労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生一般 問15

高年齢労働者の特性




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 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問15 難易度 加齢に伴う機能低下は、近年の産業保健にとっては重要な課題。確実に正答できるようにしたい。
高年齢労働者の特性

問15 高年齢労働者についての次の記述のうち、正しいもののみを全て挙げたものは(1)〜(5)のうちどれか。

イ 加齢による記憶力の低下に比べて、情報を総合的に処理する能力は比較的長く維持される。

ロ 加齢による運動機能、感覚機能、平衡機能等の低下は、労働災害の発生に影響を与える。

ハ 疲労が蓄積しやすく、疲労が心身の健康に影響しやすいため、慢性疲労や過労状態にならないよう留意することが必要である。

ニ 新たな環境への適応や新しい技術の習得が難しいため、業務量やその内容を各人の健康レベルや業務の習熟度に合ったものに調整する必要がある。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ロ  ハ  ニ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ロ  ハ  ニ

正答(2)

【解説】

このような問いでは、「すべて正しい」とか「すべて正しくない」という肢を選択するのはやや勇気がいるかもしれない。

しかし、選択肢にある以上、それが正答ということがあり得ることは当然である。このようなことで間違えないようにしよう。

イ 必ずしも誤っているとは言い切れない。

「記憶力の低下」は記憶能力の種類によっても異なる。いわゆる「意味記憶」は加齢によって低下しないし、「手続き記憶」も比較的影響を受けない。しかし、人の名前などの記憶は大きく低下する。

一方、「情報を総合的に処理する能力」をどのように理解するかにもよるが、これを「認知機能」と考えると、これは流動性知能と結晶性知能の2側面に分かれ、60歳台前半までは大きく低下することはない。流動性知能はその後低下が始まり、結晶性知能は74歳までに低下が始まる。しかし、このことは日常生活の場面においてはさほどマイナスの影響を与えない。

必ずしも明確ではないが、本肢は正しいとしておく。

ロ 正しい。当然のことである。転倒災害、墜落災害、災害性の腰痛などは、年齢が高いほど災害を起こすリスクが高くなる。

ハ 正しい。高年齢者でも疲労が蓄積しやすいかどうかは個人によるが、慢性疲労や過労状態にならないよう留意することが必要なのは当然のことである。

ニ 誤っているとは言い切れない。本問の高年齢労働者が何歳からをいうのか必ずしも明確ではないが、個人的には、少なくとも60歳代前半までなら、新たな環境への適応や新しい技術の習得が難しいとは思わない。しかし、業務量やその内容を各人の健康レベルや業務の習熟度に合ったものに調整する必要があることは正しいだろう。

2019年12月07日執筆