労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生関係法令 問08

労働安全衛生法の衛生基準




問題文
トップ
受験勉強に打ち込む

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和5年度) 問08 難易度 安衛則の衛生基準は、例年同様に、やや細かい内容もあるが基本的なレベルの問題。
衛生基準

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 労働安全衛生規則の衛生基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)事業者は、強烈な騒音を発する屋内作業場における業務に労働者を従事させるときは、当該作業場が強烈な騒音を発する場所であることを、見やすい箇所に標識によつて明示する等の措置を講ずるとともに、耳栓その他の保護具を備えなければならない。

(2)事業者は、著しく多湿な場所で労働者を従事させるときは、関係者以外の者が立ち入ることを禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により、立入りを禁止しなければならない。

(3)事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、屋内又は屋外にかかわらず、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。

(4)事業者は、有害物による汚染のおそれがある床及び周壁を、不浸透性の材料で塗装し、かつ、排水に便利な構造としなければならず、また、必要に応じ、洗浄しなければならない。

(5)事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身若しくはうがいの設備、更衣設備又は洗濯のための設備を設けなければならない。

正答(2)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

(1)正しい。強烈な騒音を発する屋内作業場における業務に労働者を従事させるときは、安衛則第583条の2により、当該作業場が強烈な騒音を発する場所であることを、見やすい箇所に標識によって明示する等の措置を講ずる必要がある。また、同規則第595条第1項により、耳栓その他の保護具を備えなければならない。

なお、本肢に示されていることが騒音による労働災害防止に効果があることは分かるだろう。だとすれば、仮に、これが誤りの肢だとすると、労働災害防止のために効果のある措置が安衛則に定められていないことになる。そのような問題を厚生労働省の所轄する国家試験で出題するわけがないのである。

【労働安全衛生規則】

(騒音を発する場所の明示等)

第583条の2 事業者は、強烈な騒音を発する屋内作業場における業務に労働者を従事させるときは、当該屋内作業場が強烈な騒音を発する場所であることを、見やすい箇所に標識によつて明示する等の措置を講ずるものとする。

(騒音障害防止用の保護具)

第595条 事業者は、強烈な騒音を発する場所における業務においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、耳栓その他の保護具を備えなければならない。

2~4 (略)

(2)誤り。安衛則第585条その他の立入禁止に関する規定は、著しく多湿な場所は含まれていない。常識的に考えても、たんに多湿なだけの場所について、立入禁止までする必要はないだろう。そんなことをすれば、宿泊業の事業者は、サウナ風呂も無関係な従業員の立入を禁止しなければならなくなる。

なお、安衛則第587条は「多量の蒸気を使用する金属又は非金属の洗浄又はめつきの業務を行なう屋内作業場」について作業環境測定を義務付けており、同規則第606条は「暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない」としている。多湿な環境を是認しているわけではない。

【労働安全衛生規則】

(立入禁止等)

第585条 事業者は、強烈な騒音を発する屋内作業場における業務に労働者を従事させるときは、当該屋内作業場が強烈な騒音を発する場所であることを、見やすい箇所に標識によつて明示する等の措置を講ずるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う場所又は著しく暑熱な場所

 多量の低温物体を取り扱う場所又は著しく寒冷な場所

 有害な光線又は超音波にさらされる場所

 炭酸ガス濃度が一・五パーセントを超える場所、酸素濃度が十八パーセントに満たない場所又は硫化水素濃度が百万分の十を超える場所

 ガス、蒸気又は粉じんを発散する有害な場所

 有害物を取り扱う場所

 病原体による汚染のおそれの著しい場所

 (略)

(3)正しい。安衛則第617条は、屋内又は屋外の区別をしていない。事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、屋内又は屋外にかかわらず、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。

本肢のような措置を屋外と屋内で区別する合理的な理由はないだろう。屋内で汗をかこうが、屋外で汗をかこうが、対策の必要性は同じである。

【労働安全衛生規則】

(発汗作業に関する措置)

第617条 事業者は、多量の発汗を伴う作業場においては、労働者に与えるために、塩及び飲料水を備えなければならない。

(4)正しい。有害物による汚染のおそれがある床及び周壁は、安衛則第623条により、不浸透性の材料で塗装し、かつ、排水に便利な構造としなければならない。また、同規則第622条により、必要に応じ、洗浄しなければならない。

本肢は、疑わしい要素が見当たらない(※)。すなわち、仮に本肢が誤りの肢だとすると、全くの架空の規定だということになる。しかし、出題者の側になってみると、労働安全衛生法以外の法令でそのような規定を定めている可能性が否定しきれないので、全くの架空の規定を出題する問題は作りにくいのである。

※ せいぜい「不浸透性の材料で塗装し」が、正しくは「不浸透性の材料で造り」ではないかという疑いがある程度だろう。しかし、「不浸透性の材料で造り」が正しいとすると、事業者が一般の倉庫に有害物を持ち込もうとすると、場合によっては床及び周壁を取り換えなければならなくなる。そこまで義務付ける必要性は低いと気付く必要がある。

このような疑わしい要素が見当たらない肢は、正しい肢である可能性が高い。

【労働安全衛生規則】

(汚染床等の洗浄)

第622条 事業者は、有害物、腐敗しやすい物又は悪臭のある物による汚染のおそれがある床及び周壁を、必要に応じ、洗浄しなければならない。

(床の構造等)

第623条 事業者は、前条の床及び周壁並びに水その他の液体を多量に使用することにより湿潤のおそれがある作業場の床及び周壁を、不浸透性の材料で塗装し、かつ、排水に便利な構造としなければならない。

(5)正しい。安衛則第625条第1項により、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身若しくはうがいの設備、更衣設備又は洗濯のための設備を設けなければならない。

ここで、「若しくは」「又は」となっているのが怪しいと思うかもしれない。これは、必ずしもすべてを備える必要がない場合があるので、「若しくは」「又は」となっているのである。いずれかひとつを備えればよいという趣旨の規定ではない。

【労働安全衛生規則】

(洗浄設備等)

第625条 事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼、洗身若しくはうがいの設備、更衣設備又は洗たくのための設備を設けなければならない。

 (略)

2023年12月01日執筆