労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全関係法令 問04

車両系荷役運搬機械等及び荷役作業




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問04 難易度 車両系荷役運搬機械等及び荷役作業に関するごく初歩的な知識問題。確実に正答できる必要がある。
車両系荷役運搬機械等

問4 車両系荷役運搬機械等及び荷役作業による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)高さが2メートル以上のはいのはい付け又ははい崩しの作業は、車両系荷役運搬機械等の運転者のみによって行われる場合を含め、はい作業主任者が直接指揮しなければならない。

(2)不整地運搬車又は貨物自動車を用いて道路上の走行の作業を行うときは、あらかじめ、作業計画及び制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。

(3)車両系荷役運搬機械等の運転者が運転位置から離れるときは、フォーク、ショベル等の荷役装置を最低降下位置に置き、原動機を止め、かつ、停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の車両系荷役運搬機械等の逸走を防止する措置を講じなければならない。

(4)ショベルローダーについては、1年を超えない期間ごとに1回、特定自主検査を行わなければならない。

(5)貨物自動車から荷を卸す作業において中抜きを行うときは、作業を指揮する者を定め、その者に作業手順及び作業手順ごとの作業の方法を決定させ、作業を直接指揮させなければならない。

正答(3)

【解説】

(1)誤り。作業主任者は、安衛法第14条によって「政令で定める作業」について選任しなければならないとされている。そして、「政令で定める作業」は安衛令第6条に定められており、その第12号で「高さが二メートル以上のはいのはい付け又ははい崩しの作業(荷役機械の運転者のみによって行われるものを除く。)」と定められている。

本肢で「車両系荷役運搬機械等の運転者のみによって行われる場合を含め」とされているのが誤りである。

なお、本肢の正誤とは関係がないが、安衛則第429条は、作業主任者の職務として、その第1号に「作業の方法及び順序を決定し、作業を直接指揮すること」を定めている。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~十一 (略)

十二 高さが二メートル以上のはい(倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団をいう。)のはい付け又ははい崩しの作業(荷役機械の運転者のみによつて行われるものを除く。)

十三 (以下略)

【労働安全衛生規則】

(はい作業主任者の職務)

第429条 事業者は、プ事業者は、はい作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。

 作業の方法及び順序を決定し、作業を直接指揮すること。

 (以下略)

(2)誤り。不整地運搬車及び貨物自動車は、安衛則第151条の2により、車両系荷役運搬機械等に該当する。

そして、安衛則第151条の3第1項により、事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、作業計画を定め、かつ、その作業計画により作業を行わなければならない。また、同151条の5第1項により、事業者は、適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。

しかしながら、これらは第151条の3第1項のカッコ書きによって、道路上の走行の作業が除かれている。従って、誤りである。そもそも道路上の走行の制限速度を事業者が定めてよいわけがないであろう。これは、条文問題というより常識問題である。

【労働安全衛生規則】

(定義)

第151条の2 この省令において車両系荷役運搬機械等とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一~四 (略)

 不整地運搬車

 (略)

 貨物自動車(専ら荷を運搬する構造の自動車(前二号に該当するものを除く。)をいう。)

(作業計画)

第151条の3 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第151条の7までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。

 (以下略)

(制限速度)

第151条の5 事業者は、車両系荷役運搬機械等(最高速度が毎時10キロメートル以下のものを除く。)を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の地形、地盤の状態等に応じた車両系荷役運搬機械等の適正な制限速度を定め、それにより作業を行わなければならない。

 (以下略)

(3)正しい。安衛則第151条の11第1項には、車両系荷役運搬機械等の運転者が運転位置から離れる場合の措置として、本肢と同様のことが定めてある。従って本肢は正しい。

【労働安全衛生規則】

(運転位置から離れる場合の措置)

第151条の11 事業者は、車両系荷役運搬機械等の運転者が運転位置から離れるときは、当該運転者に次の措置を講じさせなければならない。

 フオーク、シヨベル等の荷役装置を最低降下位置に置くこと。

 原動機を止め、かつ、停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の車両系荷役運搬機械等の逸走を防止する措置を講ずること。

 (略)

(4)誤り。特定自主検査は、安衛法第45条第2項によって事業者に義務付けられており、その対象は安衛令第15条第2項に規定されている。具体的には、動力プレス、フォークリフト、不整地運搬車、車両系建設機械(安衛令別表7に定めるもので、動力を用い、不特定の場所に移動できるもの)及び高所作業車であり、ショベルローダーには義務はない。

【労働安全衛生法】

(定期自主検査)

第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

 事業者は、前項の機械等で政令で定めるものについて同項の規定による自主検査のうち厚生労働省令で定める自主検査(以下「特定自主検査」という。)を行うときは、その使用する労働者で厚生労働省令で定める資格を有するもの又は第54条の3第1項に規定する登録を受け、他人の求めに応じて当該機械等について特定自主検査を行う者(以下「検査業者」という。)に実施させなければならない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき機械等)

第13条 (1項及び2項 略)

 法第42条の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~七 (略)

 フオークリフト

 別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるもの

十~三十二 (略)

三十三 不整地運搬車

三十四 作業床の高さが二メートル以上の高所作業車

 (以下略)

(定期に自主検査を行うべき機械等)

第15条 法第四十五条第一項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。

 (略)

 動力により駆動されるプレス機械

三~十一 (略)

 法第45条第2項の政令で定める機械等は、第13条第3項第8号、第9号、第33号及び第34号に掲げる機械等並びに前項第2号に掲げる機械等とする。

(5)誤り。このような規定はない。そもそも中抜きなどは行ってはならない。

なお、安衛則では、この他、不整地運搬車から荷を卸す作業(第151条の49)、貨車から荷を卸す作業(第421条)、床面からの高さが2メートル以上のはいのはいくずしの作業(第431条)についても中抜きをしてはならないと規定している

【労働安全衛生規則】

(中抜きの禁止)

第151条の71 事業者は、貨物自動車から荷を卸す作業を行うときは、当該作業に従事する労働者に中抜きをさせてはならない。

 前項の作業に従事する労働者は、中抜きをしてはならない。

2018年10月28日執筆 2020年03月22日修正