これまでに公表されている簡易な化学物質のリスクアセスメントツールの多くは吸入ばく露がメインとなっており、経皮ばく露のリスクを定量的に評価する手法はほとんどありませんでした。
しかし、2019年3月に厚生労働省から公表された改良型 CREATE-SIMPLE(現在の版はver.2.3)は、直接、化学物質(液体)をハンドリングする作業について、経皮ばく露のリスク評価が可能となりました。
簡単に紹介しますので、ぜひご活用ください。
- 1 初めに
- (1)CREATE-SIMPLE の公表
- (2)CREATE-SIMPLE の使用上の課題
- 2 CREATE-SIMPLE によるリスク評価の原理等
- (1)リスク評価の原理
- (2)実際の具体的な数値の算定手法
- 3 具体的な使用方法
- (1)ダウンロードする
- (2)データを入力する
- (3)混合物の場合/複数の物質を扱う場合への対応
1 初めに
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(1)CREATE-SIMPLE の公表
2019年3月に厚生労働省より改良型 CREATE-SIMPLE (2020年8月に現在のver.2.3になった)が公開された。Ver1.0との大きな違いは、経皮吸収のばく露と危険性のリスクを評価できることである。
これまで、この種のツールはリスクを評価するプロセスが公開されていないものがあったが、このツールは完全に公開されている。ただし、CREATE-SIMPLEは、ECETOCのTRAやBAuAのEMKG EXPO Toolと同じようにEXCELで動作するが、EXCELそのものはロックがかけられている。ただ、Windowsやブラウザのバージョンを気にする必要はない。
(2)CREATE-SIMPLE の使用上の課題
なお、気になることは数点ある。最大の問題は、混合物のリスク評価や、ひとつの作業場で複数の化学物質を取り扱っている場合のリスク評価ができないことである。例え有害性はほとんどないが皮膚へ浸透する物質 A と皮膚へ浸透することはほとんどないが有害性が高い物質 B の混合物が存在しているとしよう。
おそらく、A と B のそれぞれについて単独で経皮ばく露のリスクアセスメントを行えば、リスクは低いという結論となろう。しかし、これらの混合物では、B が A によって皮膚に浸透することがあるのだ。すなわち、実際の経皮ばく露によるリスクは高くなる可能性があるのだ。これをどう評価するかは難しいところである。
また、蒸気・ガスからの経皮ばく露を考慮していないことも気になるところである。作業環境中にガス・蒸気の状態で化学物質が存在している場合、もっとも問題となるのが経気道ばく露であることは言うまでもないが、意外に経皮ばく露の影響も大きいからである。これらは今後の課題であろう。
また、界面活性剤など水/オクタノール分配係数が分からない物質のリスク評価ができないこともやや気になる点である。