労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全一般 問06

玉掛け用のワイヤロープ等




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合格

 このページは、2019年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問06 難易度 玉掛けを日常行っている作業者でも知らない話。やや難問かもしれないが、良い問題だと思う。
玉掛用具

問06 玉掛け用のワイヤロープ及び繊維スリングに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ワイヤロープでは柔軟性が求められることから、ロープの心は繊維心のみであり、鋼製心のものは使われないが、ストランドについては、繊維心のものと鋼製心のものの2種類がある。

(2)ワイヤロープの廃棄基準の一つとして、ストランド中の断線した素線の割合(断線が認められた素線数/全素線数)があるが、フィラー線は断線の評価対象から除かれる。

(3)ワイヤロープのキンクには、局部的によりが詰まったもの(プラスキンク)と局部的によりが戻ったもの(マイナスキンク)がある。

(4)ベルトスリングには色相の異なる糸を外部又は内部に織り込んでいるものがあり、その消失や露出は廃棄基準の一つとされている。

(5)ラウンドスリングは合成繊維の糸を回旋して心体とし,それを表面布で覆ったものであるが、表面布は最大使用荷重に対応して色分けされているものがある。

正答(1)

【解説】

(1)適切ではない。ワイヤロープの心には繊維心と鋼心(金心)があり、鋼心には、ストランド心(IWSC)とロープ心(IWRC及びCFRC)がある。従って、前段は正しいとはいえない。ただ、現実には、玉掛け用のワイヤロープはほとんどの場合、柔軟性のある繊維心しか用いられていないのが実態である。

一方、ストランドは、玉掛に用いられるものは、24本線6より、37本線6より、61本線6よりなどがある。7~数十本の素線を様々な方法でより合わせており、素線の太さは必ずしも同一ではない。心には、1本の心線を用いているものが多いが、24本線6よりは繊維を心に用いている。筆者(柳川)は、意図的に玉掛用ワイヤロープを破断する実験に立ち会ったことがあるが、このときのワイヤロープのストランドは心線に繊維を用いていた。従って、後段は誤りとはいえない。

(2)適切である。クレーン則第215条第一号は、使用してはならないワイヤロープの基準として「ワイヤロープ一よりの間において素線(フイラ線を除く。以下本号において同じ。)の数の十パーセント以上の素線が切断しているもの」としている。「廃棄基準」ではなく「使用してはならないものの基準」ではあるが正しいとしてよいだろう。

ワイヤロープ

図をクリックすると拡大します

(3)適切である。クレーン協会の「ワイヤロープの簡易点検」のページに写真が載っているが、局部的によりが詰まったものをプラスキンクといいい、局部的によりが戻ったものをマイナスキンクという。

※ 図は厚生労働省技能講習用補助教材「玉掛け技能講習補助テキスト(日本語)」より

(4)適切である。このような工夫は、ベルトスリングだけでなく様々な用途のロープでも行われている。

(5)適切である。ラウンドスリングは合成繊維の糸(マルチフィラメント糸)を回旋して心体とし、それを表面布で覆ったものである。表面布の色分けについては、JIS B 8811:2007に最大使用荷重と表面布の色分け規定がある。

最大使用荷重(t) 0.5 1.0 1.6 2.0 3.2 5.0 8.0
表面の色 灰色
2020年01月02日執筆 2021年12月09日一部修文