労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生一般 問06

酸素欠乏症及び硫化水素中毒




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問06 難易度 酸素欠乏症及び硫化水素中毒に関する基本的な識問題である。確実に正答できる必要がある。
酸素欠乏/硫化水素中毒

問06 酸素欠乏症及び硫化水素中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)海水が滞留している暗きょの内部の作業では、酸素欠乏症及び硫化水素中毒のおそれがある。

(2)空気中の酸素濃度が16%程度以下になると、頭痛、吐き気などの自覚症状が現れ、10%程度以下になると、意識消失やけいれんが現れる。

(3)鉄(Ⅱ)塩類を含有している地層と通じているずい道の内部の作業では、酸素欠乏症のおそれがある。

(4)高濃度の硫化水素を吸入すると、意識消失、呼吸麻痺などが現れる。

(5)硫化鉱、魚油を入れてあるタンクの内部の作業では、硫化水素中毒のおそれがある。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。これは法令の範疇だが、「海水が滞留している暗きょの内部」(安衛令令別表第6第3号の3)は、酸素欠乏症等防止規則第2条第8号により、第2種酸素欠乏危険場所とされている。ここで、第2種酸素欠乏危険場所とは、酸素欠乏危険場所のうち、硫化水素中毒のおそれのある場所であると考えればよい。

酸素の存在しない場所に有機物が存在すると、嫌気性菌である硫酸塩還元菌が増殖して硫化水素を発生するおそれがあるのである。

【労働安全衛生法施行令】

別表第六 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~三の二 (略)

三の三 海水が滞留しており、若しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝若しくはピツト(以下この号において「熱交換器等」という。)又は海水を相当期間入れてあり、若しくは入れたことのある熱交換器等の内部

四~十二 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~七 (略)

 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。

(2)正しい。厚生労働省のパンフレットによれば、酸素濃度と症状について、16%:頭痛、吐き気、12%:目まい、筋力低下、8%:失神昏倒、7~8分以内に死亡などとなっている。文献によっては、これと異なる数値を挙げるものもあるが、本肢は、誤っているとはいえないであろう。

(3)正しい。第一鉄塩類を含有している地層に接するずい道は酸素欠乏危険場所とされている(安衛令別表第6第1号ロ)。鉄塩類が酸化して酸素欠乏状態になることがあるからである。

(4)正しい。硫化水素中毒による影響としては、呼吸麻痺、昏倒、呼吸停止がある。

(5)誤り。硫化鉱、魚油を入れてあるタンクの内部は第1種酸素欠乏危険場所とされている。

【労働安全衛生法施行令】

別表第六 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係)

一~四 (略)

 石炭、亜炭、硫化鉱、鋼材、くず鉄、原木、チツプ、乾性油、魚油その他空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンク、船倉、ホツパーその他の貯蔵施設の内部

六~十二 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(定義)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 酸素欠乏危険作業 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。以下「令」という。)別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所(以下「酸素欠乏危険場所」という。)における作業をいう。

 第一種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険作業のうち、第二種酸素欠乏危険作業以外の作業をいう。

 第二種酸素欠乏危険作業 酸素欠乏危険場所のうち、令別表第六第三号の三、第九号又は第十二号に掲げる酸素欠乏危険場所(同号に掲げる場所にあつては、酸素欠乏症にかかるおそれ及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所として厚生労働大臣が定める場所に限る。)における作業をいう。

2019年12月01日執筆 2020年03月08日修正