労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生関係法令 問03

危険物及び有害物に関する規制




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 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和5年度) 問03 難易度 やや細かいことを問うている。学習の時間によって差がつく問題。
有害物に関する規制

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 危険物及び有害物に関する規制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の5パーセントを超えるものを製造しようとする者は、あらかじめ、厚隼労働大臣の許可を受けなければならない。

(2)ベリリウムの化合物を製造しようとする者は、あらかじめ、当該化合物を製造する場所を所轄する都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

(3)新規化学物質を試験研究のために製造しようとする者は、一つの事業場における1年間の4製造量が100キログラムを超えるときは、あらかじめ、当該新規化学物質の有害性の調査(当該有害化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう。)を行い、厚生労働大臣に届け出なければならない。

(4)名称等を表やすべき有害物を容器(一般消費者の生活の用に供するためのものを除く。)に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器に名称等を表示しなければならない。

(5)名称等を表示すべき有害物を二つ以上含有する混合物を容器(一般消費者の生活の用に供するためのものを除く。)に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装に当該有害物の成分及び含有量を表示しなければならない。

正答(4)

【解説】

問3試験結果

試験解答状況
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(1)誤り。安衛令第16条第2項により、ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の5パーセントを超えるものを製造しようとする者は、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

譲渡等が禁止されているので、他の都道府県にその化学物質が移動するおそれがないことから、都道府県労働局長の許可でよい(都道府県労働局長が知っていればよい)のである。

【労働安全衛生法】

(製造等の禁止)

第55条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。

【労働安全衛生法施行令】

(製造等が禁止される有害物等)

第16条 法第55条の政令で定める物は、次のとおりとする。

一~七 (略)

 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の5パーセントを超えるもの

 (略)

 法第55条ただし書の政令で定める要件は、次のとおりとする。

 製造、輸入又は使用について、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けること。この場合において、輸入貿易管理令(昭和24年政令第414号)第9条第1項の規定による輸入割当てを受けるべき物の輸入については、同項の輸入割当てを受けたことを証する書面を提出しなければならない。

 (略)

(2)誤り。安衛法第 56 条(安衛令第 17 条)により、ベリリウムの化合物を製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

製造許可物質(第1類特定化学物質)は、譲渡されて全国的に移動する可能性があるので、厚生労働大臣の許可が必要となるのである。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第56条 ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるものを製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない

2~6 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(製造の許可を受けるべき有害物)

第17条 法第56条第1項の政令で定める物は、別表第三第一号に掲げる第一類物質及び石綿分析用試料等とする。

別表第3 特定化学物質(第六条、第十五条、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 (略)

1~5 (略)

 ベリリウム及びその化合物

7及び8 (略)

二及び三 (略)

(3)誤り。安衛法第 57 条の4第1項但書(第三号)により、新規化学物質を試験研究のために製造しようとする者は、当該新規化学物質の有害性の調査を行う必要はない。

法制定のとき、試験研究のために製造されるものについて、いちいち有害性を調査していては試験研究活動を阻害すると考えられたのである。もちろん、その背景には、試験研究のために化学物質を取り扱う者は、化学物質の有害性とその取扱い方について、一定の知識があるだろうと考えられた=現実にはそうでもないが=ことも理由の一つである。

【労働安全衛生法】

(化学物質の有害性の調査)

第57条の4 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第3項の規定によりその名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない。

一及び二 (略)

 当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき。

 (略)

2~5 (略)

(4)正しい。安衛法第 57 条第1項により、名称等を表やすべき有害物を容器(一般消費者の生活の用に供するためのものを除く。)に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器に名称等を表示しなければならない。

容器に入れてさらに包装する場合、内側の容器の方に表示をする。これは、包装をはがされて容器の状態で事業場で用いられるときに、包装ではなく容器に表示がないと、それを扱う労働者が表示を見ることができないからである。

【労働安全衛生法】

(表示等)

第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

 次に掲げる事項

 名称

 人体に及ぼす作用

 貯蔵又は取扱い上の注意

 からハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 (略)

 (略)

(5)誤り。安衛法第57条第1項(及び安衛則第33条)により、名称等を表示すべき有害物を二つ以上含有する混合物を容器(一般消費者の生活の用に供するためのものを除く。)に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する場合であっても、その容器又は包装に当該有害物の成分及び含有量を表示しなければならないとはされてない。

表示の制度が始まった当初は、表示対象物質はあまり多くなかったため成分の表示を義務付けていた。その後、その対象をすべての文書交付(SDS)義務の対象物質まで拡げたときに、すべての成分を表示することは数が多くなりすぎて現実的ではないとして、義務が外れたのである(※)

※ その時点では、通達で主要な成分などは表示することが望ましいとしていたのだが、自律的管理のための法令改正時に対象となる化学物質数が 2,900 種類まで増えることとなったため、通達の該当部分も削除されている。

【労働安全衛生法】

(表示等)

第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

 次に掲げる事項

 名称

 人体に及ぼす作用

 貯蔵又は取扱い上の注意

 イからハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 イからハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 (略)

【労働安全衛生規則】

第33条 法第五十七条第一項第一号ニの厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。

 法第五十七条第一項の規定による表示をする者の氏名(法人にあつては、その名称)、住所及び電話番号

 注意喚起語

 安定性及び反応性

2023年11月26日執筆