労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生関係法令 問08

長時間労働者に対する面接指導




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問08 難易度 条文問題であるが、かなり基本的なことを問うている。確実に正答したい問題である。
面接指導

問8 長時間労働者に対して事業者が行う面接指導に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。なお、本問において、時間外・休日労働時間とは、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいうものとする。

イ 事業者は、1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者を対象とし、当該労働者の申出により、医師による面接指導を行わなければならない。

ロ 労働者は、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合は、他の医師の行う面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出することができる。

ハ 事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、面接指導が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。

ニ 事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。

(1)イ   ロ

(2)イ   ハ

(3)ロ   ハ

(4)ロ   ニ

(5)ハ   ニ

正答(4)

【解説】

以下により、(4)が正答となる。

イ 誤り。安衛法第66条の8第1項による面接指導の対象となる労働者は、安衛則第52条の2第1項の規定により、1か月当たりの時間外休日労働時聞が80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者である。100時間ではない。一方、その実施方法として、同規則第52条の3の規定に基づき、当該労働者の申出により行うことは正しい。

なお、安衛法第66条の8の2の労働者(新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する労働者)及び安衛法第66条の8の2の労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者)については、安衛法第66条の8の対象から除かれているが、これらの者の面接指導については時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超える者が対象となる。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2~5 (略)

第66条の8の2 事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 (略)

第66条の8の4 事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(面接指導の対象となる労働者の要件等)

第52条の2 法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前一月以内に法第六十六条の八第一項又は第六十六条の八の二第一項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第六十六条の八第一項に規定する面接指導(以下この節において「法第六十六条の八の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。

2及び3 (略)

(面接指導の実施方法等)

第52条の3 法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。

2~4 (略)

第52条の7の2 法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。

 (略)

第52条の7の4 法第六十六条の八の四第一項の厚生労働省令で定める時間は、一週間当たりの健康管理時間(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第四十一条の二第一項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が四十時間を超えた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。

 (略)

ロ 正しい。安衛法第66条の8第2項のままである。なお、この規程は、事業者の指定する医師では労働者の不利になるような指導を行う恐れがあるために認められた規定だと考えるべきである。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない

3~5 (略)

ハ 誤り。安衛法第66条の8第4項及び安衛則第52条の7により、事業者は、面接指噂の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、面接指導が行われたときから遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。この「遅滞なく」とは、「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について」(平成18年2月24日基発第0224003号)によれば「遅くとも面接指導を実施してから概ね1月以内に行うこと」(Ⅳの第2の12の(5)/リンク先の21頁17行)とされている。3月では「遅滞なく」とは言えない。

【労働安全衛生法】

(面接指導等)

第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2及び3 (略)

 事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(面接指導の結果についての医師からの意見聴取)

第52条の7 法第六十六条の八の面接指導の結果に基づく法第六十六条の八第四項の規定による医師からの意見聴取は、当該法第六十六条の八の面接指導が行われた後(同条第二項ただし書の場合にあつては、当該労働者が当該法第六十六条の八の面接指導の結果を証明する書面を事業者に提出した後)、遅滞なく行わなければならない。

ニ 正しい。安衛則第52条の6第1項により、事業者は面接指導の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。また、記録すべき事項は同条第2項及び同規則第第52条の5の規定により、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の緒果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見である。

【労働安全衛生規則】

(面接指導結果の記録の作成)

第52条の5 (略)

 実施年月日

 当該労働者の氏名

 法第六十六条の八の面接指導を行つた医師の氏名

 当該労働者の疲労の蓄積の状況

 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

(面接指導結果の記録の作成)

第52条の6 事業者は、法第六十六条の八の面接指導(法第六十六条の八第二項ただし書の場合において当該労働者が受けたものを含む。次条において同じ。)の結果に基づき、当該法第六十六条の八の面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。

 前項の記録は、前条各号に掲げる事項及び法第六十六条の八第四項の規定による医師の意見を記載したものでなければならない

2019年11月30日執筆 2021年09月16日加筆修正