労働安全コンサルタント試験 2016年 産業安全一般 問12

安全教育




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問12 難易度 安全教育に関する常識問題と言ってよい。正答できないわけがないようなレベル。
安全教育

問12 安全教育に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)経営首脳者、管理監督者、労働者など企業内における各層に対するそれぞれの立場に応じた教育を行った。

(2)新入若年労働者は業務に係る知識が浅いので、討議方式の教育は適切でなく、講義方式で教育を行った。

(3)高年齢労働者に対し、加齢に伴う心身機能の低下の特性、心身機能に応じた安全な作業方法などについて教育を行った。

(4)職長教育では、作業方法の決定、労働者の配置、労働者に対する指導、監督の方法などに加えて、リスクアセスメントに係る教育も行った。

(5)外国人労働者に対し、労働災害防止のための指示などを理解することができるようにするため、必要な日本語及び基本的な合図を習得させた。

正答(2)

【解説】

本問は、(2)の「新入若年労働者は業務に係る知識が浅いので、討議方式の教育は適切でなく」という部分以外は、誤りとなる余地がない。引っ掛け問題ではないかと疑った受験生もいたようだが、コンサルタント試験には引っ掛け問題はほとんど出題されない。知識がなくても、素直に解けば正答に達することができたのではなかろうか。

(1)適切である。本肢の内容から、適切でないわけがないだろう。また、平成3年1月21日基発第39号(最終改正 平成28年10月12日基発1012第1号)「安全衛生教育推進要綱」(以下本問で「推進要綱」という。)においては、「作業者、安全衛生に係る管理者、経営トップ等、安全衛生専門家、技術者等」を対象とすることとしている。

(2)適切ではない。安衛法第59条第1項は「労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない」とされている。しかし、講義方式でなければならないとする規定はない。

知識の十分でない者に対する教育として討議方式を採用する場合は、討議を適切にリードする必要があり、リードできる者が必要とはなるが、参加者の主体的な参加意識を引き出すことにより一定の効果を上げることが可能である。「新入若年労働者は業務に係る知識が浅いので、討議方式の教育は適切でなく」と断定しているところは適切とはいえない(※)

なお、推進要綱は「4.教育等の実施体制」の「(4)教育等の内容の充実」のハにおいて、安全衛生教育一般についてではあるが「教育等の技法は、講義方式のほか、教育等の対象者、種類等に応じ、受講者が直接参加する方式、例えば、事例研究、課題研究等の討議方式を採用する」としている。

(3)適切である。この肢も、文章の内容中に誤りの可能性のある要素はない。推進要綱において「一定年齢に達した労働者に対しては、加齢に伴う心身機能の低下の特性、心身機能に応じた安全な作業方法に関する事項についての教育等を実施する」とされている。

(4)適切である。職長教育については、法令で最低限の時間・科目を定めているが、それ以上のことをしてはならないわけではない。本肢は、何かを省略したというのではなく、たんに教育を行ったというだけであるから、誤りとなる余地はない。

なお、安衛法第60条は「新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)」に対して、作業方法の決定、労働者の配置、労働者に対する指導、監督の方法の他「労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの」を教育することとされている。そして、この「厚生労働省令で定めるもの」は安衛則第40条第1項に定められており、そこには「法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」が含まれている。この法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査とはリスクアセスメントのことである。

(5)適切である。推進要綱において「外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるように必要な日本語や基本的な合図等、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等についても習得させるように配慮する」とされている。本肢は正しい。

※ 本問の(2)について、2014年産業安全一般の問12と矛盾しているのではないかとのご質問を受けた。

討議方式は、2016年の問12の(12)では、経験や知識が浅い受講生にも適しているとなっているが、2014年の問12の(12)には適さないとなっているのではないかという疑問である。

これは、2016年の問12は「適切ではない」と断定しているのが誤りで、2014年の問12はあくまでも比較の問題として「適していない」ことは正しいという出題意図であろう。

ただ、問題文にあいまいな部分があることは否めない。

2018年10月27日執筆 2021年04月19日最終修正