労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全関係法令 問07

爆発、火災等の防止




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問07 難易度 爆発火災等に関する詳細な知識問題。かなりの難問だろう。
爆発、火災等の防止

問7 爆発、火災等を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)化学設備の内部で清掃の作業を行うときに、当該作業の方法及び順序を決定し、あらかじめ、これを関係労働者に周知させるとともに、バルブのある場所に監視人を配置したので、当該作業の指揮者を定めなかった。

(2)異常化学反応により内部の気体の圧力が大気圧を超えるおそれのある内容積が0.05 立方メートルの容器について、安全弁又はこれに代わる安全装置を備えていないものを使用した。

(3)接触すると爆発するおそれのある異種の物を運搬するとき、接触防止のための措置を講じたので、同一の運搬機に積載した。

(4)ガス集合溶接装置を用いて金属の溶接の作業を行うとき、ガス集合装置から5メートル以内の場所では、喫煙を禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に掲示した。

(5)可燃性ガスが存在して爆発が生ずるおそれのある場所について、通風及び換気を行い、可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれがなくなったので、電気機械器具を使用するときに、防爆構造のものを使用しなかった。

正答(1)

【解説】

(1)違反となる。安衛則第275条は、「事業者は、化学設備又はその附属設備の改造、修理、清掃等を行う場合において、これらの設備を分解する作業を行い、又はこれらの設備の内部で作業を行うときは、次に定めるところによらなければならない」とし、実施すべき事項として第2号で「当該作業の指揮者を定め、その者に当該作業を指揮させること」と定める。これには、本肢のような例外措置は定められていない。

実質的に考えても、バルブのある場所に監視人を配置したからという理由で、作業の指揮を行う者がいなくてもよいことになるというのは不自然であろう。作業の方法・順序の周知と作業指揮では目的が異なるし、また作業指揮の目的はバルブの誤操作をなくすことではないのである。

【労働安全衛生規則】

(改造、修理等)

第275条 事業者は、化学設備又はその附属設備の改造、修理、清掃等を行う場合において、これらの設備を分解する作業を行い、又はこれらの設備の内部で作業を行うときは、次に定めるところによらなければならない。

 (略)

 当該作業の指揮者を定め、その者に当該作業を指揮させること。

三~五 (略)

(2)違反ではない。安衛則第278条第1項は、「事業者は、異常化学反応その他の異常な事態により内部の気体の圧力が大気圧を超えるおそれのある容器については、安全弁又はこれに代わる安全装置を備えているものでなければ、使用してはならない。ただし、内容積が0.1立方メートル以下である容器については、この限りでない」としている。本肢の容器は内容積が0.05立方メートルであるから、違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(安全装置)

第278条 事業者は、異常化学反応その他の異常な事態により内部の気体の圧力が大気圧を超えるおそれのある容器については、安全弁又はこれに代わる安全装置を備えているものでなければ、使用してはならない。ただし、内容積が〇・一立方メートル以下である容器については、この限りでない。

 (略)

(3)違反ではない。安衛則第264条は「事業者は、異種の物が接触することにより発火し、又は爆発するおそれのあるときは、これらの物を接近して貯蔵し、又は同一の運搬機に積載してはならない。ただし、接触防止のための措置を講じたときは、この限りでない」としている。

【労働安全衛生規則】

(異種の物の接触による発火等の防止)

第264条 事業者は、異種の物が接触することにより発火し、又は爆発するおそれのあるときは、これらの物を接近して貯蔵し、又は同一の運搬機に積載してはならない。ただし、接触防止のための措置を講じたときは、この限りでない。

(4)違反ではない。安衛則第313条は、「事業者は、ガス集合溶接装置を用いて金属の溶接、溶断又は加熱の作業を行なうときは、次に定めるところによらなければならない」とし、実施すべき事項として第4号で「ガス集合装置から五メートル以内の場所では、喫煙、火気の使用又は火花を発するおそれのある行為を禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に掲示すること」と定める。

本肢では、ガス集合装置から5メートル以内の場所で、喫煙を禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に掲示したのであるから違反はないと考えてよい。考えようによっては喫煙のみを禁止し、「火気の使用又は火花を発するおそれのある行為」を禁止していないので違反ではないかとの疑問もわく。しかし、本肢はあくまでも禁煙のみについて言っており、「火気の使用又は火花を発するおそれのある行為」については何も言っていないと考えるべきである。

本肢の出題意図は、「5メートル」について知ってるかどうかを問うものであろう。

【労働安全衛生規則】

(ガス集合溶接装置の管理等)

第313条 事業者は、ガス集合溶接装置を用いて金属の溶接、溶断又は加熱の作業を行なうときは、次に定めるところによらなければならない。

一~三 (略)

 ガス集合装置から五メートル以内の場所では、喫煙、火気の使用又は火花を発するおそれのある行為を禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に掲示すること。

五~八 (略)

(5)違反ではない。安衛則第261条は「事業者は、引火性の物の蒸気、可燃性ガス又は可燃性の粉じんが存在して爆発又は火災が生ずるおそれのある場所については、当該蒸気、ガス又は粉じんによる爆発又は火災を防止するため、通風、換気、除じん等の措置を講じなければならない」とする。

そして、同第280条は「第261条の場所のうち、同条の措置を講じても、なお、引火性の物の蒸気又は可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所において電気機械器具(略)を使用するときは、当該蒸気又はガスに対しその種類及び爆発の危険のある濃度に達するおそれに応じた防爆性能を有する防爆構造電気機械器具でなければ、使用してはならない」としている。

本肢では、第261条の措置(通風及び換気)を行って、可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれがなくなったので、電気機械器具を使用するときに、防爆構造のものを使用しなかったと言っている。従って違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(通風等による爆発又は火災の防止)

第261条 事業者は、引火性の物の蒸気、可燃性ガス又は可燃性の粉じんが存在して爆発又は火災が生ずるおそれのある場所については、当該蒸気、ガス又は粉じんによる爆発又は火災を防止するため、通風、換気、除じん等の措置を講じなければならない。

(爆発の危険のある場所で使用する電気機械器具)

第280条 事業者は、第二百六十一条の場所のうち、同条の措置を講じても、なお、引火性の物の蒸気又は可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所において電気機械器具(電動機、変圧器、コード接続器、開閉器、分電盤、配電盤等電気を通ずる機械、器具その他の設備のうち配線及び移動電線以外のものをいう。以下同じ。)を使用するときは、当該蒸気又はガスに対しその種類及び爆発の危険のある濃度に達するおそれに応じた防爆性能を有する防爆構造電気機械器具でなければ、使用してはならない。

 (略)

2017年12月24日執筆 2020年04月25日修正