労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全関係法令 問07

爆発、火災等の防止




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問07 難易度 爆発、火災等の防止に関するかなり詳細な知識問題。化学安全以外の受験生にはやや難問だろう。
爆発、火災等の防止

問7 爆発、火災等を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)特殊化学設備について、その内部における異常な事態を早期には握するために必要な自動警報装置を設けることが困難だったため、監視人を置き、運転中は当該設備を常時監視させた。

(2)化学設備の内部で清掃作業を行うとき、作業箇所に危険物が漏えいしないように、バルブを二重に閉止したが、これらのバルブの施錠が困難であったので、施錠せず、バルブを開放してはならない旨の表示を行った。

(3)化学設備を使用して作業を行うときに定める爆発又は火災を防止するための規程において、安全弁、緊急しゃ断装置その他の安全装置及び自動警報装置の調整については定めていたが、計測装置及び制御装置の監視及び調整については定めていなかった。

(4)近接する二つの化学設備の間に、使用中にしばしば開放することがあるストレーナを設けているが、当該ストレーナとそれぞれの化学設備との間のバルブが確実に閉止していることを確認することができる装置を設けたので、当該ストレーナとそれぞれの化学設備との間のバルブは二重にはしなかった。

(5)6か月前に定期自主検査を行った化学設備について、最近その使用を3週間続けて休止していたが、この間に改造及び修理を行っていなかったので、当該化学設備の使用の再開の際に、ふた板、フランジ、バルブ及びコックの状態の点検を行わなかった。

正答(3)

【解説】

本問の選択肢は、(1)は一定の措置義務に対し、それが困難な場合の代替措置を定めたものである。また、(2)及び(4)はある措置が十分だったのでそれ以上の措置は取らなかったということであり、(5)は必要性の薄い措置を図らなかったということである。

ところが、(3)はある措置はとったが、別な措置を取らなかったということで、前者と後者の措置の間に代替関係もなければ補完関係もなく、後者の措置を図らなくてもよいと考える根拠がない。つまり、「安全弁、緊急しゃ断装置その他の安全装置及び自動警報装置の調整については定めていた」の部分については、問題として書く意味がないのである。そのため読んでいて不自然な感じがする。

これらのことから、知識がなかったとしても(3)が正答であろうと見当をつけることはできるのではなかろうか。

(1)違反とはならない。安衛則273条の3は、第1項で特殊化学設備の内部における異常な事態を早期には握するために必要な自動警報装置を設けることを義務付けているが、第2項でそれが困難な場合は、監視人を置き、運転中は当該設備を常時監視させなければならないとする。従って、本肢は違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(コンクリートの打設の作業)

第273条の3 事業者は、特殊化学設備(製造し、又は取り扱う危険物等の量が厚生労働大臣が定める基準に満たないものを除く。)については、その内部における異常な事態を早期には握するために必要な自動警報装置を設けなければならない。

 事業者は、前項に規定する措置を講ずることが困難なときは、監視人を置き、当該特殊化学設備の運転中は当該設備を監視させる等の措置を講じなければならない。

(2)違反とはならない。安衛則第275条第4号は、化学設備の内部で清掃作業を行うとき、バルブ、コック又は閉止板等について、①施錠、②これらを開放してはならない旨の表示、又は③監視人を置くことのいずれかを実施することを義務付けている。従って、本肢は違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(改造、修理等)

第275条 事業者は、化学設備又はその附属設備の改造、修理、清掃等を行う場合において、これらの設備を分解する作業を行い、又はこれらの設備の内部で作業を行うときは、次に定めるところによらなければならない。

 当該作業の方法及び順序を決定し、あらかじめ、これを関係労働者に周知させること。

 当該作業の指揮者を定め、その者に当該作業を指揮させること。

 作業箇所に危険物等が漏えいし、又は高温の水蒸気等が逸出しないように、バルブ若しくはコックを二重に閉止し、又はバルブ若しくはコックを閉止するとともに閉止板等を施すこと。

 前号のバルブ、コック又は閉止板等に施錠し、これらを開放してはならない旨を表示し、又は監視人を置くこと。

 第三号の閉止板等を取り外す場合において、危険物等又は高温の水蒸気等が流出するおそれのあるときは、あらかじめ、当該閉止板等とそれに最も近接したバルブ又はコックとの間の危険物等又は高温の水蒸気等の有無を確認する等の措置を講ずること。

(3)違反となる。安衛則第274条は第3号において、化学設備を使用して作業を行うときに定める爆発又は火災を防止するための規程において、計測装置及び制御装置の監視及び調整について定めることを義務付けている。

【労働安全衛生規則】

(作業規程)

第274条 事業者は、化学設備又はその附属設備を使用して作業を行うときは、これらの設備に関し、次の事項について、爆発又は火災を防止するため必要な規程を定め、これにより作業を行わせなければならない。

 バルブ、コック等(化学設備(配管を除く。以下この号において同じ。)に原材料を送給し、又は化学設備から製品等を取り出す場合に用いられるものに限る。)の操作

 冷却装置、加熱装置、攪拌装置及び圧縮装置の操作

 計測装置及び制御装置の監視及び調整

 安全弁、緊急しや断装置その他の安全装置及び自動警報装置の調整

 ふた板、フランジ、バルブ、コック等の接合部における危険物等の漏えいの有無の点検

 試料の採取

 特殊化学設備にあつては、その運転が一時的又は部分的に中断された場合の運転中断中及び運転再開時における作業の方法

 異常な事態が発生した場合における応急の措置

 前各号に掲げるもののほか、爆発又は火災を防止するため必要な措置

(4)違反とはならない。安衛則第272条第2号において、近接する二つの化学設備の間に、使用中にしばしば開放することがあるストレーナを設けた場合に、そのストレーナとそれぞれの化学設備との間のバルブが確実に閉止していることを確認することができる装置を設けたときは、当該ストレーナとそれぞれの化学設備との間のバルブは二重にすることを義務付けていない。従って、本肢は違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(バルブ等の材質等)

第272条 事業者は、化学設備のバルブ又はコックについては、次に定めるところによらなければならない。

 開閉のひん度及び製造又は取扱いに係る危険物等の種類、温度、濃度等に応じ、耐久性のある材料で造ること。

 化学設備の使用中にしばしば開放し、又は取り外すことのあるストレーナ等とこれらに最も近接した化学設備(配管を除く。以下この号において同じ。)との間には、二重に設けること。ただし、当該ストレーナ等と当該化学設備の間に設けられるバルブ又はコックが確実に閉止していることを確認することができる装置を設けるときは、この限りでない。

(5)違反とはならない。安衛則第276条の化学設備の定期自主検査は、2年に1回の実施が義務付けられており、6か月前に行っていれば、さらに定期自主検査を行う必要はない。

また、安衛則第277条第1項の使用開始時の点検は、初めて用いるときや、分解して改造若しくは修理を行ったとき又は引き続き1か月以上使用しなかった化学設備について義務付けられているので、本肢の場合には対象とはならない。従って、本肢は違反とはならない。

なお、第277条2項については、そもそも第276条第1項第3号は対象外であり、しかも変更も行っていないので、本肢においては考慮する必要はない。

【労働安全衛生規則】

(定期自主検査)

第276条 事業者は、化学設備(配管を除く。以下この条において同じ。)及びその附属設備については、二年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、二年を超える期間使用しない化学設備及びその附属設備の当該使用しない期間においては、この限りでない。

一及び二 (略)

 ふた板、フランジ、バルブ、コック等の状態

 (以下略)

(使用開始時の点検)

第277条 事業者は、化学設備(配管を除く。以下この条において同じ。)又はその附属設備を初めて使用するとき、分解して改造若しくは修理を行つたとき、又は引き続き一月以上使用しなかつたときは、これらの設備について前条第1項各号に掲げる事項を点検し、異常がないことを確認した後でなければ、これらの設備を使用してはならない。

 事業者は、前項の場合のほか、化学設備又はその附属設備の用途の変更(使用する原材料の種類を変更する場合を含む。以下この項において同じ。)を行なうときは、前条第一項第一号、第四号及び第五号に掲げる事項並びにその用途の変更のために改造した部分の異常の有無を点検し、異常がないことを確認した後でなければ、これらの設備を使用してはならない。

2018年10月28日執筆 2021年07月10日修正