問14 建築物の解体の作業を行う場合において、当該建築物に張り付けられている石綿含有保温材を切断し、除去を行う作業で、石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものに労働者を従事させるときの措置として、石綿障害予防規則に定められていないものは次のうちどれか。
(1)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離すること。
(2)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所にろ過集じん方式の集じん・排気装置を設け、排気を行うこと。
(3)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること。
(4)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所及び作業場所の出入口に設置した前室を負圧に保つこと。
(5)その日の作業を開始する前及び作業を中断したときは、石綿含有保温材の除去を行う作業場所が負圧に保たれていることを点検すること。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2021年度(令和3年度) | 問14 | 難易度 | 石綿則によるばく露防止対策のやや詳細な事項についての問題である。難問だったようだ。 |
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石綿障害予防規則 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問14 建築物の解体の作業を行う場合において、当該建築物に張り付けられている石綿含有保温材を切断し、除去を行う作業で、石綿等の粉じんを著しく発散するおそれのあるものに労働者を従事させるときの措置として、石綿障害予防規則に定められていないものは次のうちどれか。
(1)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離すること。
(2)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所にろ過集じん方式の集じん・排気装置を設け、排気を行うこと。
(3)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること。
(4)石綿含有保温材の除去の作業を行う作業場所及び作業場所の出入口に設置した前室を負圧に保つこと。
(5)その日の作業を開始する前及び作業を中断したときは、石綿含有保温材の除去を行う作業場所が負圧に保たれていることを点検すること。
正答(5)
【解説】
石綿則第6条第2項に関する設問である。正答は(5)で、同項第七号が「前室が負圧に保たれていることを点検」とされているのを「作業場所が負圧に保たれていることを点検」と変えて、誤り(=定められていない)肢としたものである。
条文としては、確かに誤っており、その意味では「定められていない」のだが、石綿則改正の経緯を知らないと正答できないのではないか。コンサルタントとしては、隔離空間が負圧に保たれていることを確認しなければならないことを知っていればよいのであって、コンサルタントの試験問題として適切なのかやや疑問も感じる。
【石綿障害予防規則】
(作業の届出)
第5条 事業者は、次に掲げる作業を行うときは、あらかじめ、様式第一号の二による届書に当該作業に係る解体等対象建築物等の概要を示す図面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
一 (略)
二 解体等対象建築物等に張り付けられている石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材(耐火性能を有する被覆材をいう。)等(以下「石綿含有保温材等」という。)の除去、封じ込め又は囲い込みの作業(石綿等の粉じんを著しく発散するおそれがあるものに限る。)
2 (略)
(吹き付けられた石綿等及び石綿含有保温材等の除去等に係る措置)
第6条 事業者は、次の作業に労働者を従事させるときは、適切な石綿等の除去等に係る措置を講じなければならない。ただし、当該措置と同等以上の効果を有する措置を講じたときは、この限りでない。
一 (略)
二 前条第一項第二号に掲げる作業(石綿含有保温材等の切断等の作業を伴うものに限る。)
2 前項本文の適切な石綿等の除去等に係る措置は、次に掲げるものとする。
一 前項各号に掲げる作業を行う作業場所(以下この項において「石綿等の除去等を行う作業場所」という。)を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離すること。
二 石綿等の除去等を行う作業場所にろ過集じん方式の集じん・排気装置を設け、排気を行うこと。
三 石綿等の除去等を行う作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること。これらの室の設置に当たっては、石綿等の除去等を行う作業場所から労働者が退出するときに、前室、洗身室及び更衣室をこれらの順に通過するように互いに連接させること。
四 石綿等の除去等を行う作業場所及び前号の前室を負圧に保つこと。
五 第一号の規定により隔離を行った作業場所において初めて前項各号に掲げる作業を行う場合には、当該作業を開始した後速やかに、第二号のろ過集じん方式の集じん・排気装置の排気口からの石綿等の粉じんの漏えいの有無を点検すること。
六 第二号のろ過集じん方式の集じん・排気装置の設置場所を変更したときその他当該集じん・排気装置に変更を加えたときは、当該集じん・排気装置の排気口からの石綿等の粉じんの漏えいの有無を点検すること。
七 その日の作業を開始する前及び作業を中断したときは、第三号の前室が負圧に保たれていることを点検すること。
八 前三号の点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに前項各号に掲げる作業を中止し、ろ過集じん方式の集じん・排気装置の補修又は増設その他の必要な措置を講ずること。
3 (略)
(1)定められている。石綿則第6条第2項第一号に「作業を行う作業場所(中略)を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離すること」とされている。
(2)定められている。同第二号に「石綿等の除去等を行う作業場所にろ過集じん方式の集じん・排気装置を設け、排気を行うこと」とされている。
(3)定められている。同第三号に「石綿等の除去等を行う作業場所の出入口に前室、洗身室及び更衣室を設置すること」とされている。
(4)定められている。同第四号に「石綿等の除去等を行う作業場所及び前号の前室を負圧に保つこと」とされている。
(5)定められていない。同第七号には「その日の作業を開始する前及び作業を中断したときは、第三号の前室が負圧に保たれていることを点検すること」とされている。石綿含有保温材の除去を行う作業場所が負圧になっていることを確認することとはされていない。
前室が負圧になっていることを確認すれば、作業場所も負圧になっていることが確認できるのである。前室を負圧にする方法は、プラスチックシート等で隔離した作業場内を集じん・排気装置で負圧化し、気流が前室から作業場所へ流入するようにして、前室も負圧になるようにしているからである。
ただし、環境省の「石綿含有建材除去作業等チェックリスト」の210頁に挙げられている「1.特定建築材料除去工事チェックリスト1(作業場隔離を行う場合)準備作業」では、チェック項目のひとつに「マイクロマノメーター(精密微差圧計)を用い、セキュリティーゾーン及び作業場内の負圧を確認しているか
」が挙げられている(※)。実務においては作業場内の負圧も確認するべきであろう。
※ セキュリティゾーンとは、隔離空間の出入口に設置される、更衣室、洗面室及び前室の3つの室のことである。これらの3室は、更衣室、洗面室、前室の順に連続して配置され、前室は、作業場に直接接続される。