労働衛生コンサルタント試験 2020年 労働衛生一般 問25

労働衛生保護具




問題文
トップ
合格

 このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2020年度(令和2年度) 問25 難易度 労働衛生保護具は例年出題されており、基本的な内容の知識問題である。正答できなければならない。
労働衛生保護具

問25 労働衛生保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)放射性物質による汚染のおそれのある区域内の作業で、オイルミストが混在する場合に使用する防じんマスクの区分はRS3である。

(2)有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、メタノール、二硫化炭素については、除毒能力試験の試験用ガスに比べて破過時間が著しく短くなる。

(3)電動ファン付き呼吸用保護具は、酸素濃度が18%未満の場所では使用できない。

(4)着用者の感覚では、有毒ガス等の危険性を感知できないおそれがあるので、吸収缶の破過を知るために、有毒ガス等の臭いに頼るのは、適切ではない。

(5)防じんマスクの装着の際、面体と顔面の密着性を高めるため、原則として、面体の接顔部に、接顔メリヤスを装着して使用してはならない。

※ 出題当時から通達が変更されたため、一部の肢の正誤が異なることとなった。このため、一部の選択肢を通達に合わせて変更した。

正答(1)

【解説】

(1)適切ではない。放射性物質に限らず、オイルミストが存在する場合にはRS3を使用することはできない。詳細は本サイトの「保護具の基本(ECETOC TRA の入力項目 APF を含めて)を解説する」か「事前チェック労働衛生保護具の種類と性能」を参照して頂きたい。

なお、本問出題当時は有効であった平成17年2月7日基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」(以下「防じんマスク通達」という。)(※)別紙は、「放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業又は緊急作業において使用する防じんマスク放射性物質による汚染のおそれのある区域内の作業で、オイルミストが混在する場合に使用する防じんマスク」の区分は、オイルミスト等が混在する場合はRL3であるとしていた。

※ 防じんマスク通達は、令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下「保護マスク通達」という。)によって廃止されている。なお、「保護マスク通達」では、該当部分の記述は削除されている。

(2)適切である。(1)に示した「保護マスク通達」の第3の1の(5)のカに「メタノール、ジクロロメタン、二硫化炭素、アセトン等に対する破過時間は、防毒マスクの規格第7条及び改正規格第7条に規定される除毒能力試験の試験用ガスによる破過時間と比べて著しく短くなるので注意すること」とされている。

なお、出題当時は有効であった平成17年2月7日基発第0207007号「防毒マスクの選択、使用等について」(以下「防毒マスク通達」という。)でも第1の2の(2)のイの(ウ)に「メタノール、ジクロルメタン、二硫化炭素、アセトン等については、試験用ガスに比べて破過時間が著しく短くなるので注意すること」とされており、出題当時も正しい肢であった。

(3)適切である。当然であろう。電動ファン付き呼吸用保護具は「ろ過式」であり、酸素を供給する能力はない。酸素濃度が18%未満の場所(酸素欠乏環境)では使用できない。

(4)適切である。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下「保護マスク通達」という。)の第3の2の(1)のウに「着用者の感覚では、有毒ガス等の危険性を感知できないおそれがあるので、吸収缶の破過を知るために、有毒ガス等の臭いに頼るのは、適切ではないこと」とされている。

なお、本肢は出題当時は、「(4)アセトンや酢酸エチルなど、臭気を感知できる濃度がばく露限界濃度より著しく小さい物質は、防毒マスクの使用中に臭気を感知したときを、吸収缶の交換時期とすることができる。」と逆の趣旨になっていたが、当時としては正しい肢であった。

これは、「防毒マスク通達」の第1の3の(4)に「従来から行われているところの、防毒マスクの使用中に臭気等を感知した場合を使用限度時間の到来として吸収缶の交換時期とする方法は、有害物質の臭気等を感知できる濃度がばく露限界濃度より著しく小さい物質に限り行っても差し支えない」として、アセトンや酢酸エチルなどを例に挙げていたためである。

この「防毒マスク通達」は、「保護マスク通達」によって廃止され、「保護マスク通達」では本文に示した表現に改められたため、問題文を訂正したものである。

(5)適切である。面体と顔面の密着性を高めるため、原則として、面体の接顔部に、接顔メリヤス等を装着して使用することは望ましくない。

なお、(1)の解説に示した「防じんマスク通達」の第1の3の(5)のイに、「防じんマスクの装着の際、面体と顔面の密着性を高めるため、原則として、面体の接顔部に、接顔メリヤスを装着して使用してはならない」とされていた。この表現は新しい「保護マスク通達」ではなくなっているが、誤りとは言えないので適切であるとした。

【防じんマスクの選択、使用等について】

第1 事業者が留意する事項

 防じんマスクの使用に当たっての留意事項

(5)次のような防じんマスクの着用は、粉じん等が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるため、行わせないこと。

 面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用すること。ただし、防じんマスクの着用により皮膚に湿しん等を起こすおそれがある場合で、かつ、面体と顔面との密着性が良好であるときは、この限りでないこと。

2020年12月06日執筆 2023年12月16日改訂