労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生一般 問08

騒音性難聴




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和05年度) 問08 難易度 騒音性難聴に関する知識問題。いずれも過去問の学習で対応可能。確実に正答できなければならない。
騒音性難聴

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 騒音性難聴に関する次のイ~ニの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ 大きな音に長期間さらされ、内耳の有毛細胞が障害されて生じる。

ロ 聴力低下の左右差が大きい。

ハ 初期変化として、4,000Hz付近のdip型の聴力低下が生じる。

ニ 効果的な治療法が既に確立されている。

(1)イ   ロ

(2)イ   ハ

(3)イ   ニ

(4)ロ   ハ

(5)ハ   ニ

正答(2)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
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イ 正しい。和田哲郎「騒音性難聴による生活の質と労働生産性の低下を防ぐ予防から発症後まで俯瞰したデータ収集と現場の支援に関する研究」の「騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版」(以下「Q&A」という。)の Q1-1 に次のように記載されている。

【騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版】

Q1-1 騒音の人体への影響を教えてください。

A (前略)そもそも、音は外耳道を経由して鼓膜を振動させ、その振動エネルギーが中耳にある小さな骨(耳小骨)を介して内耳(蝸牛)に伝えられます(図 1-1)。蝸牛には音を感じるための感覚細胞(有毛細胞 図 1-2)があり、振動を電気的エネルギーに変換して神経に伝えます。しかし音振動が強すぎると有毛細胞が障害され機能しなくなります。特に、外側に3列に並ぶ外有毛細胞が障害され、音を感じる働きが低下し、難聴(感音難聴)になります。音が原因で生じる難聴には2種類あります。極めて大きな音によって短時間で起こる急性の難聴(音響外傷あるいは急性音響性難聴)と5~15 年以上の長期間騒音にさらされたことによって起こる慢性の難聴(騒音性難聴)です。騒音性難聴は大きな音に長期間さらされたことによって起こる外有毛細胞障害に伴う慢性の感音難聴です。

※ 和田哲郎「騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版」(2018年3月)

ロ 誤り。Q&A の次の記述にもあるように、騒音の影響は、左右同時に受けるケースが多い。聴力低下の左右差が大きいケースは多くはないだろう。

【騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版】

Q5-11 選別聴力検査で片側だけ所見ありとなりました。どうすればよいですか。

A (前略)騒音性難聴では通常左右がほぼ対称な難聴になりますが、発症の初期には左右の聴力に差がみられることもあります。気導純音聴力検査では所見なしであった耳の方にもわずかな聴力低下が認められるかもしれません。

  もう一つ考えられるのは騒音以外の難聴が生じている可能性です。耳鼻咽喉科専門医(可能であれば騒音性難聴担当医)(Q5-2 参照)に評価してもらうように指示してください。

※ 和田哲郎「騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版」(2018年3月)

ハ 正しい。初期変化として、4,000Hz付近のdip型の聴力低下が生じる。

【騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版】

Q7-6 4,000Hz で所見ありです。一般の労働者と同じ指導でよいですか。

A 騒音性難聴の初期変化として 4,000 Hz 付近の dip 型の難聴が生じます。すでに所見ありであれば、当該作業者は要観察者(前駆期の症状が認められる者)に該当し、それに対する事後措置(Q6-1 参照)が必要です。第Ⅱ管理区分(85~90 dB(A))の場所であっても防音保護具の使用を励行させるほか、必要な措置を講ずることとなっています。健耳を守り、今後の進行を防ぐために、所見のない労働者よりも厳重な措置を講じる必要があることを当該労働者に教育する必要があります。

※ 和田哲郎「騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A 第2版 web版」(2018年3月)

ニ 誤り。昭和61年3月18日基発第149号「騒音性難聴の認定基準について」の「解説」に、「なお、認定の対象となる如き騒音性難聴の治療については、現在までのところ、有効治療法が確立されていないため、その治療は必要な療養とは認められない」とされている。

【「騒音性難聴の認定基準について」の解説】

(解説)

1.騒音性難聴の病態

 (略)

 なお、認定の対象となる如き騒音性難聴の治療については、現在までのところ、有効治療法が確立されていないため、その治療は必要な療養とは認められない。

※ 昭和61年3月18日基発第149号「騒音性難聴の認定基準について
2024年01月17日執筆