労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問21

感電災害の防止




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問21 難易度 感電災害防止に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない問題である。
感電災害防止

問21 感電に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)誤って充電部分をつかんでも、自分の意志で離すことができる最大の電流を離脱電流という。

(2)離脱電流は、電源の周波数により異なり、50 ~60 Hz 付近で最も大きくなる。

(3)感電により心室細動が発生すると、他人が充電部分を除去しても、一般には、心室細動は治まらない。

(4)皮膚の抵抗は、印加電圧の大きさ、接触面の濡れ具合などによって変化する。

(5)人体の内部の抵抗は、印加電圧に関係なく、手と足の間でほぼ500 Ωである。

正答(2)

【解説】

(1)適切である。離脱電流の定義は本肢のとおりである。

なお、一般的なテキストでは、商用周波数で離脱電流を10mAとするものが多い。ただし、Dalzielらによると、60 Hzの正弦波で大多数の人の離脱電流は、男子9mA、女子6mAであるとされている(※)

※ C.Dalziel,E.Ogden,C.Abbott「Electrical Engineering」(1943)

(2)適切ではない。Dalzielらは357名の成人男子について、5~10,000Hzの周波数における離脱電流を測定し、50、60 Hzの商用周波数を含む15~100 Hz付近の周波数での離脱電流が最も小さく危険性が高いとしている(※)

※ C.Dalziel et al.前掲

(3)適切である。心室細動(Vf=Ventricular fibrillation)とは、心臓の心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態である。いったん心室細動が起きてしまえば、感電している状態から解放されたとしても、AED(自動体外式除細動器)等を用いて救命措置を行わない限り、自然に回復することはない。

心室細動を起こした場合は、充電部から引き離すだけでなく、ただちに心臓マッサージや人工呼吸等を迅速に行う必要がある。

(4)適切である。皮膚の電気抵抗は乾燥していれば10,000Ω程度だとされるが、ぬれていればゼロ近くまで低下する。また、人体の内部抵抗は印加電圧によってそれほど変わらないが、両手間の代表的な人体の電気抵抗は、交流の場合では25Vで約3,300Ω、100Vでは1,900Ω、1,000Vでは1,100Ωとなるとされる。

(5)適切である。

2018年10月27日執筆 2020年04月29日修正