労働衛生保護具 2017年 労働衛生一般 問27

労働衛生統計




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問27 難易度 わが国の労働衛生の現状に関する基本的な知識問題。頻出事項でもあり、確実に正答するべき問題。
労働衛生統計

問27 我が国の労働衛生統計に関する次のイ~ニの記述について、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 厚生労働省の「定期健康診断結果調」によると、常時50人以上の労働者を使用する事業場における定期健康診断において、所見のあった者の割合(有所見率)は、近年は30%台で推移している。

ロ 厚生労働省の「特殊健康診断結果調」によると、法定の特殊健康診断(じん肺健診を除く。)の有所見率は、近年は4%台となっている。

ハ 5年ごとに実施されている厚生労働省の労働者健康状況調査によると、強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、平成9年以降は約3割前後で推移している。

ニ 厚生労働省の「業務上疾病調」によると、業務上疾病者数のうち災害性腰痛などの負傷に起因する疾病者数の割合は、近年は約3割となっている。

(1)イ  ロ  ニ

(2)イ  ハ

(3)ロ

(4)ハ  ニ

(5)ニ

正答(3)

【解説】

以下により、試験当時は(3)が正答であった。

労働衛生統計については、本サイトの「最新の労働衛生の統計情報」の他、本問に関する具体的な数値は「表で見る労働災害の発生と労働衛生の状況」も参照されたい。

なお、「一般の定期健康診断」はたんに「定期健康診断」と呼ばれ、「特殊(定期)健康診断」はたんに「特殊健康診断」と呼ばれることが多い。厳密な言い方ではないが、本問でもそのように表記されている。

定期健康診断の有所見率の推移

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イ 誤り。「定期健康診断結果調」による、(一般の)定期健康診断の有所見率は、増加傾向にあり平成20年にはすでに5割を超えている。

特殊健康診断の有所見率の推移

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ロ 試験実施時期においては正しかった。当時、公開されていた「特殊健康診断結果調」による法定の特殊(定期)健康診断の有所見率は、4%台で推移していた(平成24年:4.46%、平成25年:4.42%、平成26年:4.34%、平成27年:4.14%、平成28年:4.26%)。従って、当時としては正しかった。

しかし、2021年9月時点で公開されている特殊健康診断実施状況(年次別)によると、6%前後で推移している(平成24年:6.3%、平成25年:6.0%、平成26年:5.8%、平成27年:5.6%、平成28年:5.7%、平成29年:5.8%、平成30年:5.9%、令和元年6.2%、令和2年5.7%)。この数値の違いの理由は分からなかったが、この最新の公表データには平成27年の数値は「公表値を修正した」とされている。

ハ 誤り。労働者健康状況調査によると、平成9年から平成24年までの調査で「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」は60%程度である(※)。具体的な数値は「表で見る労働災害の発生と労働衛生の状況」を参照されたい。2014年問27の(5)に同種問題がある。

※ 労働者健康状況調査は「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」は調査しているが、たんに「強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者」についての調査は行っていない。従って設問自体にやや疑問はある。

ストレスとなっている事柄がある労働者の割合の推移

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なお、同調査は平成24年版で廃止になっている。近年では労働安全衛生調査で、同様な調査を行っており、その結果は右図のようになっている(※)

※ 2014年(平成26年)及び2019年(令和元年)には、他の特別な調査を行うため、労働安全衛生調査調査を行っていない。

こちらは、「現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合」を調べたものである。「総計」でみると、ほぼ50~60%の間で推移している。

業務上疾病発生状況の推移

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ニ 業務上疾病発生状況等調査(令和2年)によると、負傷に起因する疾病は6,533件(試験時最新データの平成28年は5,598件)で、職業性疾病全体では15,038件(同7361件)となっている。従って、その割合は43.4%(同76.0%)であり、誤っている。

なお、グラフからも分かるように令和2年には、病原体に起因する業務上疾病発生件数が激増している。これは、新型コロナによる感染症が原因であり、例年のベースとは異なっていることに留意するべきである。

2019年12月01日執筆 2022年01月09日最終修正