労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全関係法令 問08

電気による労働災害の防止




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問08 難易度 電気による労働災害の防止に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
電気による労働災害防止

問8 電気による労働災害の防止対策等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)低圧とは、直流にあっては、750 ボルト以下である電圧をいう。

(2)高圧とは、交流にあっては、600ボルトを超え、7,000ボルト以下である電圧をいう。

(3)絶縁用保護具を着用しないで、電路の支持物の点検、塗装等の電気工事の作業を行う場合において、高圧の充電電路に対して頭上距離が30 センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が60 センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。

(4)高圧活線作業及び高圧活線近接作業を行う場合において、絶縁用防具の装着又は取りはずしの作業を行うときは、作業に従事する労働者に、絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置を使用させなければならない。

(5)活線作業用器具及び活線作業用装置を使用しないで、高圧の充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者に感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させるか、又は当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。安衛則第36条第4号により、低圧とは、「直流にあっては750ボルト以下、交流にあっては600ボルト以下である電圧をいう」とされている。従って正しい。

なお、50V以下は低圧に含まれるが、特別教育の対象からは外れている。

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 (略)

一~三 (略)

 高圧(直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超え、七千ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)若しくは特別高圧(七千ボルトを超える電圧をいう。以下同じ。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧(直流にあつては七百五十ボルト以下、交流にあつては六百ボルト以下である電圧をいう。以下同じ。)の充電電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害を生ずるおそれのないものを除く。)の敷設若しくは修理の業務(次号に掲げる業務を除く。)又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路(対地電圧が五十ボルト以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等で感電による危害の生ずるおそれのないものを除く。)のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務

四の二~四十一 (略)

(2)正しい。同号により、高圧とは「直流にあっては750ボルトを、交流にあっては600ボルトを超え、7,000ボルト以下である電圧をいう」とされている。従って正しい。

交流 直流
低圧 600V以下 750V以下
高圧 600V超
7,000V以下
750V超
7,000V以下
特別高圧 7,000V超 7,000V超

(3)正しい。安衛則第342条第1項は「事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が30センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が60センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない」と定める。

なお、本肢は「絶縁用保護具を着用しない」とされているので、本条但書きの規定はない。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線近接作業)

第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(4)正しい。安衛則第343条は「事業者は、前二条の場合において、絶縁用防具の装着又は取りはずしの作業を労働者に行なわせるときは、当該作業に従事する労働者に、絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置を使用させなければならない」と定める。ここに前2条とは、高圧活線作業及び高圧活線近接作業のことである。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 (条文省略)

(高圧活線近接作業)

第342条 (条文省略)

(絶縁用防具の装着等)

第343条 事業者は、前二条の場合において、絶縁用防具の装着又は取りはずしの作業を労働者に行なわせるときは、当該作業に従事する労働者に、絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具若しくは活線作業用装置を使用させなければならない。

 (略)

(5)誤り。安衛則第341条第1項は次のようになっている。ここで、第1号から第3号のいずれかの対策を取ればよいわけだが、本肢では第2号と第3号の措置はとっていない。従って第1号の措置をとらなければならないが、第1号は、絶縁用保護具の着用と充電電路への絶縁用防具の装着の双方を行うことを義務付けている。本肢はそのいずれかを実施すればよいとしているので誤りとなる。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱つている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。

 労働者に活線作業用器具を使用させること。

 労働者に活線作業用装置を使用させること。この場合には、労働者が現に取り扱つている充電電路と電位を異にする物に、労働者の身体又は労働者が現に取り扱つている金属製の工具、材料等の導電体(以下「身体等」という。)が接触し、又は接近することによる感電の危険を生じさせてはならない。

 (略)

2017年12月24日執筆 2020年04月25日修正