労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生関係法令 問09

有機溶剤中毒予防規則全般




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 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2023年度(令和5年度) 問09 難易度 やや細かい内容の肢もあり難問である。組合せ問題であることでかえって難しくなった。
有機溶剤中毒予防規則

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問9 有機溶剤等の取扱いに関する次のイ~ホの記述について、労働安全衛生法令上、誤っているもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、有機溶剤中毒予防規則による適用の除外及び設備の特例はなく、イの事業者は、労働安全衛生法に基づき労働基準監督署長への機械等の設置の届出の必要がないとの所轄労働基準監督署長の認定を受けていないものとする。

また、特別教育とは、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせるときに行う当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育をいうものとする。

イ 事業者は、有機溶剤中毒予防規則に基づき設置が必要な固定式の全体換気装置を設置しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

ロ 事業者は、タンク等の内部において第二種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

ハ 事業者は、屋内作業場等において第一種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務に労働者を常時従事させるときは、当該労働者に対し、特別教育を行わなければならない。

ニ 事業者は、屋内作業場等において第二種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示し、色分けによる表示は黄色としなければならない。

ホ 事業者は、有機溶剤等を屋内に貯蔵するときは、その貯蔵場所に、貯蔵に関係する者以外の者がその貯蔵場所に立ち入ることを防ぐ設備を設けるとともに、有機溶剤の蒸気が屋外に漏れ出ないよう、その貯蔵場所を密閉構造としなければならない。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ホ

(3)ロ  ニ

(4)ハ  ニ  ホ

(5)ハ  ホ

正答(5)

【解説】

問9試験結果

試験解答状況
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イ 正しい。安衛法第 88 条第1項及び安衛則第 85 条(別表第7第十三号)により、事業者は、有機溶剤中毒予防規則に基づき設置が必要な固定式の全体換気装置を設置しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の 30 日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

【労働安全衛生法】

(計画の届出等)

第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。

2~7 (略)

【労働安全衛生規則】

(計画の届出をすべき機械等)

第85条 法第88条第1項の厚生労働省令で定める機械等は、法に基づく他の省令に定めるもののほか、別表第七の上欄に掲げる機械等とする。ただし、別表第七の上欄に掲げる機械等で次の各号のいずれかに該当するものを除く。

一及び二 (略)

別表第七 (第八十五条、第八十六条関係)

事項 事項 事項
(略) (略) (略)

十三 有機則第5条又は第6条(特化則第38条の8においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置(移動式のものを除く。)

一 有機溶剤業務(有機則第1条第1項第六号に掲げる有機溶剤業務をいう。以下この項において同じ。)の概要

二 有機溶剤(令別表第六の二に掲げる有機溶剤をいう。以下この項において同じ。)の蒸気の発散源となる機械又は設備の概要

三 有機溶剤の蒸気の発散の抑制の方法

四 有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備にあつては、密閉の方式及び当該設備の主要部分の構造の概要

五 全体換気装置にあつては、型式、当該装置の主要部分の構造の概要及びその機能

一 設備等の図面

二 有機溶剤業務を行う作業場所の図面

三 局所排気装置にあつては局所排気装置摘要書(様式第二十五号)

四 プッシュプル型換気装置にあつてはプッシュプル型換気装置摘要書(様式第二十六号)

(略) (略) (略)

ロ 正しい。安衛法第 66 条第2項、安衛令第 22 条第1項(第六号)及び有機則第 29 条により、タンク等の内部において第二種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、所定の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

なお、安衛令第 22 条第1項第六号の「別表第六の二に掲げる有機溶剤」は、第1種、第2種及び第3種有機溶剤をすべて含んでいる。また、有機則第29条第1項の「屋内作業場等」にはタンクの内部を含んでいる(同規則第2条第一号の定義参照)。

【労働安全衛生法】

(騒音を発する場所の明示等)

第66条 (第1項 略)

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

3~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(騒音を発する場所の明示等)

第22条 法第66条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの

2及び3 (略)

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 (第1項 略)

 (柱書 略)

一及び二 (略)

 タンクの内部

四~十一 (略)

(適用の除外)

第2条 (柱書 略)

 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)(以下略)

 (略)

 (略)

(健康診断)

第29条 令第22条第1項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。

 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

一~四 (略)

3~6 (略)

ハ 誤り。特化則、有機則関係で「特別教育」とあったら、誤りだと覚えておく。特別教育が必要な業務は安衛則第 36 条に定められているが、有機溶剤を取り扱い業務は定められていない。

ニ 正しい。有機則第25条により、屋内作業場等において第二種有機溶剤等を用いて行う有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示し、色分けによる表示は黄色としなければならない。

この肢を誤った受験生が多い。第2種の色分けが黄色であることは基本的な知識であるから、「色分け及び色分け以外の方法」で迷ったのだろうか。ただ、現実的に考えれば、色だけ表示してあっても(例えば、【有機溶剤■】とだけ表示してあるような場合。)それを見ても労働者には何のことだか分からないだろう。

【有機溶剤中毒予防規則】

(計画の届出をすべき機械等)

第25条 事業者は、屋内作業場等において有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。

 前項の色分けによる表示は、次の各号に掲げる有機溶剤等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める色によらなければならない。

 第一種有機溶剤等 赤

 第二種有機溶剤等 黄

 第三種有機溶剤等 青

ホ 誤り。有機溶剤の貯蔵場所を密閉構造としたら、かえってそこに入る労働者の健康影響を害することになりかねない。有機則第 35 条により、有機溶剤等を屋内に貯蔵するときは、その貯蔵場所に、有機溶剤の蒸気を屋外に排出する設備を設けなければならない。なお、貯蔵に関係する者以外の者がその貯蔵場所に立ち入ることを防ぐ設備を設けることは正しい。

【有機溶剤中毒予防規則】

(有機溶剤等の貯蔵)

第35条 事業者は、有機溶剤等を屋内に貯蔵するときは、有機溶剤等がこぼれ、漏えいし、しみ出し、又は発散するおそれのない蓋又は栓をした堅固な容器を用いるとともに、その貯蔵場所に、次の設備を設けなければならない。

 当該屋内で作業に従事する者のうち貯蔵に関係する者以外の者がその貯蔵場所に立ち入ることを防ぐ設備

 有機溶剤の蒸気を屋外に排出する設備

2023年12月01日執筆