労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問22

感電災害の防止対策




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問22 難易度 感電災害の防止対策に関するやや詳細な知識問題である。合否を分けるレベルか。確実に正答したい。
感電災害の防止対策

問22 感電災害の防止対策に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)露出充電部に接触し感電する場合の被害の程度は、電流の値、感電している時間、電源の種類及び通電経路によって定まる。

(2)導電性の高い液体に対して絶縁効力を有する移動電線には、キャブタイヤケーブル、クロロプレン外装ケーブルなどがある。

(3)電路を自動的に遮断する定められた装置を設置する場合などを除き、使用電圧が300 V 以下の機械器具に施す接地工事の接地抵抗値は、100 Ω以下であることが必要である。

(4)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置とは、溶接機の主回路を制御する主接点及び制御回路などを備え、溶接機の出力側無負荷電圧を自動的に100 V 以下に低下させるものである。

(5)機械の本質的安全設計方策として感電を防止するために採用する間接接触に対する感電保護としては、二重絶縁構造又は強化絶縁構造の機器を使用すること、導電性部分を保護ボンディング回路に接続した上で絶縁不良などが発生したときに電源を自動遮断する機器を備えることなどがある。

正答(4)

【解説】

(1)適切である。感電による被害の程度は、電流の値、感電している時間、電源の種類及び通電経路によって定まる。周波数が書かれていないのがやや気になるが、適切でないとまではいえないであろう。

なお、感電による被害の程度には、周波数も影響を与える。本肢では「電源の種類」に、交流と直流の別及び周波数を含めているのであろう。一般の感電に関する文献では、「電源の種類及び周波数」となっているものが多いようだ。

(2)適切である。キャブタイヤケーブルの外挿(シース)には、天然ゴム、ビニル、クロロプレンゴム製のものがある。本肢がキャブタイヤケーブルとクロロプレン外装ケーブルを、別なものとして取り上げていることにはやや違和感を受ける。

また、耐水キャブタイヤケーブルには、絶縁体とシースがビニルでできたビニルキャブタイヤケーブルが使われることが多い。一般のキャブタイヤケーブルを、水たまりの中に這わせるようなことは、あまりお勧めはできないし、建設会社によっては禁止しているケースもある。

かなり気にはなるが、適切でないとまではいえないのではなかろうか。

(3)適切である。300 V 以下の機械器具に施す接地工事は、D種接地である。D種接地工事の抵抗値は、原則として100Ω以下とする。なお、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置(漏電遮断器)を施設するときは500Ω以下であればよい。

(4)適切ではない。交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、溶接機の出力側の電圧を、アークが止まったときに一定電圧以下に下げる装置である。

交流アーク溶接機用自動電撃防止装置構造規格」ではアークが停止してから1.5秒以内に30V以下とすることが定められており、JIS C 9311では溶接電源無負荷電圧の発生後おおむね1秒以内に25V以下になることが定められている。なお、低下した電圧のことは安全電圧と呼んでいる。

(5)適切である。「機械の包括的な安全基準に関する指針」には「本質的安全設計方策」とは「ガード又は保護装置(機械に取り付けることにより、単独で、又はガードと組み合わせて使用する光線式安全装置、両手操作制御装置等のリスクの低減のための装置をいう。)を使用しないで、機械の設計又は運転特性を変更することによる保護方策をいう」とされている。

そして、同指針別表第2に本質的安全設計方策の例が挙げられており、感電については「感電を防止するため、機械の電気設備には、直接接触及び間接接触に対する感電保護手段を採用すること」とされている。

さらに、「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等」(平成19年7月31日基安安発第0731004号)には、「間接接触」とは、「短絡等の故障のために充電状態となった導電性部分に接触することをいい、間接接触に対する感電保護としては、二重絶縁構造又は強化絶縁構造の機器を使用すること、導電性部分を保護ボンディング回路に接続したうえで絶縁不良等が発生したときに電源を自動断路する機器を備えること等」であるとされている。

絶縁不良が発生しただけで(漏電していなくても)電源を自動断路できる機器などというものが存在しているとは思えないが、本肢は、通達と同じ内容であり、不適切とは言えないであろう。

2018年10月27日執筆 2020年05月12日修正