刑事事件としての捜査も始まっています。さらに、6月4日には「知床観光船事件被害者弁護団」が結成されるなど、民事面からの損害賠償請求の手続きも進められているようです。

このような中、国土交通省の知床遊覧船事故対策検討委員会が、12月15日に事故の経過報告書を公表し、新たなハードウエア上の問題点が明らかになりました。これが、刑事、民事両面にどのような影響を与えるかについて解説します。




1 ㈲知床遊覧船保有 KAZUⅠ の沈没事故の発生

(1)事故の経緯

執筆日時:

最終改訂:

KAZUⅠ沈没前の状況

※ KAZUⅠ(知床遊覧船事故対策検討委員会 第1回委員会 資料3より)

2022年4月23日、北海道斜里郡斜里町の㈲知床遊覧船が、自社保有の遊覧船KAZUⅠの沈没事故を発生させ、20 名が亡くなり現在も6名の方が行方不明となっている悲惨な災害を引き起こした。冒頭に当たり、亡くなった方のご冥福をお祈りするとともに、行方不明となっている方の一刻も早いご帰還を願いたい。

国土交通省知床遊覧船事故対策検討委員会の資料及び報道によると、事故の経緯は次のようなものである。

4月23日13時頃、KAZUⅠの帰港が遅れていることに不安を感じた他社の社員が、㈲知床遊覧船に問い合わせた上で、アマチュア無線でKAZUⅠと連絡を取った。それによって異常を知ったこの他社の社員が、13時13分に118番通報を行う(※)。これが海上保安本部への第一報となる。

※ 朝日新聞DIGITAL「「救命胴衣、着させろ」 知床観光船、無線から流れた切羽詰まった声」(2022年04月24日)、朝日新聞DIGITAL「118番通報、観光船からは一度きり 最初の通報は無線聞いた別会社」(2022年04月24日)による。

この時点で、㈲知床遊覧船の事務所の無線は故障しており、無線連絡を受けられない状況である。

KAZUⅠには、乗客大人22人、子ども2人の他、乗組員2人(内1名は船長)が乗船している。この時点では、浸水していることは判明しているが、自力航行が可能かどうかは分かっていない。KAZUⅠからは、同日、14 時 17 分ごろに最後の連絡があり(※)、その後、連絡をとることができなくなった。

※ 朝日新聞DIGITAL「知床の観光船、最後の連絡は午後2時17分 「浸水」通報の1時間後」(2022年04月23日)による。一方、知床遊覧船事故対策検討委員会「知床遊覧船事故の概要」(2022年05月11日)によると「午後2時頃、「KAZU I」から(有)知床遊覧船の事務所に「船首が30度ほど傾いている」と連絡。以後、「KAZU I」からの連絡は途絶える。」とされている。

16 時 30 分頃、海上保安庁の航空機が現場に到着し、捜索救助活動を開始する。また、自衛隊も捜索に加わったが、当日は船体及び乗客・乗員(要救助者)を発見できなかった。

4月24日から28日までに、民間船やロシアの協力もあり 14 名の乗客(要救助者)を発見したが、いずれも後に死亡が確認された。

4月29日には知床岬灯台から南西約14 ㎞ の地点で沈没している船体が確認される。しかし、その後も生存が確認された乗客・乗員はおらず、乗客24名・乗員2人の全員が死亡・行方不明となった。


(2)㈲知床遊覧船の問題点

ア 事故の第一報と救助までの救命措置の困難性

事故発生場所

※ 事故発生場所(知床遊覧船事故対策検討委員会 第1回委員会 資料3より)

図をクリックすると拡大します

この事件の特徴的なことは、事故直後から㈲知床遊覧船の体制や運行の実情などのソフトウエア面、さらには、無線の故障や保有する遊覧船のハードウエアの面など、さまざまな問題点が各方面から指摘されたことである。

私がこの事件を最初に知ったのは、知床半島の近くの船舶から浸水の報告があったという YAHOO!JAPAN のニュース欄の速報だった。しかし、その時点ではこのような大事故になるとは思ってもいなかった。

そもそも事故の起きた地点は沿岸地域であり、観光船の行きかうことで有名な海域である。浸水して沈没の危険があれば、近くの船舶が直ちにかけつけて救助に当たるだろう。救助が間に合わなかったとしても、よほど急速に沈没しない限り救命ボートに乗り移る余裕はある。北海道とはいえ、4月なら救命ボートの上で凍死するようなこともないだろう。そのときはそう思った。

ところがそうではなかったのだ。その日(23 日)は天候が荒れており、近くに船舶はほとんどいない状況だった。先述したように、KAZUⅠからの最後の連絡は、14 時 17 分である。約2時間後の 16 時 30 分頃、海上保安庁の航空機(ヘリコプタ)が現場に到着して捜索が始まった(※)。しかし、その時点では、KAZUⅠがいるはずの海域に船影はおろか、生存者やKAZUⅠの痕跡さえ見つけることはできなかったのである。

※ 朝日新聞DIGITAL「波が高く、漁協は救助に向けて待機 北海道・知床沖の遊覧船「浸水」」(2022年04月23日)によると、北海道斜里町のウトロ漁業協同組合は、「海上での救助に向けて出発の準備はしているが、現地の海は波が高く、二次被害の恐れがあるため、23日午後4時時点で待機をしている状態」だったという。

また、KAZUⅠには、救命ボートも救命筏も搭載されてはいなかった。救命胴衣の準備はあったものの、当時事故現場の海水は4℃であった(※)とされる。これは、北海道のような寒冷地の観光船として、致命的な欠陥というべきである。これは、法令違反があるかどうかの問題ではない。乗客・乗員の生命を守るための必要な措置がとられていなかったということなのだ。

※ 斎藤秀俊「知床観光船海難事故について現時点で分かっていること」、及び、朝日新聞DIGITAL「強風、海水温4度の知床沖 関係者「海に落ちれば、命の危険」」(2022年04月23日)による。


イ ㈲知床遊覧船の問題点が浮き彫りに

(ア)出港判断

事故発生の直後から、報道機関が㈲知床遊覧船の管理上の問題を指摘し始めた。最初は、そもそも、なぜKAZUⅠは、漁船や他の会社の遊覧船が救助に向かうことさえできない荒天に、単独で海に出ていたのかという疑問である。

これについて、㈲知床遊覧船の遊覧船は、他の遊覧船業者が出向を見合わせるような荒天でも出港することがあると、多くの報道機関が報じている。NHKは、KAZUⅠと同じ小型の観光船を知床で2003年から運航している会社の社長の証言として、「(㈲知床遊覧船が=引用者)天候を踏まえてほかの3社が出港を見合わせるなかでも運航したり、途中で折り返すことを申し合わせても知床岬まで向かったりすることが1シーズンで5、6回はあった」「危険な運航をやめるよう忠告しても聞かないときがあった」などと報じている。

このことは、「知床遊覧船事故対策検討委員会中間取りまとめ」(2022年7月14日)(以下「中間取りまとめ」という。)においても、「事故当日、運航基準に基づく発航を中止すべき条件(風速8m/s 以上、波高1m以上)に達するおそれがあったことが明らかであるにも関わらず、KAZUⅠの船長は発航を中止せず、かつ、運航管理者である社長は発航中止の指示を行わなかった」と指摘している。すなわち、安全を無視した運行が行われていたのである。

そればかりか、現場が出港は無理と判断しても、社長が出港を強要していたという報道(※)もある。これが事故の原因となっているとすれば、社長の責任は大きいといわざるを得ない。

※ NHK北海道NEWS WEB「運航会社元従業員が証言 安全教育・出航判断の実情」(2022年05月23日)、読売新聞オンライン「荒天予報の海、社長と船長「行ける」「荒れたら戻ればいい」…漁師の忠告に耳貸さず」(2022年05月22日)など


(イ)運行管理者の要件等

また、運行管理者である社長が、運行管理者としての要件を満たしていなかった可能性も指摘されている。これは、中間とりまとめにおいても、「同社は、運航管理者の資格要件について虚偽の届出を行い、安全管理体制の要となる運航管理者による運航管理の実態が存在しない状態となっていた」とされている。運行に必要な知識の欠ける社長が、危険な出港を指示し、その結果の事故だとすれば国の運行管理者制度そのものの信頼性が問われよう。

※ 日本経済新聞「知床事故の観光船社長、運航管理者の要件満たさぬ可能性」(2022年05月05日)

しかも、運行管理者が船の運航中に事務所を離れる場合、補助者を配置しなければならないにもかかわらず、補助者を配置せずに事務所を離れていたとの指摘もある。事実とすれば、責任者たる社長が、事故防止や事故発生時の対応についての責任を放棄していたというべきである。

※ 読売新聞オンライン「知床観光船「運航管理補助者」定めず、社長不在は違法…国交省は処分検討」(2022年05月06日)


(ウ)無線の故障

さらに驚くべきことは、㈲知床遊覧船の無線装置が故障していたという事実である。

※ 読売新聞オンライン「運航会社の無線設備、壊れて観光船と交信できず…別の会社が「救命胴衣着せろ」の声聞き通報」(2022年04月27日)による。

KAZUⅠと㈲知床遊覧船は携帯電話で連絡するしかない状態だったのである。しかし、形態電話はKAZUⅠの航路では繋がらないことがあるのだ(※)。これでは、緊急時に会社側がなんらかの対応をすることも困難になる。事実、海上保安庁への最初の通報は、先述したように他社の職員が行っている。

※ 知床遊覧船事故対策検討委員会「事故調査の過程で得られた情報の提供」(2022年09月28日)による。


(エ)その他

また、KAZUⅠは瀬戸内海という内海を航行する仕様で、波の影響が大きい知床のような外海で使用するのには適さないという指摘(※)もある。だとすると、そもそもかなり事故に遭うリスクの高い船だということになろう。

※ 朝日新聞DIGITAL「不明の観光船、もともとは瀬戸内海の仕様 関係者「よく知床で…」」(2022年04月27日)による。

しかも、㈲知床遊覧船による改造のため、さらに事故リスクが高まったとの指摘さえある。船底部などに改造を行い、エンジンを2基から1基に減らしていたというのだ。今回の事故と因果関係があるかどうかは不明だが、安全よりも効率を優先させた同社の体質が現れているといえよう。

※ 共同通信「知床、エンジン減らし船底改造 専門家「不適格な部分多い」」(2022年06月11日)による。

さらに、㈲知床遊覧船が過去に多くの事故を起こしていることも指摘されている。例えば、同社のKAZUⅢは2020年7月に衝突事故(※)を起こしている。

※ 運輸安全委員会「船舶事故調査報告書」(2021年03月24日)による。

また、KAZUⅠも2021年6月に座礁事故を起こしている。すなわち、過去に複数の事故が起きている以上、今後も事故の起きる可能性は予測できたはずなのである。にもかかわらず、同社が管理面、ハードウエアの面でこれだけの指摘を受けるということは、同社が安全をないがしろにしていたと言われてもやむを得ないのではないだろうか。


ウ ㈲知床遊覧船の会社社長の対応に批判

(ア)記者会見の遅れ

さらに、事故発生後の㈲知床遊覧船の会社社長の不誠実と思える対応が、批判に油を注ぐこととなる。同社長は 24 日と 25 日に海上保安庁などによる家族への説明に同席したのみで、乗客の家族に対して事故原因について説明をしなかった(※)。そればかりか、25 日午前の説明会の後は「雲隠れ」状態となってしまった。このためで、政府や斜里町からも説明をするよう要請される始末であった。

※ 時事通信社「乗客家族「きちんと説明を」 運航会社、ようやく会見へ 知床観光船事故・北海道」(2022年4月26日)による。


(イ)責任逃れ

ようやく 27 日に記者会見を行ったが、その説明でも、出港の判断について明確な説明をしようとしなかった。「条件付き運航」などという用語を持ち出し、引き返さなかったのは船長判断として責任を行方不明の船長に押し付けようとするなど責任逃れに終始し、世論の怒りを浴びた(※)

※ 中日スポーツ東京中日スポーツ「知床遊覧船社長は「船長判断」を連発 テレビ生中継に怒りの声続々」(2022年04月27日)などによる。

国土交通省は、これに対して「“条件付き運航”という考え方はない」と明言している。

※ 日テレニュース「国交省「“条件付き運航”という考え方はない」 運航会社社長の説明受け」(2022年04月27日)などによる。


(ウ)記者会見でのパフォーマンス

さらには、土下座をするという派手なパフォーマンスを行うなどの、不誠実としか思えない態度でも怒りを買うことになる。本人は、パフォーマンスをすれば同情が集まるとでも思ったのかもしれない。しかし、本当に謝罪の意識があるなら(※) 27 日までに、乗員の家族に対して真摯に謝罪を行うなど他にやるべきことがあるのだ。

※ 北海道ニュース「桂田社長 記者会見"前日"の通話記録「とりあえず謝罪はもちろんする」録音した人「反省の色が全くない」」によると、社長は会見の前日に「事実関係が、はっきり事故の原因がわかってないから、あまり言ってもしょうがないから、謝るだけになっちゃうと思うんですけど、とりあえず謝罪のほうはもちろんするんですけども(下線強調引用者)」と、知人に対して話したとされる。

また、FRIDAYデジタル「「国にも責任」…知床事故・遊覧船社長「強気主張」の呆れた理由」によれば、国交省が事業認可取消し処分に先立って行った聴聞の機会に提出した意見書の中で「事故の責任が当社のみにあるとするのはおかしい」という主張をしたとされる。どのような主張をするかは当人の決めるべきことではあるが、真摯に反省をしているとは思えない。

家族への謝罪さえせずに(※)土下座をしてみたところで、みせかけのポーズだとしか思えないのである。多くの乗客が行方不明になり、家族が不安感と絶望感に苦しんでいる状況で、最大の責任者がこのような不誠実なパフォーマンスを行ったことは、関係者に言い切れない苦しみを与えたのではないだろうか。

※ 北海道ニュース「「桂田社長が一度も個別に謝罪をしていない…」知床観光船沈没事故 乗客家族が会見へ 社長や国を批判」(2022年10月15日)によると、乗客家族は「(社長は=引用者)まだ一度も個別に謝罪をしておりません」と述べたとされている。

また、神戸新聞「知床観光船沈没で両親と弟が犠牲 長男、運航会社社長の対応に憤り「海のこと知らない」」(2022年05月03日)が、説明会の途中で笑いを見せた社長に対して家族から「笑うな」と批判を浴びたと報じていることを指摘しておく。


2 刑事上、民事上の責任の可能性

法律の女神テミス

※ イメージ図(©photoAC)

㈲知床遊覧船は、事故後の2022年6月16日に営業許可取り消し処分を受けており、同社は審査請求や取消し訴訟などは行っていない(※)ので、行政罰としては処分は終了している。

※ 朝日新聞DIGITAL「事業許可取り消し「受け入れる」 知床遊覧船社長がコメント」(2022年06月17日)による。状況からみて、審査請求や取消し訴訟を行っても処分が覆ることはなかっただろう。

刑事上は、社長に対する業務上過失致死罪の容疑での捜査がすでに始まっている。また、総務省北海道総合通信局が電波法違反で㈲知床遊覧船及び同社社長を刑事告発しており、この点での捜査(※)も行われるだろう。

※ 総務省「電波法違反に係る告発及び行政処分」(2022年06月21日)による。なお、時事通信「運航会社を告発 知床観光船事故、電波法違反で-総務省」(2022年06月21日)参照。

業務上過失致死罪が成立するためには、被疑者の行為と致死の結果の間に因果関係があること、及び、被疑者に過失があったことが必要となる。この被疑者の「行為」とは、法律的な価値判断においてなすべきことをしていないこと(不作為)も該当する。

社長個人は、運行管理者であり、また、㈲知床遊覧船の代表取締役として、KAZUⅠの事故を防止する義務があったわけである。問題は、事故の原因が何かということと、社長個人について、それを防止する義務があったのかが最大の問題となる。

これについては、運輸安全委員会が12月15日に公表した「事故の概要」がきわめて重要な意味を持つので、後で詳細に説明する。

一方、民事責任についても「知床観光船事件被害者弁護団」が発足した(※)とのことなので、損害賠償請求訴訟が行われることになろう。

※ NHK北海道NEWS WEB「観光船沈没で被害者弁護団が発足」(2022年06月14日)による。

なお、報道(※)によると、たまたまこの2022年4月に「船客傷害賠償責任保険」の保健額の上限の引上げを行ったので、社長は民事賠償のことはあまり気にしていないとのことである。しかし、保険会社が主張する支払額が、民事損害賠償請求訴訟による損害賠償額と一致するとは限らない。保険によって完全に賠償が行われるかについてはやや不明確というべきである。

※ FRIDAY DIGITAL「1人1億円の賠償も…知床遊覧船社長が余裕を見せる「呆れた理由」」(2022年05月12日)による。なお、一般論として、「船客傷害賠償責任保険」に、被保険者の違法な行為による事故についての免責条項は設けられない。

この種の訴訟では、相手側の資産を見つけて、供託金を積んで仮差押えをすることとが訴訟の成否を決することが多い。ところが、㈲知床遊覧船や社長個人の財産の仮差押えをしたという報道は見当たらない。ことによると、弁護団は保険金の支払いがスムーズに行われるとみているのかもしれない。


3 運輸安全委員会「経過報告」による新事実

(1)新たに判明した事故の原因

ア 事故の第直接原因

運輸安全委員会は、12月15日に「経過報告(※)を公表した。これによって新たな新事実が判明したのである。なお、「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」が分かりやすい。

※ 運輸安全委員会「事故の概要」(2022年12月15日)からリンクが貼られている。

運輸安全委員会は、今後の調査の方向性を次のように行うとしている。

本事故の発生に至る複合的な要因(1)~(6)

  • 直接的な原因
  • (1)船体構造の問題
  • 現在までに判明している事実関係
  • (2)発航の可否判断及び運航継続の判断に問題があったこと
  • (3)本件会社が安全管理規程を遵守していなかったこと
  • (4)監査・検査の実効性に問題があったこと
  • 旅客等に甚大な被害を生じ、捜索・救助活動に時間を要したことに関与
  • (5)救命設備や通信設備に不備があったこと
  • (6)捜索・救助体制に課題があったこと

運輸安全委員会「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」(2022年12月15日)より。

浸水箇所(船首甲板部ハッチ)

※ 運輸安全委員会「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」(2022年12月15日)より)

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問題は、この「(1)船体構造の問題」である。直接の沈没の原因が「浸水」であることは、KAZUⅠとの無線通信で、ほぼ判明していた。その浸水の経路がこの経過報告によって判明したのである。

浸水の経路は、当初、言われていた船体下部の傷ではなく、船首甲板部のハッチだと考えられているのである。船首甲板部のハッチは、船体が引き上げられた時点でなくなっていた。

そして、「ハッチ蓋を閉鎖して固定するための4箇所のクリップのうち、前方の2箇所は、本事故発生の2日前に実施された救命訓練においてクリップを回しても確実に固定できない状態であり、後方右舷側の1箇所は、クリップ止め部上面の摩耗状態から見て、クリップ止め部の下にクリップが掛からず、上滑りしていたと考えられる状態であった(※)というのである。

※ 運輸安全委員会「経過報告」(2022年12月15日)より。

そもそも、KAZUⅠは平水区域を航行区域とすることを前提として設計された船舶である。それにもかかわらず波が高い状況で無理に出港したことから、固定されていない(又は最初から開いていた)ハッチに波がかぶり、海水が侵入したのである。

③ 海水の流入

  本船は、もともと平水区域を航行区域とする船舶であったことから、船首甲板部外縁のブルワーク(防波壁)の高さが甲板部から約10cm と比較的低く、また、ハッチコーミング上端がブルワーク上端より低くなっており(船首方向で約26cm、船側方向で約9cm 低い。)、波高が高いとブルワークを越えて船首甲板部に直接波が打ち込む状態であり、ハッチ蓋が開いた状態で波が打ち込むと、相当量の海水がハッチ内の船首区画に流入したものと考えられる。

※ 運輸安全委員会「経過報告」(2022年12月15日)より。

ただ、これだけであれば、船舶は沈むようなことはない。KAZUⅠには、さらに重大な問題があったのである。そのひとつは、機関室にあるべきバラスト(砂袋)が前後の区画に分散して置かれていたことである。

隔壁に設けられた開口部

※ 運輸安全委員会「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」より)

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そして、さらに重大な問題は、船体を複数の区画に分ける隔壁に穴が開いていたことである。タイタニックは、防水隔壁の高さが足りずに前方の区画に進入した海水が次々に後方の区画に侵入し、これによって浮力を保つことが出来なくなって沈んだとされている。

※ 隔壁に穴が開いていたこと自体は、テレ朝news「知床観光船KAZU1元船長が“改造”を証言「エンジン2基→1基に」船底に空洞も」(2022年05月29日)などによって5月時点で報じられている。

なお、KAZUⅠは沿岸小型船舶に該当し、隔壁に穴が開いていたこと自体は、小型船舶安全規則第15条第5項により法違反ではない。時事通信「「水密隔壁」設置求めず 船内の穴、検査で一部未確認―知床観光船事故で国交省」(2022年06月04日)によると、国の検査でもとくに指摘はなかったという。

しかしながら、そのことで㈲知床遊覧船が免責されるわけもない。小型船舶安全規則のような行政的な取締規定は、最小限のことしか定めていないのであって、行政的な取締規定への違反がなければよいというものではない。行政的な取締規定を遵守していても事故は発生するのである。行政的な取締規定違反の有無にかかわらず、予見できる事故を起こして損害を発生させれば、刑事上・民事上の責任は負うべきなのである。

【船舶安全法】

第1条 日本船舶ハ本法ニ依リ其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ為スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ

第2条 船舶ハ左ニ掲グル事項ニ付国土交通省令(漁船ノミニ関スルモノニ付テハ国土交通省令・農林水産省令)ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス

 船体

二~十三 (略)

 (略)

【小型船舶安全規則】

(水密甲板の設置)

第7条 沿海以上の航行区域を有する小型船舶には、水密構造の全通甲板又はこれに準ずる水密構造の甲板を設けなければならない。ただし、沿岸小型船舶及び二時間限定沿海小型船舶(以下「沿岸小型船舶等」という。)に設ける水密構造の甲板にあつては、船首暴露部のみとすることができる。

2及び3 (略)

(水密隔壁の設置)

第15条 沿海以上の航行区域を有する小型船舶(木製船体のものを除く。以下この条において同じ。)には、船首より船の長さ(上甲板のビームの上面(無甲板船にあつては、げん端)の延長面における船首材の前面から船尾材の後面までの水平距離をいう。第百二条において同じ。)の〇・〇五倍の箇所から〇・一三倍の箇所までの間に水密隔壁を設けなければならない。ただし、水密隔壁の位置については、検査機関が当該船首部の構造、形状等を考慮して差し支えないと認める場合は、検査機関の指示するところによる。

 沿海以上の航行区域を有する小型船舶には、機関室の前端に水密隔壁を設けなければならない。

 第二項の隔壁は、水密甲板まで達しさせなければならない。ただし、前項の隔壁にあつては、当該隔壁がコックピットの下にある場合は、当該コックピットの床の下面にとどめて差し支えない。

 前三項の規定によるほか、近海以上の航行区域を有する小型船舶にあつては、いずれの一区画に浸水したときにおいても、次に掲げる要件を満足する平衡状態で当該小型船舶が浮んでいるような位置に水密隔壁を配置しなければならない。

 浸水後の水線が浸水の可能性のあるいずれの開口の下縁よりも下方にあること。

 浸水後のメタセンタ高さが五十ミリメートル以上であること。

 旅客船以外の小型船舶であつて検査機関がその構造等を考慮して差し支えないと認めるもの及び沿岸小型船舶等にあつては、前各項の規定によらないことができる

隔壁がその機能を保っていれば、いずれかの区画に海水が侵入したとしても、他の区画が浮力を保つので沈むことはない。船舶の形状によっては、侵入した海水が船底にとどまっていれば、かえって安定度が増すことさえあるのだ。

ところが、KAZUⅠは、この隔壁に穴が開いていたというのであるから、いずれかの区画に海水が侵入すれば、他の区画に穴を通して海水が流れ込んでしまい、浮力を保つことができなくなる。いわば、最高の安全装置をわざわざ無力化していたのである(※)

※ 運輸安全委員会「経過報告」(2022年12月15日)は「本船において、船首区画の隔壁に開口部がなく水密が保たれるものと仮定して計算したところ、この条件では、ハッチからの浸水で船首区画が満水になっても、船尾喫水が約55cm、船首喫水が約82cm であり、トリム角は-1.295°にしかならず、船舶の重量(海水の重量を含む。)約22.2tよりも浮力約75.0tが上回ることから、十分に沈没は避けることができる」としている。

運輸安全委員会の調査は、責任追及のために行われるものではないため、誰がいつ隔壁に穴をあけたのかは経過報告書には記されていない。㈲知床遊覧船に所有権が移転した時点で、すでに穴が開いていたのか、それとも㈲知床遊覧船が改造したのかは現時点では不明である。


イ 事故を引き起こした間接原因

また、経過報告では、事故を引き起こした間接原因として、運行管理者である社長の任務懈怠けたいを指摘している。船舶に直接原因となる欠陥があるにせよ、出港を中止していれば本件事故は起きなかったのである。

【旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料】

(3)安全管理規程が遵守されていなかったこと

   運航管理者及び本船船長は、本事故当日、強風注意報及び波浪注意報が発表され、運航基準に定める発航中止条件に達するおそれがあることが明らかな状況であったにもかかわらず、発航を中止せず、また、同基準に定める運航管理者及び本船船長による運航の可否判断等に関する協議結果についても記録していなかった。

   加えて、本船と無線で連絡できる状態になかったこと、運航管理者が本件会社事務所にいないことが常態化していたことも判明している。

※ 運輸安全委員会「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」(2022年12月15日)より。

この場合、たんなる任務懈怠のみならず、積極的に出港に影響を与えた社長の責任は大きいといわざるを得ないだろう。


ウ 被害を拡大させた理由

救命設備(一部)

※ 運輸安全委員会「経過報告」より)

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さらに経過報告は、KAZUⅠの救命設備及び通信設備の問題点を指摘している。救命設備として救命ボートや救命筏は設置されておらず、乗客・乗員は救命胴衣のみで低温水の海に投げ出されることとなった。

また、KAZUⅠにはアマチュア無線装置が搭載されていたものの、㈲知床遊覧船の事務所の屋外に設置された同無線機のアンテナは折損しており、同無線機は使用できない状態であった。しかも、2021年の時点で、㈲知床遊覧船が所有する衛星電話(イリジウム)は、充電ができず、使用できない状態だったという。

この結果、KAZUⅠの船長は、KDDI㈱(au)の携帯電話を使用していたが、通じないことも多かったという。

【旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料】

(5)救命設備や通信設備に不備があったこと

   本事故では、旅客及び乗組員全員が死亡又は行方不明となっており、死亡者の多くは、低水温の海に投げ出され、溺水に至ったことが判明している。本船に搭載されていた救命浮器は、低水温の海域に適したものではなかったと考えられる。また、本船船長は、電波受信が困難な携帯電話を使用しており、陸上との交信によって状況確認及び助言を受ける機会を失ったものと考えられる。

(6)捜索・救助体制に課題があったこと

   水温が0℃~5℃の場合の意識を保持しうる時間は最長30分、生存可能な時間は90分とされている。本船は、短時間のうちに沈没したと考えられ、搭載していた救命設備では、旅客等が生存したまま救助機関に発見されることは困難な状況であり、各救助機関が捜索・救助活動に当たったものの、生存者の救助には至っていない。

   海上保安庁は、本事故発生時に同業他社からの通報を受け、巡視船艇・航空機等を発動したが、本事故当日には旅客等及び本船船体の発見に至らなかった。

※ 運輸安全委員会「旅客船KAZUⅠ浸水事故 経過報告 説明資料」(2022年12月15日)より。

経過報告は、捜索・救助体制にも課題があったとしているが、KAZUⅠの通信設備が整っていれば、さらに早く救援活動に着手できた可能性は強い。また、無線機を搭載した適切な救命ボートがあれば、海上保安庁による速やかな発見が可能だったはずで、それまで乗客・乗員が生存できた可能性も否定できない。

本件事故の被害を拡大させた原因は、一義的には㈲知床遊覧船にあるというべきであろう。KAZUⅠは総トン数19トンの沿海区域を航行区域とする小型船舶であり、法的には小型船舶安全規則第58条第2項が適用され、小型船舶用膨脹式救命いかだ又は小型船舶用救命浮器を備えていればよい。

【船舶安全法】

第1条 日本船舶ハ本法ニ依リ其ノ堪航性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ必要ナル施設ヲ為スニ非ザレバ之ヲ航行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ

第2条 船舶ハ左ニ掲グル事項ニ付国土交通省令(漁船ノミニ関スルモノニ付テハ国土交通省令・農林水産省令)ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス

一~五 (略)

 救命及消防ノ設備

七~十三 (略)

 (略)

【小型船舶安全規則】

(救命設備の備付数量)

第58条 (第1項 略)

 沿海区域を航行区域とする小型船舶には、次に掲げる救命設備を備え付けなければならない。ただし、沿岸小型船舶等(総トン数五トン以上の旅客船を除く。)は、第三号から第八号までの規定(沿岸小型船舶にあつては、第六号の規定を除く。)に代えて第四項第三号及び第四号の規定によることができる。

 最大搭載人員を収容するため十分な小型船舶用膨脹式救命いかだ又は小型船舶用救命浮器。ただし、沿岸小型船舶(総トン数五トン以上の旅客船を除く。)及び二時間限定沿海小型船舶(次に掲げるものに限る。)にあつては、この限りでない。

 総トン数五トン未満のもの

 総トン数五トン以上のもの(旅客船を除く。)であつて、本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島でその海岸が沿海区域に接するものの各海岸から五海里以内の水域(沿海区域以外の水域を除く。)若しくは平水区域のみを航行するもの又は非常の際に付近の船舶その他の施設に対し必要な信号を有効確実に発信できる設備であつて国土交通大臣が定めるものを備え付けているもの

二~九 (略)

 小型船舶用レーダー・トランスポンダー又は小型船舶用捜索救助用位置指示送信装置 一個(同様の機能を有する設備であつて国土交通大臣が定めるものを備え付けている小型船舶を除く。)

十一 持運び式双方向無線電話装置 一個(旅客船又は国際航海に従事する小型船舶に限る。)

3~9 (略)

しかしながら、平水区域の運航を前提に設計されており、隔壁に穴の開いたハッチの閉まらないKAZUⅠのような船で、単独航行を行うのであれば、事故時には海上保安庁による救助が行われるまでの間、乗客・乗員を生存させ得る救命ボートを備え付けるべきであろう。事実、KAZUⅠは、救命浮器を備えてはいたが、結果的に役に立たなかったのである。

事故のあった場所から、最も近い海上保安部の航空基地までの距離は、160km であった。航空基地の航空機が出払っていれば、直ちに戻ったとしても給油してから飛び立って現場へ到着するまで2時間以上かかることも予想される。救命浮器は要救助者の身体が海につかることが前提となっており、北海道の冬季に役に立たないことは容易に予想できる。救命ボートであれば、体が海につかることはないので、救助まで生存できる可能性が高くなる。

KAZUⅠが救命浮器しか備えていなかったことは、安全よりも利益を優先させたためであると評価せざるを得ない。救命いかだの購入費は小型船舶用で1点約50万円、救命浮器は約10万円だという(※)。その差は約40万円である。

※ 毎日新聞「寒冷地の救命設備に課題 「救命いかだ」は予算面で普及進まず」(2022年05月01日)による。

数十万円のコストと、乗客・乗員の生命を秤にかけた結果が、本件事故の被災者の生命を奪ったのだと思えてならない(※)

※ 日本経済新聞「小型観光船 北海道や東北、救命いかだ義務化へ」(2022年10月22日)によると、国土交通省は「水温10度以上20度未満の場合は、航行する海域や船舶の構造などを考慮した上で救命いかだの積載を義務付ける」方針だという。あまりにも遅すぎる判断であった。


(2)新たに判明した事実が、刑事上・民事上の責任に与える影響

ア 事故の実行行為(作為義務の存在)

先述したように、ある事故(被害)について、刑事上・民事上の責任を問うためには、被疑者の行為がその事故の原因となっていること(相当因果関係があること)が必要である。

その上で、被疑者の側に過失がなければならない(※)。過失があるとするためには、その事故の発生が予見できたことと、結果を回避できることが必要となる。

※ 民事賠償請求をする場合の土地工作物責任には、過失を要しない場合があるが、KAZUⅠの事故では問題とはならない。

本件の場合、直接の原因となった前方甲板のハッチの故障及び隔壁の穴について、被疑者(KAZUⅠの事故では㈲知床遊覧船の社長)に、法的な価値判断において修理を実施する義務があったのかがまず問題となる。

社長にその義務があれば、その修理をしなかったという不作為が、社長による業務上過失致死という犯罪の実行行為ということになる。

この点、常識的に考えれば、事故の2日前の救命訓練において、ハッチの異常が発見されているのであるから、運行管理者としてその修理が行われるまで、KAZUⅠの運行を止める義務があったと考えるべきであろう。

また、隔壁の穴については、いつの時点で開けられたものかは明確ではないが、㈲知床遊覧船が開けたのであれば、その責任は当然に社長にあるだろう。仮に、㈲知床遊覧船が開けたのでないとしても、点検によって隔壁の穴は発見できたはずであり、運行管理者としてそれを塞ぐ義務があったと考えるのが自然である。


イ 過失の有無

次に、過失の有無であるが、ハッチが故障していれば、事故当時の天候で運航すれば、そこから海水が侵入することは容易に予見することが可能というべきである。

また、隔壁に穴が開いていたこと、バランスウエイトが分散されていたことは、それまでの点検において分かっていたであろうから、KAZUⅠが沈没する危険は予見できたはずである。

従って、過失はあったものと判断されるべきである。


ウ 民事上・刑事上の責任

以上のことより、運輸安全委員会「経過報告」に掲げられている事実によって、㈲知床遊覧船の社長は、業務上過失致死罪が成立するとともに、被害者の相続人・家族に対する民事賠償責任が発生するものと筆者は考える。

業務上過失致死傷罪で執行猶予がつかない実刑判決が出るかどうかは、裁判所次第である。これまでの判例の傾向を見る限りでは、実刑となる可能性が高いが、執行猶予がつく可能性もないわけではないと思う。

要は、社長個人が、どこまで出港の決定にかかわっていたと判断されるかによろう。


4 労働安全の立場からどのように考えるべきか

本件は、公衆災害(乗客の死亡)であると同時に、労働災害(沿岸航路の船員の死亡)でもある。しかし、工場や建設現場での典型的な労働災害ではない。

とはいえ、この事件から学ぶべき点は多い。KAZUⅠの事故の最大の原因は、社長の安全に関するあまりの知識のなさと、安全意識の低さであろう。そして、その人物によるワンマン経営が事故を引き起こしたと評価されるのである。

トップが、安全に対する知識を持った部下の意見を聴かないということが、どれほど危険なことかをこの災害は教えてくれる。

また、安全に責任を持つ者(運航管理者)が、当然に持っているべき知識を持とうとしなかったことによる危険をも教えてくれているのである。

多くの事業場にとって、㈲知床遊覧船の状況は、あまりにも異常な状況であり、自社とはレベルが違うので参考にならないと感じられるだろう。

だが、本当にそうだろうか。あなたは、あなたの現場で使用されている機械や化学物質の危険有害性を明確に理解しているだろうか。

また、安全装置が故障したまま放置されている箇所はないだろうか。また、使用している化学物質について、SDSに基づいてリスクアセスメントを効果的に行っているだろうか。

KAZUⅠの事故は、我々労働安全の分野に身を置く者にとっても、他山の石とするべき事件である。


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