労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全一般 問06

運搬機械の安全確保




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問06 難易度 建設機械の安全に関する基本的な知識問題である。確実に正答できる必要がある。
運搬機械の安全確保

問6 運搬機械の安全確保に関する次の記述のうち、適切でないものは次のうちどれか。

(1)フォークリフトの許容荷重は、揚高と荷の重心位置によって異なる。

(2)ホイール式トラクターショベルのバケット容量は車両の安定性と密接な関係があり、バケット積載荷重が車両前方への限界転倒荷重の2分の1以下であることが安定性の基準となっている。

(3)ショベルローダーの最大荷重は、バケットの規定重心位置に荷を積載して安全に作業ができる最大の荷重をいう。

(4)ストラドルキャリヤーは、荷をまたいで抱えた状態で、長尺物やコンテナの運搬を行う車両であり、走行用制動装置、荷役装置用制動装置、方向指示器及び警報装置等を有している。

(5)フォークリフトのマスト又はフォークの傾斜角は、前傾角よりも後傾角の方が小さい。

正答(5)

【解説】

許容荷重表(荷重曲線)の例

図をクリックすると拡大します

(1)正しい。右図に示すように、マストの最大揚高が大きければ許容荷重は小さくなり、荷重中心が基準荷重中⼼を超えて前⽅に移動すれば減少する。フォークリフトの許容荷重は、マストの最大揚高と荷の荷重中⼼によって異なる。

なお、「フオークリフト構造規格」第12条(第4号)に定義があるが、許容荷重とは「フオークリフトの構造及び材料並びにフオーク等に積載する荷の重心位置に応じ負荷させることができる最大の荷重」のことである。

※ 図は厚生労働省「フォークリフト運転技能講習」日本語補助テキストより。

(2)正しい。なお、ホイール式トラクターショベルとは、トラクターにバケットを取り付けた建設用機械で、整地、積み込み、運搬作業等に用いられる装置である。

(3)正しい。ショベルローダーの最大荷重は、JIS D 6003:1995に「バケットの規定重心位置に積載して安全に作業ができる最大の荷重」とされている。なお、安衛令第20条(第十三号)に示されているように、最大荷重とは「構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重」である。

(4)正しい。ストラドルキャリヤー(※)は、荷をまたいで抱えた状態で、長尺物やコンテナの運搬を行う車両である。

※ 名古屋港統一ターミナルシステムのサイトの「荷役機械とは」の図や、国土交通省 東北地方整備局塩釜港湾・空港整備事務所のサイトの「港で働く車」の写真を参照されたい。

ストラドルキヤリヤー構造規格」によれば、原則として、走行用制動装置(第3条)、荷役装置用制動装置(第4条)、方向指示器(第9条)及び警報装置(第10条)等を有していなければならない。

(5)適切ではない。フォークリフトは走行中の荷の安定をよくするため、フォークを下ろした状態で後傾させて走行する。このため後傾角を大きくとれるようになっている。一方、前傾角は大きくする必要がないので、それほど大きくはとれない構造になっている。

なお、本問は2012年の試験問題であるが、JIS D 6001:1999に、“マスト又はフォーク傾斜角”について「マスト又はフォーク傾斜角は,アタッチメントを取り付けない状態で,表2とすることが望ましい」とされ、表2は次のようになっていた。しかし、JIS D 6001:2016からは削除されているのでご留意頂きたい。

【JIS D 6001:1999 フオークリフトトラック−安全基準】(旧基準)

表2 マストまたはフォーク傾斜角(2016年に削除)
マスト
又は
フォーク
傾斜角
種類 前傾角 後傾角
カウンタバランスフォークリフト 12
リーチフォークリフト
ストラドルフォークリフト
サイドフォークリフト
オーダピッキングトラック - -
ウォーキーフォークリフト 10

備考 オーダピッキングトラックはティルト(前傾,後傾)しないため,−とした。

2021年12月08日執筆